2020年11月16日オンラインで開催されたシェアサミット2020。今回は、新商品(マクアケ)・ファッション(ラクサス)・食(食べチョク)・決済(ストライプ)と、コロナ禍でも右肩上がりの成長を見せた4つのシェアサービス代表によるトークセッション「ポストコロナの消費」の模様をお届けします。これを読めば、2021年の消費の傾向やトレンドを予測できること間違いなしです!

 

(登壇者のプロフィール)

中山亮太郎さん(株式会社マクアケ代表取締役社長)
新しいものや体験の応援サービス「Makuakeを2013年にローンチ。購入で応援の気持ちを伝える新しい買い物体験として話題を呼んでいる。

児玉昇司さん(ラクサス・テクノロジーズ株式会社代表取締役社長)
月額制でブランドバッグが使い放題というブランドバッグのシェアサービス「ラクサスを運営。会員数は40万人を突破。新しいサービスは世界でも注目を集め、年内ニューヨーク進出予定。業務拡大につき人材募集中とのこと!

秋元里奈さん(株式会社ビビッドガーデン代表取締役社長)
日本の農業や一次産業の生産者と消費者をつなげる、オンラインマルシェ「食べチョクを運営。現在の登録者数3000件。国内産直ECサイトNo1.を誇る。

ダニエル・ヘフェルナンさん(ストライプジャパン株式会社 共同代表取締役)
インターネット全体のGDPを増やすがコンセプトのオンライン決済プラットフォーム「Stripe」を運営。世界14ヵ所に事業拠点を置き、数百人の社員たちが、現代的なビジネスの構築と運営方法への転換をサポートしている。

 

【目次】

  • 前年比47倍!? コロナ禍でも売れたものとは?
  • 過去最高益を出した地方のビジネスも。その明暗とは?
  • コロナ禍での国内外のトレンドの違いや、これから伸びるビジネスとは?

 

前年比47倍!? コロナ禍でも売れたものとは?

中山さん__マクアケは、コロナ禍でも売り上げ3倍と、まさにデジタルシフトを実感した年でした。

特に売れたのは、家中プロダクトやアウトドア製品。動画や画像を使って商品のよさを訴求できたことも大きいと思います。燕三条のキッチンツールやオムライス専用フライパン、熊野筆などが良く売れました。外出自粛が解除されても売り上げが変わらなかったので、「自分のこだわりがある領域に対しては納得したいいモノが欲しい」という次の時代の消費の正しい在り方なのではないかと。ストーリーや背景があるモノへの可処分所得の流れが見えてきたように感じています。

児玉さん__ラクサスはサービス開始してから27カ月で600億円の売り上げを出しました。日本だけでなくフランスなど欧米でもかなり利用者は伸びています。

コロナ禍では、NYの1等地に実店舗を出そうとしていた矢先のロックダウン。契約数日前に取りやめ、オンラインにシフトしました。外出自粛でバッグは使わないかなと思ったらそうでもなくて、ある意味「人間らしさ」を学びました。皆さん近所には買い物に出ますもんね。

秋元さん__生鮮食品のEC市場はコロナ禍で大きく広がりました。コロナ前の食に関する国内EC化率は2.7%でしたが、自粛期間は8%、現在も5~6%です。

体感として、これまでスーパーなどのリアル店舗で買っていた新規の人がECに流れている印象ですね。たとえば、以前の産直は、鯛一匹購入するようないわゆる“意識高い系”だったんですが、コロナ禍で時間もあるから「あえてさばきたい」というエンタメ性のニーズが増え、より多様化したように感じています。事実、「食べチョク」としては前年比47倍の売り上げとなり、生産者も月1,500万円売り上げた方もいました。

中山さん_47倍はすごい数字! 確かに、料理、食材、アウトドア、家庭を豊かにしたい人は素材にこだわりますよね。生活必需品じゃない何か。そこにかけるお金が流れてきたように思います。

秋元さん__「食べチョク」を利用して家族の食卓の会話が増えたという声が多かったのも印象的でした。ダチョウの卵をハンマーで割って子どもと大きなオムレツを作ったという方もいましたね。食べるだけではなく、“食体験のエンタメ化”ともいうのでしょうか。

児玉さん__食のエンタメ化というのはすごくわかります。料理が好きじゃない人は頼めばいいし、作りたい人がこだわったものを買うエンタメになったと。

秋元さん__人やサービスに頼るシェアエコ派と自分でこだわりたいエンタメ派にわかれてきたのかもしれませんね。

中山さん__食もモノも人が楽しむところは合理性ではなくて、いかにエンターテイメントにしていくかは、これからの消費のキーワードになるかもしれませんね。

決済的にはどういうジャンルが伸びましたか?

ダニエルさん__サブスクリプション型サービスは伸びをキープできていました。一方でインバウンド系はかなり厳しく、2月3月頃はマイナスだったところも多いです。ただ、新しいサービスにうまくシフトして回復できたところもあります。小さくスタートアップしてオンラインにうまくおいつけた事業者は成長を見せていますね。

たとえば、あるチーズケーキ屋さんは、オフラインからオンラインにシフトしたことで、並ぶ制約が無制限になってむしろオンラインの方が売れています。

中山さん__マクアケでもチーズケーキはトータルで7,000万円くらい売れましたよ。家の中で豊かにというニーズが強かったわけですね。

過去最高益を出した地方のビジネスも。その明暗とは?

中山さん__先述した燕産業は新型コロナのレジャー消費とイエナカ消費、通販需要もあって、地域をあげて過去最高益だったそうです。すごいですよね!

秋元さん__地域全体で売り上げが上がるってすごいですよね。地方の生産者の方たちは、これまでオンラインを全く活用してきたことがないアナログな方が多かったのですが、変わる生産者と変われない生産者がいて、もちろん変われた方は大きく売り上げを伸ばしていました。

私たちは自治体からのSOSもありましたが、その地域で売れた成功事例をもとに生産者をどんどん巻き込んで、自治体と組んで地方にパートナーを作っていったのが成功ポイントだったように思います。

中山さん__新型コロナによって、出る杭(新しいサービス)がつぶされない流れがいいように影響して、結果的に伸びましたよね。

産直サービスも遠隔医療も、「使わないとマジでやばい!」という危機感で、デジタルトランスフォーメーションの波が加速しましたね。今、そうしたプラットフォームはビジネスチャンスですよね?

ダニエルさん__ええ。決済導入から見ても、プラットフォームのニーズに合う新規登録はかなり増えました。オフラインでやってきた中小規模、飲食店なども、どんどんオンライン決済に切り変えています。

コロナ禍での国内外のトレンドの違いや、これから伸びるビジネスとは?

児玉さん__私たちはバッグをレンタルしてくれる人たちの動きをGPSで追えるのですが、日本の方は政府の言うことをよく聞いてちゃんと家にいるなと(笑)。日本人は海外と比べて批判的思考が少ないのかもしれません。そこを理解して、今だからこそ許されることや進められる新しいやり方にチャンスがあるのではと思っています。

中山さん__製造、生産地でいうと、コロナ禍でも中国のリカバリーがものすごい早かった。です。地域でも生産能力と販路があるところは強いなと。その点日本ならではのモノ作りは強い。自分たちで完結できてデジタルとリアルとマルチに備えられたらチャンスをつかめるのかなと思っています。

今回の新型コロナのようなことはまたあるかもしれないですから、ビジネスにおいては、“イレギュラーな対応のレギュラー化”に備えておかないといけないですよね。

秋元さん__産直EC化の成功は「変化しないと生きていけなかった」という危機的状況があると思います。アナログだった地方の生産者さんともzoomで普通に顔を合わせられるようになったのは大きいですね。出張がなくなった分、以前よりも会える頻度が高くなったように感じます。

中山さん__新型コロナで世界が分断されたけど、その分つながりも分刻みで増えましたよね。我々は、コロナ禍の3月に全国のクライアントさんたちとかなりのzoomミーティングをしたんです。その結果「意外と生き残るところはあるな」と感じました。デジタルを使えば地方や海外に行かなくても、行けなくても、気づけるんです。

 

【まとめ】

・これからの消費のキーワードはエンタメ化
・人はどんなときも消費をとめない(いいモノは売れる)
・今、出る杭はチャンスである!(デジタル化はマスト)
・“イレギュラーな対応のレギュラー化”に備えておく

 

グラレコ作成:石本麻由香さん