ソーシャルアパートメントで出会い、結婚

ソーシャルアパートメントとは、自分だけの空間は確保しつつもラウンジや共同キッチンなどで色々な人々と共同生活を送ることが出来る、新しい一人暮らしを提案する賃貸住宅のことである。ホテルを頭に浮かべると、イメージしやすいだろうか。個々に部屋がありつつラウンジは共同で新聞を読んだりコーヒーを飲んだり、談笑しあったりできる空間がソーシャルアパートメントにはある。

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岡野佑馬さん(左)と 岡野麻佑子さん(右)

そのソーシャルアパートメントで出会い、結婚。まるでマンガや小説にあるようなシチュエーションにびっくりするが、シェアの概念が浸透しているここ最近、そのような出会い方をする人たちも決して珍しくないようだ。私のような出不精で人見知りにとってソーシャルアパートメントでの生活というのはなかなか気がひけるのだが、そのような出会いを知るとちょっとの興味が湧いてくる。今回は、実際にソーシャルアパートメントで出会い、お付き合いを始めてめでたくゴールインしたという岡野夫妻にお話を聴いてきた。

入居の理由は、たくさんの人と関わりたかったから

――ご結婚おめでとうございます!早速ですが、出会うきっかけとなったソーシャルアパートメントについてお聞かせ下さい

佑馬さん:ありがとうございます!私たちは先日入籍して、いまはソーシャルアパートメントを出ているのですが、それまでは護国寺のソーシャルアパートメントに住んでいました。その護国寺のソーシャルアパートメントには大体180人くらい住んでいて、共有のラウンジ・キッチン・バスルームがあって部屋は個別という形態です。自分だけのスペ―スは、部屋だけということですね。個人の部屋は六畳一間でそこまで広くありません。私たちが出会ったのはそのソーシャルアパートメントでした。私が2年前くらいに入居し、妻がその半年後くらいに入居、そこで知り合って…という感じです。

――なるほど。どういった理由でソーシャルアパートメントに住んだのですか?

佑馬さん:私は幅広い人脈を作りたくて、ソーシャルアパートメントに住もうと思いました。入居当時は社会人3年目だったのですが、それまでは普通のアパートに住んでいて。3年目になってみて、人との付き合い方が学生時代までと全く違うということに気付いたんです。学生時代までの友達は単に遊んだり、飲んだりするだけの友達なんですけど、社会人になってから出会う人は今後どういう付き合いになるか分からない。何の縁で仕事に繋がったりすることはよくありますからね。そのような経験を社会人になってたくさんして、次第に色々な人との繋がりというものに価値を覚えるようになりました。毎日会社から帰って1人だとつまらないから人がたくさんいるところに住もう、という理由もあったのですが、もっと交友の幅を爆発的に増やしたいなと思いソーシャルアパートメントへの入居を決めました。

麻佑子さん:私は一人暮らしを始めた時からシェアハウスだったので、引っ越しの際はシェアハウスかソーシャルアパートメントのどちらかしか選択肢にありませんでした。一人暮らしを始めるときにシェアハウスを決めたのは、家具とかを揃えるのがめんどくさかったので家具付き物件を探していたことと、1人じゃ寂しいから友達を増やしたいという理由からでしたね。

佑馬さん:仕事場が近いからという理由で住む人はすくないですね。利便性や効率の良さというよりは、ソーシャルアパートメントに住むことによって得られる何らかのメリットを求めて入居してくる人が多いです。短期で住むこともできるので、マンスリープランで住む人もいましたよ。

日常生活で、内面の変化がじんわり馴染んでくる

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――お仕事をしているタイミングでソーシャルアパートメントへ入居したと。なかなか大変そうな印象なのですが、お仕事への影響はありましたか?

佑馬さん:私はウェブの広告代理店で働いているのですが、仕事の状況によっては夜中の0時や1時に帰宅することも多かったんです。今までだと帰宅しても1人なのでそのまま寝ることがほとんどだったんですけど、ソーシャルアパートメントに引っ越してからは自分と同じ時間に帰ってくる同居人が意外とたくさんいたので、その人達とラウンジで1杯飲んでから寝るっていうことをよくやっていました。あれは楽しかったですね~。あとは同業者もたくさんいるので、仕事の話もよくしますよ。同じソーシャルアパートメントに住んでいる人と仕事で打ち合わせをしたこともあるので、その時は不思議な感覚でした。

麻佑子さん:私は整体マッサージの口コミサイトを1年前にスタートして現在も運営しています。ソーシャルアパートメントに住んでいる人たちは多業種・異業種の人が多いので、多種多様な視点からの意見を聞けることもあるのでありがたいですね。会社や仕事そのものに直接影響するというよりは、人の考え方の多様さを知り自分の中に取り入れるという面で良い刺激になっていました。

佑馬さん:確かに。同居人にフリーターの人もいたんですけど、フリーターって本当に食っていけるのか、将来大丈夫なのかとか色々な懸念要素があって自分の中ではすごくハードルが高いものだったんですけど、その人たちと話しているうちに、別にフリーターという生き方でも楽しく生きていくことが出来るんだということを知ったんです。自分たちとは異なる生き方をしている人たちを認めたうえで受け容れられるようになり、自分の考えの幅も広がったと思います。仕事の面だけでなく、人生そのものに影響を受けましたね。

麻佑子さん:そうだね。ソーシャルアパートメントに住んでいる中で大きなイベントがあっていきなりぱっと考え方が変わったというよりも、ごく普通の日常の中で自分の内面がじんわり変わっていく感覚に近いかもしれないです。

中途半端なことはしない。遊ぶときは“大人の本気”で。

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――目に見えない部分への影響がすごく大きいということですね。ソーシャルアパートメントというとすごくリア充なイメージがあるんですが、楽しいイベントもたくさんありますよね?

佑馬さん:そうですね! そこに住んでいる人たちはすごく個性的な人たちだったので、その個性同士の掛け合わせで面白いものが生まれることはたくさんありました。例えば、物件内のメンバー20人で同じコスプレをしてディズニーに遊びに行ったり、みんなでトミカのTシャツを着てラウンジにミニ四駆コースを作ってレースをしたり。あとは地方にある村を1日レンタルして、そこでどんちゃん騒ぎしたりとかもしました(笑)

麻佑子さん:前に建物内で『本気のホストクラブ』をやったことがあるんです。男性陣はみんなスーツびしっと着てシャンパンタワーもあって、本物のホストクラブみたいに壁掛け写真を飾って専用メニューも作って。女性陣はもう大ウケで(笑) やっぱりいくつになってもにバカみたいに遊びたい気持ちってあるじゃないですが! クオリティの高い遊びを大人が全力で恥ずかしがらずやれることってなかなかないですが、ここならそれができる。それがすごく楽しいんです。大人が本気出して遊ぶとこうなるんだぞっていう(笑) そういうわくわくするイベントが日常にある、非日常が日常に転がっているというのはソーシャルアパートメントに住んでいてよかったと思うことでした。

佑馬さん:そうだね。いつも何かしらのイベントがあるから、一週間何もないと不安になったり。今週何もしてないなあ…みたいな不安に駆られる時期もあったりするくらいですよ(笑) イベントが毎週のようにあるので、みんな「ここに入ってきてからお金がとんでく」って言ってます(笑) みんなそんな財力ないんだけど「みんなが出してるからやるか!」みたいなノリで楽しんでます、が、決してリッチではないと…

――まるで採算度外視の大人の文化祭ですね…!

佑馬さん:そうそう! 毎日が文化祭準備みたいな!ちょっと変わったイベントだと、3ヶ月に1度程度の頻度で自分が思っている1番叫びたいことをプレゼンする『叫ぶ会』というイベントも開催されてます。夜9時からスタートで立候補した4~5人が話して、遅い時だと1時を回ることもありました。かなり熱い討論が起こったりするのですごく面白いですよ。

あとは、スタートアップウィークエンドを主催している人が同じソーシャルアパートメントに住んでいるのでファシリテーターについてもらって、金曜夜から日曜夜まで3日間ハッカソンをやったこともあります。そこで生まれたもの自体が事業化したということはないんですけど、実際に家の中のメンバーで何か事業やサービスを立ち上げようとして頑張っている人たちもいます。

2人の愛と、ソーシャルアパートメントとの関係

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ーその過程でお二人は仲良くなられたと。

佑馬さん:そうですね。たまたまラウンジで話す機会があって、そこから徐々にいい感じになりました(笑)

麻佑子さん:すでにお互いのことはある程度知っていましたからね。付き合った後は、外で時間を気にしながらデートするんじゃなくて「じゃあちょっと屋上でしゃべろっか」と言って夜中の3時くらいまで気が済むまでしゃべって部屋に戻るっていうのを何度もしてました。ソーシャルアパートメントならではの付き合い方を楽しんでいたかもしれません。

――2人のプライベートな空間がないということは問題なかったですか?

佑馬さん:全く問題無かったですね。話したければラウンジに行くし、話したくなければ部屋に直帰するので。

麻佑子さん:ソーシャルアパートメント内に共通の友人が100名以上同時にできるので、なかなか普通に出会って仲良くなっていう過程では珍しい環境が最初からあるっていうのはよかったですね。喧嘩した時は怒りの捌け口が100以上あるというのも(笑)

――でもそれってメリットでもデメリットでもありますよね。ソーシャルアパートメントって普通の一人暮らしと比べたらプライベート空間が少ないと思うんですよ。私もソーシャルアパートメントに住んでみたいと思ったことは何度もあるんですが、一歩踏み出せない理由として個人の空間が制限される懸念があって… 多分同じようなことを考えて踏み出せない人っていっぱいいると思うんです。お二人はソーシャルアパートメントの良い・悪い部分をたくさん知っていると思うので、「住んだら楽しそうだけど、でも…」みたいな人にむけて一言コメント頂けますか?

佑馬さん:あと一歩踏み出せない人は、ソーシャルアパートメントの中に入っている空気感が分からなくてイメージが出来ないという理由が1番大きいのかなって思います。例えば昔からの友達とシェアハウスをするというのであれば雰囲気も分かっているから安心できますけど、そういうことがソーシャルアパートメントだとなかなか出来ない。その不安を解消するには、空気感を知るためにイベントに参加してみるといいかもしれません。

「こうあってほしいな」「これは嫌だな」など色々な期待値があるのは当たり前のことですが、複数の人と住む以上それを裏切られてしまうことは仕方のないこと。ソーシャルアパートメントを選ぶ人たちはメリットをメインに考えているので、多少のデメリットや不便さには目をつぶれてしまうんです。色々なデメリットを割りきって生活に馴染むまでが一番大変なんだけど、でもそこを自分でかいくぐってくれたらその先の楽しい世界に行けるはずです。住んでいる人たちには受け入れてくれる姿勢があるので、思っている以上に入りやすいと思いますよ。本当に楽しいんですから!

 

インタビュー中にボケて互いにツッコミ合うなど、とてもなごやかで仲の良い岡野さん夫妻。現在はソーシャルアパートメントは出て2人で暮らしているとのことだが、今でも週1で遊びに行くほどソーシャルアパートメントの友人たちが恋しいのだとか。

ソーシャルアパートメントは表面上は居住空間をシェアする場所だが、そこに住んでいる人たち全員の喜びや幸せを全員でシェアする場所でもあるのだろう。喜びや幸せのようなポジティブな感情がシェアされているソーシャルアパートメントの空間には、お二人が手にした『愛』もたくさん転がっている。それ拾いに行くか無視するかは、あなた次第だ。

この記事の登場人物
  • 岡野佑馬さん
    ウェブ系広告代理店勤務。2年ほど前にソーシャルアパートメントに入居。彼女いわく「かなり変わった人」だそう。
  • 岡野麻佑子さん
    現在整体マッサージの口コミサイトを運営。佑馬さんから半年ほど後に入居。一人暮らしデビューもシェアハウス。
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