ヨーロッパ、アメリカを中心に始まったシェアリングエコノミーの波が、少しずつアジア諸国に浸透しつつあります。2016年の発足以来、私たち一般社団法人シェアリングエコノミー協会(SEAJ)は、日本の将来におけるシェアリングエコノミー発展への糸口を模索するために、これまで数々の海外事例を調査してきました。調査を通して、アムステルダムがヨーロッパで「シェアシティ」の発祥とされ、話題の多くがシェアの知識や経験を集積したプラットフォームを運営するshareNLに取り上げられていたことが分かりました。アムステルダムで起こったシェアリングエコノミーの繁栄を学ぶため、SEAJはshareNLと積極的に情報交換を交わしてきました。同じ一般社団法人として、shareNLの先行事例を学ぶことは、私たちの活動に価値のあるものとなるでしょう。

1. 視察概要

2017年9月初旬、駐日オランダ大使館の協力があり、シェアリングシティ視察が実施されました。SEAJ、国内シェアリングサービス会社、そしてベンチャー投資企業から計8人のメンバーが参加し、shareNL、RVO(オランダ企業局)、駐日オランダ大使館、アムステルダム市、SEAJによる共催によって実現した実りある3日間となりました。視察は、オランダ、日本の行政およびビジネスリーダーを対象に、シェアリングエコノミーにおける現状の機会、課題への相互理解、経済関係を強めるために行なわれました。そうして、日本人の参加者たちがオランダの地へ降り立っていく準備が着々と進められてきました。

2. アムステルダムのシェアリングエコノミー

shareNLの調査によると、アムステルダムに暮らす90%以上の人が他の人と「シェアする」ことに隔たりがないことになります。[注1]若者が車を「所有」することに価値を置いていた時代は既に過ぎ去った昔の話で、今日、この街で車を購入したいと考える若者は少数派です。お互いの資産を共有し、持続可能な社会を生み出していく考え方が徐々に主流となってきているようです。アムステルダムで「シェアする」考え方は新しいものではありません。例えば、シェアバイクの仕組みは50年前[注2]にアムステルダムで生み出され、今や世界で1,100以上もの都市へと広がってきています。カーシェアもまた、50年以上にわたって存在しています。こうした環境と文化を背景に、shareNLはアムステルダム市政府と共同で、2015年にアムステルダムをヨーロッパで最初のシェアシティであると宣言しました。さらに、アムステルダム市は市として世界で初めてAirbnbと協業し、民泊で部屋を貸し出す標準日数を60日未満であるべきとしました。一方で、低所得者や高齢者の市民がシェアサービスを割引で受けられるように、市はCitypass[注3]にもシェアリングエコノミーを取り入れていく意向を示しています。

シェア先進都市アムステルダムでは、shareNLはモノ、スペース、交通機関、輸送、通貨、食べ物、心配事、そして知識といったあらゆることに関するシェアリングエコノミーを分類して展開しています。現在、およそ100以上のP2Pプラットフォームがこのエコシステムに取り入れられて、成長を続けているのです。shareNLの創業者たちは、今年5月にニューヨークで開かれたシェアリングシティサミットの会期中に、「シェアリングシティアライアンス」を立ち上げました。この連盟は、シェアリングシティのグローバルネットワークとなり、シェアリングエコノミーの領域において都市が直面する機会や課題に取り組み、これお都市間の学びとして促進していくことを目的としています。

3. オランダの有名シェアサービスと、私のシェア体験

シェアサービスの多くはまだ立ち上がったばかりのスタートアップで、彼らのリソースは限られています。Rockstartはこうした課題を持つスタートアップの助けになるアクセラレーターです。「ピッツァマネー」と呼ばれる資金を、創業間もない多くのシェアサービスに投資しています。採択されたシェアリングエコノミー企業が生き残るため、アクセラレーターから投資される資金は50ユーロ(約6,610円)から2万5,000ユーロ(約330万5,000円)まで及びます。出資を受けたシェアサービスの中には、近隣の人たちとモノをシェアするPeerbyなどがあります。

今回の視察で最も衝撃を受けたのは、地元のシェアサービスを身を以て体験したことでした。日々の移動には、ライドシェアサービス・Abelを使いました。移動中、私たちはAbelの運転手が勤務時間を自由に調整し、ライドシェアの規模が急速に伸びており、運転手たちがさまざまな利用者たちとのコミュニケーションを通して、仕事そのものを楽しんでいるということが分かりました。ライドシェアの他にも、ボートシェアサービス・Barqoも使いました。ここアムステルダムの美しい街には、運河が広く行き渡っています。市民がプライベートボートを持つことも珍しくなく、船乗りがこのサービスへホストとして参加することもできます。このサービスが生み出したのは、観光における新しい価値です。運河のボートから見た街全体は、なんとも魅力的に感じられるものでした。


食事の領域においても、ヨーロッパで人気が高いサービスがあります。アムステルダムでは、Air Drink’n Dine(エアー飲食)を略して、AirDnDがローカルの人たちの家で外食ができるサービスとして人々に使われています。私たちは、昼食にCaro Kookt邸へ訪れました。Caroの家は、キッチンとダイニングテーブルが繋がっているため、招かれたゲストは自慢の料理風景を眺め、彼女とお喋りができます。彼女に話を聞いてみたところ、週末に入る予約の80%以上が外国人観光客だそうです。ゲストは地元の食事を味わえるだけでなく、地元の人たちの家で一緒の時間を過ごすことで、現地の生活を感じることができるのです。視察の最終日に、私たちはコワーキング専用のビルB Amsterdamへ訪れました。B. Amsterdamは起業家同士がお互いに繋がっていくというミッションのもと、さまざまなスペースを提供しています。ここにオフィスを構える企業は、すでに200を超えています。入居企業にとって、B. Amsterdamは事業を発展させるために必要な施設、ツール、ナレッジ、ネットワークを備えているコミュニティです。デザインセンスと建築は非常に革新的で、仕事を真新しものへと変えてくれます。


4. 私たちがアムステルダムから学べること

今回はダイナミックに溢れる視察となり、さまざまな人と出会い交流し、またやり取りの中でシェアビジネスを仕掛ける側の本音や画期的なアイデアを聞くことができたのはかけがえのない経験となりました。Peerby、MyWheels、seat2meet、それぞれの起業家を迎えた素晴らしいパネルディスカッションも心に残っています。長いテーブルを挟んで、3人の起業家と並んで座り、ビールを片手に話し合いを始めました。こうした配慮により、議論はより双方向なものとなり、パネリストと参加者の垣根がなかったのは、未だ鮮明に覚えています。

なぜシェアリングエコノミーがこんなにもヨーロッパや西洋諸国で浸透しているのか、関心を抱いていました。私は、「集団性」が「個人」より重視されるアジアよりも、アイデアが受け入れられやすく発展したのではないかと考えていたのですが、それは間違いでした。シェアリングエコノミーがアジアへ広がっていた本当の理由は、シェアリングエコノミーが単なる個人が心がける自発的な行動ではなく、関係者を巻き込み社会全体に広がり、助け合いという考え方の上で生活の仕組みを根本から変えてしまうからです。オランダの人たちは、当たり前とされている資本主義思考ではなく、「社会的に影響を及ぼす」ための「事業の持続可能性」や「エコな環境」に重きを置く思考へと考え方を変えてきたのです。より持続可能な社会を実現するために社会資本と、古くから伝えられる伝統的な資本の両方を掛け合わし、シェアリングエコノミーが社会へ影響を与えていくと信じています。例えば、オランダの人たちはPeerbyを使って隣人からモノを借りますが、彼らにとって、見知らぬ人の家へドアをノックすることは珍しいことではないみたいです。人々はこうしたキッカケから知らない他人とのコミュニケーションにより仲を深め、これが回りに回って社会的な影響力を生み出す源泉となっています。

視察中に立ち寄ったとあるレストランInstockには、食べ物を無駄にしないという考えがありました。スーパーマーケットから売れ残りの食材を集め、これを使って、ゲストが楽しめる美味しい食事へと無駄なものを意味のあるものへ生まれ変えています。

こうしたシェアリングエコノミーの企業哲学は、全員に共通する意識です。この持続可能への考え方が、日本やその他アジア諸国において、次なるトレンドになることを確信しています。また、オランダの人たちは新しいアイデアに寛容です。それが社会の発展に有益であると判断すれば、イノベーションを生み出すのに聳え立つ障壁を試行錯誤しながら乗り越えようとします。このような素晴らしい国へ訪れることができた機会に、心から感謝しています。そしてこの経験から、日本で新たなムーブメントを引き起こせることを期待しています。

[注1] モニター調査によると、99.6%の協力者がシェアへの取り組みへ前向きな意思を示した。
[注2] 1967年
[注3] オンラインのチケットサービス

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