多久市ワーキングサポートセンター

多久駅北側に完成した多久市ワーキングサポートセンター。インターネットなどを活用し、全国から受注した仕事を地方で共有するローカルシェアリング事業が行われます。

本記事は、多久市役所 商工観光課 商工観光係長であり、内閣官房シェアリングエコノミー伝道師でもある石上涼子さんにご協力いただき、編集させていただきました。
シェアリングエコノミーを推進している多久市の取り組みについて詳しく解説して頂いてますので、シェアリングエコノミーを推進したい自治体の方は、ぜひ前編と合わせてご一読ください。

シェアリングシティ宣言

平成28年11月24日、秋田県湯沢市、千葉県千葉市、静岡県浜松市、長崎県島原市とともに、多久市は全国初となるシェアリングシティ宣言を行いました。今回の事業で取り組んでいる在宅ワーカーの「クラウドワークス」との連携と、これまで取り組んでいた体験型観光を発展させる「タビカ」と連携することで要件(2事業者と連携)をクリアし、宣言を行うことができました。
市全体としての取り組みに発展することは難しいため、商工観光課の分野(労働と観光)だけでスモールスタートすることになりました。全国初になるまでは、若干の苦労話があり、前例のないことを行うのが苦手な行政職員でしたが、私自身一皮剥けた仕事にもなりました。


シェアリングシティ(湯沢市、千葉市、浜松市、島原市、多久市)

体験型観光「タビカ」

多久市の取り組むシェアエコ事業のもうひとつは、「タビカ」事業です。シェアエコ協会の事務局を担う株式会社ガイアックスの事業の一つに、「タビカ」事業があり、平成29年2月24日に多久市と連携協定を締結しました。
モノ消費からコト消費といわれる時代になり、個人旅行客が増える中、多久市でも体験型観光に注目し、力をいれるようになりましたが、なんとも広報が難しいのです。チラシを作成しても、開催日等が変更になったり、年度が替わったりすると使用できないチラシになります。インターネットサイトのタビカを活用すれば、チラシ印刷のロスを減らすことができ、開催日等はフレキシブルに受入れ側(ホスト)の都合で設定できます。タビカの特徴は、イニシャルコストが不要なところが魅力です。サイト通して、支払いが発生するときにはじめてコストがかかる仕組みです。これならば、多種多様な体験型観光のコンテンツ作成も簡単なのです。地元のスキルあるおじいちゃん、おばあちゃんたちをホストとして、タビカのコンテンツを増やしています。例えば、田舎のじいちゃんと自然農園体験、幻の自然薯掘り体験、素足にやさしい布ぞうり作り、多久山笠曳山体験など多彩なコンテンツが出来上がっています。地元では当たり前で普通なものが、他所から来ればユニークな体験となり、体験側(ゲスト)は、プライスレスな思い出になります。また、ホストもいきがいにつながり、ゲストもホストも、これらの体験から新たな感動や出会いを生むことになります。


タビカ(田舎のじいちゃんと自然農園で遊ぼう&田舎飯作り体験)

視察ラッシュと学び

新しい取組みをしているつもりはなかったのですが、前述の岩坪さんの紹介もあり、わざわざ九州佐賀へ、遠くは札幌市から視察においでいただきました。視察後に、多久市へふるさと納税をされ、シェアエコで課題解決の多久市を応援してくださる方もおられます(嬉)。
視察で取り組みをお伝えしながら感じるのは、行政マンとしての「やる気」に、ご賛同いただき、多久市が注目されているのかなと感じました。
また、私は、今回のことで、平成29年12月には内閣官房シェアリングエコノミー伝道師に任命され、平成30年度からは、地域情報化アドバイザーとして講演を依頼されるようになりました(まだ依頼はありませんが)。
このおかげで、全国にシェアリングエコノミーを通じて知り合う機会があり、民間の取り組みの速さや考え方、総務省等の国組織の動きなど多くを学び、普通の行政職員からはみ出した公務員となっております(笑)

今後の地域課題の解決と多久市の動き

平成30年3月20日、シェアリングエコノミー促進室が「シェア・ニッポン100 ~未来へつなぐ地域の活力~ 」を公開し、多久市の取り組みも掲載されております。
この事例集は、自治体や民間事業者等が、地域における社会課題の解決や経済の活性化を行うためにシェアリングエコノミーを活用している事例を見える化し、後続する取組や新たな事業アイデアの誘発を図るためのものです。

今後の多久市の取り組みとしては、佐賀県が行うアズママ・エニタイムズ・キッズラインを活用した子育て支援事業の参加、総務省地域におけるIoTの学び推進事業として、志田林三郎プログラミング教室の開催(現代のIT社会を予見した多久市出身の志田林三郎博士を顕彰)、タビカの広域連携活用、在宅ワーカーの育成支援(加速化交付金事業の継続事業)、IoTの便利さを周知した老人クラブ対象の無料スマホ教室などに取り組んでいきます。
福祉や介護、医療の面などスキルのシェアの分野で、地方が直面している課題解決の田舎モデルが横展開できるようになればいいなと思っております。

シェアエコで地域課題解決

○観光資源の発掘
農業の収穫体験、伝統芸能曳山体験、地域のおまつり参加体験、そこに住む人おすすめの観光スポット街歩き(タビカなど)。
○眠った資産の活用
空きスペースを有効活用。コスプレイヤーの誘致(スペースマーケットなど)。
○空き家・空き部屋の活用
保健所に登録して、民泊、空いているお家やお部屋をシェア(エアービーアンドビーなど)。
○ネットでフリーマーケット
自分のお宝や使っていないものをネットでフリーマーケットする仕組み(メルカリなど)。
○お金を集める
やりたいことは、まずやる、やってみる。クラウドファンディングでお金を集める。返礼品のセレクトはネットショップ感覚で(クラウドリアリティー)。新商品発表も開発費を先取りできる仕組み(マクアケ)
○ちょっとした時間のシェア
お助けマンって感じで、大掃除の手伝い、庭木の剪定など小さなお手伝いをお願いしたりされたり、誰かに感謝される(エニタイムズなど)。
○お悩み相談シェア
どんな悩みでも解決。弁護士相談もあるし、占いもある。ここで解決(ココナラなど)。

おわりに

私の両親は、団塊の世代で、彼らがもうすぐ迎える介護の時代への突入を一時でも遅らせるためにも、シェアエコの力を借りて、スマホ・タブレットの活用、異世代との交流、スキルのシェアを目的とした「タビカ」の活用により、いきがいややりがいを見つけることができると思うのです。
私は現在、商工観光課に所属し、その分野から少し幅を広げながら、各部署と連携し、今後の多久市の5年後10年後を見据えて、シェアエコでなにかしらの課題解決に取り組んでいきたいと考えています。
肝心なのは、横尾市長がいつもおっしゃる「知識と知恵と情熱」だと痛感しております。やれることから始め、まずは、小さな一歩から踏み出し、そこから、シェアエコが地域課題の解決につながるものだと考えております。