2018年9月7日、東京都千代田区のNagatacho GRIDで開催されたシェアリングエコノミー協会主催『SHARE SUMMIT2018』。官民交えた多彩なゲストによるパネルディスカッションで、シェアリングエコノミーの今と未来について熱い議論が交わされました。
第3部『SHARE × LOCAL 〜2020年以降の国と地域を考える〜』では、シェアリングエコノミーの存在感が増す社会ではどんな未来が描けるのか、企業イノベーション支援担当者・官僚・新聞記者という3者の視点から、知識を深めました。

登壇者:
PwCコンサルティング合同会社 野口功一氏
内閣官房シェアリングエコノミー促進室 企画官 高田裕介氏
産業経済新聞社総務省担当記者 大坪玲央氏
司会進行:
渋谷区観光協会事務局長 小池ひろよ氏

徐々に認知度を増すシェアリングエコノミー

小池:本日、PwCからシェアリングエコノミーに関する認知度調査が発表されました。(https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/sharing-economy1809.html)野口さんから、この調査結果の説明をお願いします。

野口:PwCでは2017年から国内のシェアリングエコノミー意識調査を行なっていますが、サービスの認知度は4割を超えて昨年比で10%増えています。日本の特徴は、シェアリングエコノミーという言葉よりも、『Uber』や『Airbnb』などブランド名の認知度が高いことです。昨年比で伸びているのは場所やスキルのシェア。これは、空き家が多い日本の不動産状況にマッチしていると考えられます。懸念事項としては、事故やトラブル時の対応、品質や信用の担保など安心安全に対する不安が最も多く挙げられました。これは日本だけでなく、欧米の調査結果でも同じ懸念事項が挙がっています。逆に、安心安全のハードルをクリアするサービスは今後一気に伸びる可能性があると言えます。

小池:野口さんご自身は、どんなサービスを使っていますか?

野口:僕は50代で、オンラインの物のやり取りを面倒だと思ってしまうのですが(笑)、海外に行くとライドシェアを使います。調査結果でも20〜30代の利用意向は高いです。好景気を経験していない、生まれた時からインターネットを使っている、環境への意識が高いという3点はミレニアル世代の特徴ですが、これはシェアリングエコノミーが起きた背景と合っている。彼らの利用意欲の高まりで、シェアリングエコノミーは爆発的に伸びる可能性があります。

高田:2017年1月にシェアリングエコノミー促進室(https://cio.go.jp/share-eco-center)を立ち上げてから徐々に相談件数が増えていて、多くの人がシェアリングエコノミーに関心を持っていると感じています。
私は、1億総活躍社会の実現・経済成長への貢献・社会全体の生産性向上・地方創生の推進という社会の要請に適用するために、シェアリングエコノミー推進の意義があると思っています。個人的に、政府が取り組んでいる政策には大きく4つの視座があると分析していて、一つ目は柔軟で建設的な未来志向のルール形成、それから実施する人の背中を押すためのフォロワーを作る事例づくり、そして“応援”。僕が感じるのは、新しいサービスを作ろうとしているベンチャーの方は孤独感があるということ。新しいことにチャレンジする人たちが孤独になってはいけない、彼らの応援団を作っていくのは大切です。最後は機運の醸成。この4つの視座が伴えば、安全かつ利便性の高い新サービスが生まれ、サービスの利用拡大に繋がると思っています。

小池:高田さんは実際に多くのシェアサービスを使われています。キラリと光るサービスと政府連携の良い事例があれば紹介してください。

高田:まずは、在日外国人の家でその国の料理を習う『tadaku(https://www.tadaku.com/)』です。以前住んでいた場所から30秒のところに、有名なトルコ人ホストがいました。エンターテイメントや面白いコンテンツは、都心や有名な観光地にあるという先入観があると思うのですが、実は最大のコンテンツは人だと気がついたサービスです。
政府連携でいうと、ロケ地をシェアするサービスです。自治体財政からすると廃校は大きな負担になっていて用途に困ることが多いのですが、ネット動画サービスの拡大で廃校に需要があると言う。これまで価値の無かったものがシェアリングプラットフォームのフィルターを通ることで新しい価値を見出される、これがシェアリングエコノミーのチャーミングな点だと思います。

小池:大坪さんは新聞記者という立場からシェアリングエコノミーをどう捉えていますか?

大坪:シェアリングエコノミーを幅広い世代に伝えきれていないのは課題だと感じています。ただ、言葉は知らなくても、例えば近所で醤油の貸し借りをするなど日本人の心根には元々根付いているものなので、うまくやれば高齢者の世代にも響くサービスが生まれると思います。また、郊外ではUber Eatsが無いなど地域によってサービスに差がある。シェアリングエコノミーを地方に広げていく難しさは感じています。

“20××年”、 シェアリングエコノミーの認知度が90%になった未来を考える

小池:シェアリングエコノミーの認知度が90%以上になった世界が“20××年”にあるとして、みなさんはどんな世界を想像されますか?

野口:信用のあり方が変わると思います。今は大企業に務めているなど自身の属性で信用が得られていますが、シェアリングエコノミーの世界では、ネットショッピングの支払状況などで信用を積み重ねられるようになり、保険料や融資額が変わる。シェアリングエコノミーがすごいのは、信頼の在り方を従来とは全く違うものに変える点です。

高田:例えば源泉徴収が典型的ですが、今は会社が行政に向き合うコストを負担しています。それがあるゆえに回っているシステムはあるのですが、それが回らなくなるのが“20××年”だと思います。そして、ローリスク・スモールスタートして、失敗したらすぐに撤退するという敏捷性のある起業スタイルが日本に定着するのではないか。ここで個人が社会と向き合ったときに、シェアリングエコノミーの規制を窮屈に感じる人が増えると思います。個人が活躍しやすい社会を作っていくために、例えば行政手続きを電子化するなど個人の負担を減らす社会にしていく必要があると思っています。

災害時に、シェアで繋がる人の輪を

小池:平成30年北海道胆振東部地震の対応のため今回欠席の小泉進次郎先生には、災害時にシェアの力で個人・民間・行政が協力していくという話をしていただく予定でした。例えばですが、災害が起きたときは民泊の登録書類提出をしなくても人を泊められる仕組みを政府が発動できるようにするなど、民間がスムーズに動けるルール作りを政府で取り組んでいただきたいと思っています。

高田:最近災害が増えていて、平時と有事の距離が縮んでいると感じています。これまでは、平時と有事のシステムが分かれていましたが、今後は平時のシステムの中に有事を組み込んでいく時代が来ると思っています。
徳島県は南海トラフ地震が想定されているシリアスな地域で、備えとしてシームレス民泊(http://www.topics.or.jp/articles/-/2598)という仕組みを作っています。これは、普段は民泊として使い、災害発生時は被災者の宿泊所として活用するというものです。このように、経済性や便利さだけではなく有事において私たちの力を総結集するための道具としてシェアを使っていければと思っています。

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