アメリカやヨーロッパの国に留学する際には、ホームステイを考える人も少なくないでしょう。現地の家庭に宿泊し、ホストファミリーと共に時間を過ごすことで言語や文化に自然と馴染んでいくことができるものです。
ところで、日本でもこうしたホームステイの受け入れを行なうことができるのはご存知でしたでしょうか?今回は、東京都・昭島で世界各国から留学生、外国人の受け入れを行なう嘉手納さんに、ホストの受け入れの極意をたっぷりと伺ってきました。お子さんに英語教育を行いたいと考えている方は必見です!

___ まずは簡単な自己紹介をお願いします。

はい。20代の頃、フロアボールというアイスホッケーを体育館で行なうスポーツがあるのですが、これの日本代表チームのキャプテンとして世界展開をしていました。その時に、英語に大変苦労しました。例えば、審判に抗議ができるのはキャプテンの役割なのですが、思ったことを正確に伝えられなかったり、試合が終わった後のインタビューに上手く答えられなかったりと、自身の英語力に苦しめられていました。
子供が生まれ、育っていくうちに、子供に自分と同じように英語で苦しんでほしくないと思い、なにかいいアイデアはないかと対策を考え始めました。
そこで、自分の家に外国人がいれば、自然と子供たちが英語を話す環境が整うではないのかと思い、2013年からホームステイの受け入れを始めました。今日までの5年間で50名以上の受け入れを行なってきて、これを更に広めていきたいという思いから、2015年に非営利型一般社団法人日本ホストファミリー養成協会を立ち上げました。

___ ホームステイとは、そもそも何ですか?

言葉の定義は曖昧です。ホームステイを日本語に直訳すると「民泊」なのですが、民泊というと多くの人は別のイメージを思い浮かべるかと思います。民泊は旅行客を招き、一軒家やマンションの空室を貸し出すものだと連想するかもしれません。私たちが行なっているホームステイは、ゲストと家族のように住むことです。これには、滞在期間や、価格帯の違いよりも、家族の受け入れて過ごす点において、世の中で言われている民泊との違いがあると考えています。

___ ゲストはどのような方法で受け入れているのですか?

3つの方法があります。まず、大学や語学学校から紹介してもらう方法。次に、ホームステイを斡旋する会社があるので、そこに登録・申請を行ない受け入れを行なう方法もあります。最後に、Airbnbのようなマッチングサイトのホームステイ版から募集を行なう方法があります。

___ ホストファミリーを続けられる秘訣を教えてください。

とても残念なデータがあります。とあるホームステイ斡旋会社によると、アクティブ な(受け入れを継続している)ホストファミリーの数は、全体の登録者数の約半数ほどだ そうです。多くの方が、ホストファミリーに興味を持ち一度は受け入れをしても、すぐに 受け入れを止めてしまうのです。これは(社)日本ホストファミリー養成協会を立ち上げたキッカケにもなります。

そこで、私自身ホームステイの受け入れをしながら、「どうやったらホームステイ受け入れを続けることができるか?」を研究してきました。すると、2つのことが分かってきました。1つは、受け入れ前にできること。もう1つが受け入れ中にできることです。

まず1つ目の受け入れる前についてですが、重要なのはゲストとの人間関係を来る前に築くことです。どういう人が来るのかを事前に把握し、あらかじめハウスルールを伝え、生活する上でのルールを共有するようにしておきます。「ご飯の時間は?」「シャワーの時間は?」「最寄り駅からの行き方は?」といったルールを共有するのです。到着した際には、すでに人間関係が出来ている状態を作っておきます。すると、初めましての時に、もうお互いのことを理解しているので、精神的な負担や手間を避けることができて、受け入れが随分と楽になります。
もう1つは、受け入れ中にお互いのストレスの減らす方法です。事前にやり取りしたハウスルールの中で重要な箇所を今一度口頭で確認します。また、積極的に家事に協力してもらうことで家事負担を減らしたり、場合によっては家事代行を使って負担を軽くする方法も利用します。食事提供などをイベントにするのも1つの手です。たとえば、一緒に手巻き寿司を作ったり、たこ焼き作るだけでも、楽しみながら負担を軽くすることができます。このようにさまざなストレス軽減方法があります。
このように「受け入れ前」と「受け入れ中」を工夫することによって、ホストファミリーを長く続けることができるのです。

___ お子さんのために始めたホストファミリーですが、実際にお子さんに何か変化はありましたか?

長男と次男がいて、ホームステイは長男が3歳の時から受けれ入れをしていて、現在7歳です。最初は家族でない人が家にいるという環境に戸惑いもあったのですが、7歳の長男は、最近の英会話教室のテストで70点満点中67点という高得点を取ったり、先生からすると耳が英語慣れてしているみたいです。これ以上続けると、親バカみたいになっちゃうんですけど(笑)

___ 100人もの受け入れをしてきた中で、一つ印象に残っているエピソードを教えてください。

一番最初に受け入れをしたカナダ人の女の子ですね。カナダのケベック出身で、日本語もそれほど達者でなかったので、お互い辿々しい感じで始まったホームステイでした。しかし、彼女は日本で働きたいという夢を抱いて、一緒に一年間生活をしていく中で、みるみるうちに日本語が上達していきました。一年の留学期間が終了して彼女は、すごい日本語が上手くなって帰っていきました。
それから半年くらい経って、カナダで日本の旅行会社に就職が決まったという連絡が届きました。ちょうど一昨年の4月から新宿で働くことになって、うちにもすぐに来てくれました。社員研修で立ち寄ってくれたのですが、帰って来た時の第一声が「久しぶり」じゃなくて「ただいま」だったんです。それがすごく嬉しくて、私たちは本当に家族になれたんだなということを強く感じました。
今は日本人の彼氏を作って、うちにも連れて来てくれました。その時は何だか複雑な心境でしたね(笑)

___ ホームステイの受け入れにあたって、これだけは欠かさないと意識をしていることはありますか?

まず、一緒にディナーを食べるということです。妻が作った料理を食卓囲んで、まるで家族のように夕食を一緒に食べるというのが欠かさず行なっていることです。だいたいどんなゲスト、外国人、学生さんがいらっしゃっても、最低一回はディナーを誘うようにしています。滞在が少し長い場合は、一緒に出かけたりもしています。出かける先も一般的に知られている観光スポットよりも、私たちにとって居心地の良い日本の日常を体験できるようなスポットを選んでいます。最近だと、座禅会へ行ったり、焚き火の体験へ出かけたりもしました。

___ 最後にこれからホームステイの受け入れをしてみたいという方にメッセージをください。

特別な体験なので、ホストの受け入れを是非やってみてください。ポイントは、受け入れを始める前に少しホストファミリーについてを学ぶことです。受け入れを実際に始めたものの、最初の一回で辞めてしまう人が多いです。それを防ぐためには、ホームステイをすでにやっている人に聞いてみたり、インターネットで情報を調べたり、(社)日本ホストファミリー養成協会に相談して頂ければと思います。

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