オーストラリアのブリスベンで、夫婦でシェアハウスを営むライターの山崎明日香さんは、ご主人との出会いもシェアハウス。現在は2人のお子さん(2歳と0歳)をシェアハウスで育てながら暮らしています。シェアハウスで子どもを育てることのメリットや、海外から見た日本のシェアハウスについて感じることなどをお聞きしました。

__シェアハウスをはじめた経緯を教えてください

夫がもともと叔母さんの家の管理を兼ねてシェアハウスをしていたんです。その家を出た後、子どももいるし一軒家に住みたかったので、家賃負担を軽くするためにシェアメイトを受け入れる前提で家探しをし、ブリスベンで今のシェアハウスをしています。シェアメイトは語学留学やワーホリで来ている日本人や研究のため短期滞在されたおじさま(一番上の写真左)など、さまざまです。

__シェアハウスをしてよかったと思うことはどんなことですか?

まず一番のメリットは“密室育児”にならないこと。常に第三者の目があることにとても救われています。「あすかさん、疲れてますね。大丈夫ですか?」「いや〜昨日の夜、子どもが熱を出して寝れなくて…」といった会話ができるだけで、気持ちが軽くなります。特に、24時間目が話せない乳児期は、夫婦だけではとても大変。加えて、父親が忙しい場合などは完全なワンオペ育児になりますから、そうなると母親はプレッシャーや責任感で押し潰されそうになるんじゃないかと想像しています。海外での出産・育児ですが、シェアハウスのおかげでなんとか乗り切れているんだと思いますね。

ふたつめのメリットは、うちのシェアハウスはキッチンやお風呂、トイレなどを使った後は自分で綺麗にするというのがルールなので、私が多少掃除をサボっても最低限の清潔さは保てます(笑)。
あとは、今はまだ子どもが小さいから彼らが実感しているかは分からないけれど、親以外の大人で自分の味方になってくれる人が世界には存在するということを知ってくれたらいいなと思います。実際、長男は私や夫に怒られると、シェアメイトの部屋に逃げたりするんです(笑)。

__シェアハウスをしていて大変だったことはありますか?

うちは幸い、いつもいいシェアメイトに巡り会えているけれど、ちょっと困った人に当たるとかなりストレスだと思います。夫が、私と付き合う前に運営していたシェアハウスでは、アル中、家賃滞納、窃盗、室内で料理して火事騒ぎ…など問題児がたくさんいたらしいです(笑)。

__シェアメイトを選ぶ際に気にしていることはありますか?

当たり前のことを当たり前にできる人。うちは特にルールのない家なので、トイレやお風呂、キッチンなど自分が使った後綺麗にするなどはもちろん、プラスアルファの当たり前の気遣いができる人がいいですね。たとえば、ゴミが落ちてたら自分のじゃなくても拾うとか、コップ一個シンクに残ってたらついでに洗うとか、自分の家なら普通にするようなことができない(しない)人は結構多いです。特に、日本人は「私は自分の分をちゃんとやってるんだから!」といった感じな人が結構いたりします。

__シェアハウスを始める前と後でイメージは変わりましたか?

住む前は、「気を使いそう」とか、「つき合いたてなのに彼と2人きりになれないとかどうなんだろう…」と思っていたけれど、むしろ他人がいる方が関係にメリハリがつくし、喧嘩をしても部屋を一歩出れば誰かがいてワンクッションおけて冷静になれるんですね。あとは“シェアハウスを円滑に運営する”という共通の目的があるので、夫婦の会話もなくならないし、結果的に私の場合はいいことの方が多いと思いました。

__今のシェアハウスで気に入っているところはどんなところですか?

駅近なこと、空港からもシティからも近くて交通の便がよく、シェアメイトを募集しやすいところです。

__ここがうちのシェアハウスならでは!というルールやイベントなどあれば教えてください!

年越しそばやおせち、お食い初めなど日本ならではの行事のメニューを作っておすそ分けすると、日本人シェアメイトには喜ばれたりします。

あとは、シェアメイトたちの誕生日を祝ったり、私が出産する際には庭でベビーシャワーBBQをしてくれたりしました。

__収入の面ではどの程度利益は出るものですか?

今の家は、家賃を単純に割り勘している感じなので、利益はなしです。その分、空室が長引くと家計に響きます…。でも、庭付きの一軒家で大きなプールを広げたりしながらのびのびと子育てができるのはシェアハウスならではだと思っています。

__今後、日本でどんなシェアハウスが広まるといいな、と思いますか?

日本のシェアハウス事情はよく分かりませんが、なんとなく若い単身者のものというイメージなのと、企業がきっちり経営しているイメージがあります。でも、オーストラリアではもっとゆるく臨機応変に個人宅でシェアメイトを募集していますね。たとえば、シングルマザー(ファザー)や共働き家族が学生さんなどと家をシェアすることでいろんな負担が軽くなるんじゃないかなと思います。ちなみに、家賃と食費を無料にするかわりに保育園の送迎など1日数時間子どもの面倒を見てもらう「オーペア」というシステムがオーストラリアにはあって、日本でもやればいいのにと思います。とはいえ、日本の家は都心ではスペースの確保が難しいとも思いますが…。あと日本人の性格的に、何かときっちりとしているからストレスがたまる人はいるかもしれませんね。私は性格的に大丈夫ですが、細かいことを気にしすぎない大雑把な人には向いていると思います。

__これからシェアハウスをはじめる人にメッセージを

シェアメイトといい関係を築ければ、子育てをする上でもたくさんのメリットがあると思っています。シェアメイトは他人であり友達ではないので「期待しすぎないこと」、「ほどよい距離感を保つこと」、「お互いを尊重すること」を意識するといいと思います。あとはあまりルールを決めすぎない方がうまくいく気がします。


夫と出会った以前のシェアハウス。この家は5ベッドルームの大所帯だったそう。