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Crowd Realty 代表取締役 Founder&CEO 鬼頭 武嗣氏

P2P型金融という画期的なシステム構築に取り組むクラウドリアルティの代表取締役・鬼頭武嗣氏へのロングインタビューの後編。今回は、現在、手掛けている国内プロジェクトへの思いや今後の展望について話をお聞きしました。

シェアリングエコノミーの普及と共に生まれる新しいプロジェクト

――国内プロジェクトの概況を教えてください。また、今後はどのような方にサービスを活用してほしいとお考えですか。
最近は、シェアリングエコノミー系の横のつながりから生まれる話が増えています。例えば、こういったコワーキングスペースもそうですね。既存の賃貸オフィスでは、どうしても“敷金10ヶ月”であったり、リノベーションのためにものすごくお金がかかってしまったりということがありますから、そういった初期投資に係る課題をファンドで解決できればいいかなと思っています。コワーキングスペースに入居する企業の多くがスタートアップやベンチャー企業で、その多くがベンチャーキャピタルなど外部からエクイティ性の資金調達をしていると思うのですが、そうなるとどうしてもキャピタル・コストが大きな負担になりますよね。毎年、数十パーセントものリターンを求められながら、調達した資金を敷金という形で寝かしている状況ですから、それで良いのかという話です。それをファンドで一回受けて、より期待されるリターンが低い資金に組み替えることで、起業家には事業の成長に効率よく資金を使ってもらう、そういう世界が作りたいと思っています。要するに、これまでの不動産業界の慣習に従って賃貸したいオーナーと起業家の間に入って、キャピタル・コストの調整弁となり得るようなファンドを用意したいのです。

――起業家という、小さな“個”を支援してコミュティを作っていくという姿勢が、従来のハード優先のまちづくりと大きく異なっているように思えます。
そうですね。まちづくりに関していえば、従来のようにデベロッパーが手掛けるようなハード主体の大型プロジェクトとは、やはりスタンスは大きく異なりますね。コミュニティは与えられてできるようなものではなく、エネルギーを持っている人が集まって、自然に形作られるものだと思っていて、“個”を見ずにトップダウンで物事を進めても意味がありません。結局、“人”なんですよ。P2Pって、個人と個人の繋がりの中で成立するものなので、そこから自然に発生し、相互に認め、支え合うコミュニティや施設を作る必要があるのではと思っています。

京町家再生プロジェクト

京町家再生プロジェクト(愛称)

――現在、鬼頭さんが注目している街はどちらですか?

注目しているのは熱海で、行政の方々と連携を図りながら、様々な仕掛けを進めている段階です。また、国内プロジェクト第1弾として京都のプロジェクトが公開されたばかりですので、こちらも是非チェックしていただければと思っています。人口減少や高齢化の進行などといった問題を抱えながら、新しい成長産業の切り口を探されている自治体はたくさんあって、そんな中でも新たな事業に取り組まれようとしている方の資金調達を、不動産という観点でサポートしていきたいですね。例えば、星野リゾートさんのように、不動産の所有と運営を分離するビジネスモデルを進めようと考えている方であれば、私たちはその所有側にフォーカスし、いわゆる“お金のかかる部分”をファンドに持たせて証券化していくような、そういった仕組みを小さなスケールで、しかも誰もが作っていけるようにしたいのです。小さな夢をカタチにしようと考える人がどんどん集まって、熱量をもってコミュニティができあがり、そこから自然発生的に様々な新しいビジネスが生まれてくる気がします。人口が減少していきますからね、もはや従来のようなマスに対するアプローチでは通用しません。スケールメリットが効かなくなっているので、もっと差別化していく戦略をとるような人が生まれてくるのが自然だと思っています。

非中央集権型の直接金融システムの構築を目指して

――今後のビジョンを教えてください。
まずは、P2Pでやりとりができる非中央集権型の直接金融のシステムをグローバルスケールで構築することからはじめたいですね。webやテクノロジーの世界では、AppleやGoogle、Facebook、Amazon、Alibabaなど海外勢のプラットフォームにごっそり持っていかれていますが、直接金融、特にエクイティの分野ではまだまだいけると思っています。既存の大手投資銀行などもいますけれど、彼らもグローバルスケールのP2Pのプラットフォームは作りきれてはいませんから、ここの市場は日本からもちゃんと参戦して取りにいきたいという思いがあります。でも、この領域は各国の金融レギュレーションが絡んできますから、私たちのようなプラットフォーマーだけではなく、行政や政府とも足並みを揃えて、グローバルにおけるルールメイキングとビジネスメイキングを両輪で進めていく必要があると思っています。
お金がすべてではないですが、すべてにお金は必要とよく言われる通り、やはりお金がボトルネックになって物事が進まないというケースは多々あります。そういった悩みは、一部の価値判断でトップダウンで対応するというよりは、なるべくシェアによるリスク分散や集合知を活用したネットワークのチカラで解決していきたいですよね。元々、株式だって立ち戻れば、人々が集まって会社を支援するとか、事業を支援するといったコンセプトであったはずですから。それをオンライン、テクノロジーのチカラを使ってより効率的に、時代にあったカタチで進めていくというのが、目指すべき世界なのかなと思っています。
そして、その次のステップとして、意思決定が行われる全ての箇所に段階的に分散型合意形成の仕組みというのを組み込んでいこうと思っています。

――分散型合意形成の仕組みとは?
金融でもモノの売買でもそうですが、もっともシンプルな取引形態は“一対一”ですよね。これは売る方と買う方双方の当事者同士の間で合意形成ができていれば成立します。少し、スケールアップして、例えば株式を新しく発行する際には、これが“一対一”から“一対N”の関係となりますよね。“N”というのは、つまり株式の発行者である“一”が提示する趣旨に対して賛同する人であって、Nが集まれば取引は成立します。クラウドファンディングでいえば、すなわち最初の募集の段階に当たります。最初はいいのですが、問題はその後、“一対N”という関係性を持ったグループを維持しながら、継続的かつ効率的に改ざん耐性も持たせつつ様々な合意形成をしていくためには、一体どういった仕組みが必要なのか、ということを考えなくてはいけません。ここがけっこう難しい話だと思うのです。
結局、まだ金融の世界ってP2Pを進めていこうと思っても、証券取引所のルールやシステムがあったり、発行体による株発行や配当の意思決定があったりと、どうしても一度、中央を挟むことになるのですが、そこから全部解放されたときに、真の意味でのP2Pの世界ってどうなるのだろう?と思考実験している段階です。
弊社が扱っているファンドの意思決定においても、現状はファンド運営者の一任で中央集権的に決定する事が基本ですが、将来的にはここすらも非中央集権化して分散型合意形成によって運用していくところまで到達させたいと思っています。その際には、PoWやPBFTといった既存のアルゴリズムがそのまま使えないケースもあると思うので、今後はシステムを作り込んでいく過程で、ファンドスキームや意思決定の特性に合わせて独自の分散型コンセンサス・アルゴリズム開発にも取り組んでいこうと思っています。
また、これは金融システムだけでなく、様々な組織の意思決定の場にも社会実装できるのでは?とも考えています。

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――具体的には、どんなアイデアがあるのですか。
そうですね。まだ思考実験している段階でモヤっとしていますが(笑)。例えば、現状の議会においては、直接選挙で選ばれた議員が議決に参加し、票を入れることで物事を決めていきますが、こういった仕組みも一つのコンセンサス・アルゴリズムで、プログラムとして記述していくことができますよね。例えば議会においてもこういったシステムを用いることで、低コストですみやかに合意形成が図れるはずです。
そして、様々な企業や地方自治体、国など、多くの意思決定主体のクラスターが社会を形作っており、そこで決定された事項が世の中を動かしていくわけですが、このような仕組みをあらゆるところに実装し、関連付けてP2Pネットワークを作っていくことが、次の時代の社会の形なのではないかと考えています。
特に金融においては、一つの意思決定が大きな経済的インパクトを与えるので、現在は金融市場のインフラ構築において盛んに非中央集権型のシステムに関する議論がなされていますが、これは他の全ての合意形成の中にも落とし込んでいけるはずで、その場合どのようなアルゴリズムを用いるべきなのか?というのを考えています。
そして、P2Pネットワークにおける財や労働力の移転であるシェアリングエコノミーも、現在はシンプルな相対による取引がほとんどですが、これが更にN:Nの関係性に拡張した時にどのような社会の在り方になっていくのかなと。

――その発想はどこから生まれたのですか?
地方や中央の様々な行政、政府の方々と、公民連携や国としての在り方などについて話をしている中、P2Pの考え方で改めて見ていくと、組織やその集合体である社会の在り方自体が、こう変わっていく可能性があるのではないか?とか、このアイデアや技術ってもっと汎用的に使えるのではないか?とか色々とひらめくのですよね。
また、これからAIも社会の様々なところに実装されることになるでしょうから、人間がどのように合議していくべきなのか気になりますよね。一人ひとりの生々しい意見や意思決定は重要だしそれ自体尊重されるべきものなのですが、それが集団化されて、全体のコンセンサスを得るときには、プロセスとしてはシステムでも代替可能になりますし、そっちの方がむしろ効率が良い気もします。
最終的には具体的にどのようなP2Pネットワークやアルゴリズムをデザインするのかが一番のポイントとなるのですが、そこの部分についてはまだ答えは出ておらず、個人的に関心がある今後のテーマとして取り組んでいきたいですね。

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Photo by Niko Lanzuisi

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