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ポートランドの衝撃。再び。

この夏、表参道の「commune246」に拠点を置く自由大学のプログラム「Creative Camp」の一環で、ポートランドに行ってきました。
1999年に訪れてから実に16年振りのポートランド。就職活動を目前に控えた当時の自分は、どうしても行きたい衝動を抑えられず、アポなしでNIKE本社とそのクリエイティブエージェンシーのワイデンアンドケネディに単身突撃しました。これは、GoogleやAppleのオフィスがまだ無い時代の話です。
当時NIKEは「キャンパス」と呼ばれたヘッドクォーターを建てて注目を集めていましたが、それは私が持っていた「オフィス」の概念とは似ても似つかない、まさしく衝撃的な光景でした。大きなグラウンドを舞台にスポンサード・アスリートたちと交流が行われ、そこには相互へのリスペクトがたしかに存在しました。自然豊かなポートランドで出会ったワンシーンは、日本の満員電車、スーツ、狭いオフィスビルといったパブリックイメージの対極にあると言っても過言ではなく、私の社会人としてのマインドに大きな影響を与えました。あれから16年が過ぎ、当時抱いたよりもさらに強烈な行きたい衝動に駆られ、再びポートランドの土を踏むことを選びました。そこで待ち受けていたのは、前回を凌駕するほどの大きな衝撃でした。

なぜこんなにもポートランドが人気なのか。

ポートランドといえばクラフトビール、ファーマーズマーケット、サードウェーブコーヒー、DIY、タトゥーや自転車など、様々なヒップカルチャーの発祥地として有名です。人口60万人ほどと八王子市と同規模にも関わらず、世界各国から町おこしや地域活性に取り組む関係者の視察が後を絶ちません。それもそのはず。

・全米で最も住みたい街No.1
・全米で最も環境に優しい街No.1
・全米で最も外食目的で出かける価値のある街No.1
・全米で最も出産に適した街No.1
・全米で最もクリエイティブ街No.3
・全米で最もビールが美味しい街No.1

と各種ランキングでトップを占め、若者に人気のクリエイティブシティとして、そして、地方自治体の規模感で実施できる町づくりの成功事例として、非常に注目されているのです。

行政、住民、企業が肩を組んで取り組む町づくり。

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その背景には1970年代から実施されている「ネイバーフードアソシエーション」という住民主導の町づくりシステムがあります。
行政は住民を信頼し、企業は住民の意見を聞き、住民は自分たちの町は自分たちでつくるという意志を持ってます。行政は町の大まかな戦略作りにフォーカスすることにより、有給の政治家は市長を含めてたったの5人。各議員は担当する専門分野に別れて役割も責任も明確です。
住民は夏になると公園を借りてライブや映画上映などを至るところで開催し、住民が道路を借りて飲食店やバンドを集めて街中でブロックパーティーと呼ばれる小さな催しを行っています。
公園や道路を当たり前のようにシェアするということは日本ではなかなか考えられませんが、コストを抑え、地域住民や旅行者にも開かれ、行政との関係も構築できる非常に合理的な取り組みと言えるでしょう。

シェア文化の発信地としてのポートランド。

ポートランドは、世界中で広がっている「Airbnb」の優れたホストとリスティングが多い地域でもあります。同サービスの拡大とともに、商業的で利益重視のホストも増える中、ポートランドのホストはホスピタリティにあふれ、文化交流を楽しむ傾向を持ちます。個性的で自然豊かな住居が多いことも特徴の一つです。
そんな背景もあってか、昨年「Airbnb」は「カスタマー・エクスペリエンス・センター」というサポートセンターの拠点をポートランドに設置することを決め、ポートランド市はそれを受け入れました。受け入れたという表現に違和感がある人もいるかもしれませんが、ポートランドは企業誘致やベンチャー育成にも積極的に行う一方、どのような企業を受け入れて、どのような産業の支援をするかを戦略的に厳選しており、サンフランシスコのように急激に家賃や給料が上がったり、大都市のように経済を優先して住みにくい街にならないようにしているのです。

日本にもっと、シェアカルチャーを!

ポートランドの表面的な真似をするのではなく、その背景やマインドを理解し、風土や慣習に沿ったアレンジを加え取り入れることで、日本に「シェアカルチャー」を根付かせ、ゆくゆくは世界をリードするムーブメントをつくってゆきたいと私たちは考えています。
国内にもポートランド的な思想を持ち、シェアサービスを取り入れたライフスタイルを楽しんでいる人たちがいます。シェアリングエコノミーのサービスを提供する企業も続々と増えています。個人、企業、行政、そしてメディアが協力して、日本の「シェアカルチャー」を盛り上げていくことができたら、面白いことになりそうだと思いませんか。当コラムでは、その一助になることを願って実際に著者が目撃したポートランドのシェア事情をお伝えしていきます。

「シェア」は、日本の未来を明るく照らす!?

東京都大田区では、シェアリングエコノミーに関連する法や条例の改正に向けて具体的な動きがあり、今後さらに拡大する分野であることは間違いないでしょう。2020年のオリンピックに向けて「シェア」の文化を広く理解・実践してゆけたら、あらゆる面で国際社会にグッド・インパクトを与えることができるはず。ぜひみなさんも、一人の当事者としてこのムーブメントを楽しみ、そしてそれぞれの手段で参加していただければ幸いです。