コロナ禍で加速したテレワーク。それにより、企業では今、オフィス改革が叫ばれています。そこで今回は、「テレワーク時代のオフィス」をテーマに、社員を守りながらもイノベーションを生み出し続けるためのオフィスの在り方を議論してみたいと思います。4社が、コロナ禍でのオフィスの課題をどのように解決してきたのも必見です!
(参加された方々のプロフィール)
重松大輔さん
全国の貸しスペースをマッチングする、株式会社スペースマーケット 代表取締役社長。シェアエコ協会代表理事。現在のスペース登録数は14,200。パーティ、飲み会、撮影、収録、趣味遊び、スポーツ、仕事などジャンルはさまざま。コロナ禍では働くシーンに特化したスペースやサテライトオフィスの需要が伸びたそう。今回のセッションのモデレーター。
青野慶久さん
クラウド基盤サービス顧客満足度1位を獲得した、サイボウズ株式会社 代表取締役社長。情報共有ツールと新しい組織運営メソッドを広げることで、多様な個性を活かせるチームワーク社会を目指している。選択的夫婦別姓度を提唱中。
高橋正巳さん
全世界38ヵ国、840拠点のメンバーとつながれるコミュニティ型ワークスペース、WeWork Japan合同会社 の最高戦略責任者。2018年2月から国内6都市に展開中。「新時代の働き方をすべての人へ」をテーマにWithコロナのフレキシブルな働き方を改革している。オンラインとリアルを融合したビジネスマッチングサービスConnect by we workもスタート。
畑中直子さん
NTT東日本ビジネスイノベーション本部 地方創生推進部担当部長。
シェアリングプラットフォームとしての拠点や車、電柱などNTT東日本の資産を地域と組み合わせた課題解決を推進中。2020年8月より、スペースマーケットと業務提携した新サービス「スペースマーケットWORK Plus」がスタート。遊休スペースにICTを完備したワークスペースとしての活用をサポートしている。
コロナで社員の働き方はどう変わったか
__NTT東日本さんは大企業ならではの大変さもあったのでは?
畑中さん:テレワークは制度としては依然からあったのですが、実際に利用する人は一部の人だったんです。それがコロナで「なるべく移動を少なくしよう」ということになり、この半年で在宅勤務やサテライトオフィスを進めてきました。一方で、社員どうしのコミュニケーションが課題になると思い、チャット連絡IDなどの対応も並行して行いました。中には、初めて在宅勤務を経験した年配社員もいたのですが、会社に行かなくても成果が出せた人は今でも継続していますね。
__サイボウズはコロナ禍での「がんばるな、日本。」CMが大反響でしたよね。実際社内のテレワークはどのように進めたのでしょうか?
青野さん:うちは10年前からテレワークを導入していたので、今回も問題ないだろうと思って全社員で3ヵ月やってみたんです。ですが、私が一番慣れていなかったことが判明しまして……。実はこれまでも、私だけ出社して会議室とテレワーク社員とをつなぐビデオ会議ということがあったのですが、回線上やりにくかったと言われました(笑)。
これからは社員が出社したとしても会議はオンラインのビデオ会議にしようかなと思っています。とはいえ、皆でアイデアを出しまくる集中系の会議はリアルの方がいいという声もありましたね。
__WeWorkさんはいかがでしたか?
高橋さん:僕らは基本的にPCとモバイルさえあればどこでも仕事できるので、コロナ禍では社内で全面リモートにしました。世代的にも皆デジタルに慣れていたのでそこまで影響はなかったですね。ただ、仕事って創造型と集中型に分かれると思うんですけど、創造型の場合はフルリモートだとやりにくい面もあるなというのは感じました。会社、自宅、+αと働くスペースが仕内容に応じて3択くらいあるのがいいのかなと思っています。
重松さん:それはすごくよくわかります。イノベーションを生む雑談や、入社して間もない新入社員の対応、メンタル面の管理などは課題だなと感じましたね。
テレワークで出た課題をどう解決したか
__テレワークで出た新たな課題を、皆さんの会社ではどう対応していましたか?
青野さん:テレワークの社員から「在宅勤務だからといってパフォーマンスが今までと同じように出せるとは限らない」と悲鳴があがったんです。奥さんや子どもたちが近くにいますし、子どもはビデオ会議大好きですからね(笑)。「このままでは給料が下がるのでは」という不安が出てきた。それに対して、私は「わが家も一緒だ。気にするな」とメッセージを出しんです。また、テレワークだと雑談が減るので、あえてグループウェアでプライベートなことも書き込もうとしたら、書き込みが5倍に増えたんです。口頭のコミュニケーションがいかに多かったのかも気づかされましたね。
重松さん:トップがメッセージを出すって大事ですよね。僕も子どもが3人いるので、ビデオ会議に入ってきてもいいよと言っていました。
青野さん:子どもがビデオ会議に入って和む場合もありますよね。「家族に働く姿を見せられてよかった」という声もあったかな。
高橋さん:私たちはシェアオフィスという場所を持っているので、コロナ禍での安全衛生面には気をつかいましたね。ソーシャルディスタンスの確保で椅子をまびいたり、座っていい場所にシールを貼ったり。また、社員が常にどこにいるかを毎日1時間、コロナ会議をして入念にチェックしていました。感染者が出た場合の対応策なども、初期はどこまで消毒をやればいいのかわからずかなり戸惑ったんですが、そのプロセスも慣れてきたように思います。
畑中さん:うちは、テレワークで社員同士のコミュニケーションが一番の課題でした。たとえば「あの部署は忙しそうだな、あの案件が進んでいるのかな」といった“言葉に出さなくても得られる情報”というのがオフィスではすごくあったんだなと。それがなくなってしまう分、意識的に情報発信や共有をするよう心掛けて、「伝えないと伝わらないよ」と社員には話をしました。
重松さん:口に出して発信しないと伝わらない。コミュニケーションギャップはありますよね。サイボウズでは常に会議を録画するようにしたんだとか?
青野さん:はい。社内のビデオ会議を社員の誰もが参加できるようにしたんです。経営戦略会議なんかも。ちょっと他部署の雑音が入るようになるのは大事だなと感じましたね。
重松さん:「強制じゃないけど聞きたい人は聞いていいよ」という会議の取捨選択ができるのは便利ですよね。録画したものを2倍速にしたり、テロップ表示にして後で見たっていいですしね。
コロナ禍で浮き彫りになったオープン化と安全性
__テレワークが進んで、オフィスやツールではどんなことを意識するようになりましたか?
青野さん:社内の情報がよりオープンになってきましたよね。うちは僕の会食経費もフルオープンです(笑)。オフィスにしてもツールにしてもヒエラルキーじゃなくて、いかにオープンに情報共有していくか、が重要になってくるのかな。
重松さん:コミュニケーションとか、組織設計とか心理的安全性が大事になってくるでしょうね。その前提にはオープン化は必須。これからの企業の健全性の指標の一つにもなるのでは?
青野さん:オープンだけど安全な空間をつくるかは重要ですよね。リアルでもWeWorkなんかまさにそう。そこにいる人たちとお友達になりたいでしょう。リアルでもバーチャルでもこれはテーマなのでは?
高橋さん:そうですね。WeWorkは壁もなくガラスで双方向がオープン。リアルだけどオープン。それは一見勇気がいるけど、双方向でオープンであることが重要なんです。「お互い見えるよ」と言う関係性は安全性につながっているのではないかと考えています。
都心or地方、今後オフィスはどう変わるか
__これからのオフィスはどのように変わってくると予想しますか?
畑中さん:うちでは、都心の大きなオフィスを手放して、社員の自宅の近くにサテライトオフィスを作るという動きも出ています。これからは拠点の分散化が進むのではと考えています。災害が起こった時に機能を一か所に集中させないというメリットもありますよね。
また、「地方駅前の駅の部屋をワークスペースとして貸し出せないか」という会社さんからの相談も多く受けるようになりました。地方圏は、企業のサテライトオフィスを誘致して新たな雇用を生みだせたら、地域の活性化にもつながるのではと考えているようです。
重松さん:フレキシブルオフィスやサードプレイス的に使える場所は今後増えてくるでしょうね。スペースマーケットでもビジネスホテルのワークスペース化も増えています。WeWorkの今後はいかがですか?
高橋さん:WeWorkがビジネスエリアだけではなく、住宅エリアにもあった方が便利だという声もあります。これまでは、会社に行くこと=仕事だったけれど、仕事の内容によって場所を選ぶという選択肢が与えられた。それをどうサポートするかを考えています。オフィスを縮小して削減できたコストを使ってオールアクセスのようなフレキシブルサービスにするのもひとつ。様子を見たいという声もあるので、柔軟性をもたせ必要に応じて利用人数を上げ下げできるオフィス運営を検討する企業も出ています。
__サイボウズは日本橋に素敵なオフィスがありますが、どう考えてますか?
青野さん:うちは現在の出社率は13%。立派なオフィスを作ってしまったので経営者としてはもったいですよね(笑)。どれくらい出社率が戻るかを今議論している最中です。一方で、今あるオフィスの使い方は変わってきました。ビデオ会議用の個室を増やしたり、動画配信スタジオやプレゼン専用のスペースを作ったり……。
「テレワークでどこでも働ける」と確信した社員の中には、地方に移住する者も増えています。東京に住んで働くという憧れが、ついに地方への逆流がはじまったかと。地方は今チャンスですよね。
畑中さん:非常にそう思います!
青野さん:地方はそれぞれいいところがあるけれど、逆流したときに受け入れられるコミュニティがあるのか、その力が求められますよね。軽井沢なんかは受け入れてきた土地だから強い。自治体の人にはそれを知ってほしいですね。徳島県の神山町なんかがそうなんですけど、どこに空き家がある、何に困っているかをシェアできるような自治体は強いですよ。
新しい働き方はまさにこれから。地方は繊細一隅のチャンス!
__最後に、読者にメッセージをお願いします。
畑中さん:新しいワークスタイルが確立して、誰もがどこででも、快適に安全に働ける環境整備のお手伝いをしたいと思っています。働く人、企業にとっても地域にとってもプラスになる効果を生み出したいですね。
高橋さん:10月より、月額39,000で国内拠点使い放題のオールアクセス「WeWork Japan2.0」という新プランを始めました。働き方が変わって課題が変わった。ソリューションプロバイダーがいかに柔軟でいるかは大事だと思います。それをどうサービス化していけるかを重視したいですね。
青野さん:地方は今まさに繊細一隅のチャンスです!100年に1回のチャンスだっていうこと。そのためにはオープンで安全、デジタル化、がキーワードなのではないでしょうか。
重松さん:コロナで元々来るべき未来が一気に数ヵ月で早巻きになって現実化したなと感じています。デジタルプレイヤーにとっては追い風で、いろんな慣習が変えられる大チャンスです。その日の気分やTPOで、家でも会社でもないあらゆる場所で働けるように。
それを提供できるようなビジネスをしたいですね。地方も大きなカギとなります。
皆さんでぜひチャレンジしていきましょう!
グラレコ作成:水口綾香さん