シェアリングエコノミー 協会主宰「SHARE SUMMIT2019」災害大国日本の共助 ~防災インフラとしての シェアリングエコノミー ~

2019年11月11日、虎ノ門ヒルズフォーラムで開催された一般社団法人 シェアリングエコノミー 協会が主宰する「SHARE SUMMIT2019」。「共創・共助による新しい経済を皆で考える1日」という本サミットのテーマに、もっともふさわしい内容のセッションが、こちらの「災害大国日本の共助~防災インフラとしての シェアリングエコノミー ~」ではなかったでしょうか。

登壇者は、衆議院議員の平井卓也さん、一般社団法人カーシェアリング協会の石渡賢大さん、Airbnb Japan株式会社の山本美香さん、そして株式会社AsMamaの甲田恵子さんがモデレーターを務めます。

冒頭で各自の自己紹介、および事業内容や取り組みについて概略説明があった後、まずは「 シェアリングエコノミー の災害対策の可能性」について互いに意見を述べあうことに。モデレーターの甲田さんが「災害が発生したとき、これまでは自治体が何とかしてくれるという考えがあったが、これからは自分たちの生活は自分たちで守っていく時代がやってくるのでは?」と問いかけます。

それに対して平井議員は「自治体も同様に被災するので、その機能がフルスペックで発揮できない」と指摘。避難時にはシェアサイクル、ライドシェア、被災者に対しては民泊、バッテリーシェア、医療相談、食料提供、復興時にはクラウドファンディング、クラウドソーシングなど、マッチするシェアサービスがあると述べ、「徳島県が平時は民泊、災害発生時に避難所になるシームレス民泊を県として制度化している」と説明しました。

ただし、こういったシェアサービスの存在を被災者が認識していないと指摘。「困ったときはお互い様という考えは、日本人のDNAの中に必ずある。平時から活用してもらうことが重要なのではないか」と述べました。

衆議院議員の平井卓也さん

Airbnbの山本さんは、自社の取り組みとして「災害発生時には該当エリアにいるホスト、ゲストの必要な情報をメールにて配信している」と説明。また、アメリカのハリケーン発生時にホストが自主的に被災者を預かったことを端として生まれた『オープンホームズ』という制度を熊本地震の際に初めて実施したの述べます。「100人以上のホストが無償提供をしたいと言ってくれた。しかし被災者認定ができなかったり、情報が届けられないという問題点も浮き彫りになりました」と振り返ります。現在は、NPOと共に現地入りし、クーポンを発行して支援者に宿泊施設を提供する活動を行っていると述べました。

カーシェアリング協会の石渡さんは、「被災者に無料の車の貸し出しを行っている」と説明。「SNSで発信をすると、使用していない車を提供したいという方が数多く名乗り出てくれるが、ボランティアが運搬をしてくれるため、自動車保険に加入してリスクをカバーできる体制を整えている」と状況について述べます。それでも車の数は不足しているため、「地域住民の皆さんでシェアをしていただき、効率的に活用してもらっている」と説明します。

AsMamaの甲田さんは、「台風被害にあわれた方が床上浸水の泥を掻き出す際に、子育てシェアを活用いただくケースが増えている」と説明。「子どもを見てもらうだけで泥のかき出す時間が作れて、早めに日常生活に戻ることができることをユーザーに教わった」と言います。困ったことに、まだまだサービスの認知度が広まっていないということ。ユーザーからは、「こうしったサービスがあることを、公共機関から情報発信してもらえないか」という問い合わせが多くあったと述べます。

そして甲田さんは、さらにサービス提供者である二人に「自社努力でサービスを災害時に広げようとしているが、この災害大国でいかにスピーディに社会基盤として実装していくうえで、どのような課題を感じているか?」と問いかけます。

株式会社AsMamaの甲田恵子さん

Airbnbの山本さんは、「シェアエコ独特の本人認証など安心安全を担保する仕組みがある。そのため災害が発生してからではなく、事前に一度活用していただきたい。それをホスト、ゲスト、そして自治体の方にもお伝えしたい」と述べます。さらに情報が自治体ベースではなく広域の連携が必要だと主張。「特に海外の方は自分が今、どの自治体にいるかわからないので、広域レベルでのお話ができるとありがたい」と意見を述べました。また、災害時に旅館業者には支援があるが住宅宿泊事業には未適用であると指摘。「今後、そのあたりの法改正を進めていただきたい」と述べます。

カーシェアリング協会の石渡さんは、「いきなりシェアしてくださいと言っても難しい。今、石巻で地域で車を共有する文化を根付かせようと平時から普及活動をしている」と述べます。昨年の西日本豪雨の際、自治体と業界団体の連携によってスムーズに支援が進んだのを目の当たりしたといいます。「ところが平時から、活用をするにはリスクがあるからと合意が見いだせなかった。お墨付きをもらうためにどうすればよいか悩んでいる」と現状を明らかにしました。

一般社団法人カーシェアリング協会の石渡賢大さん

甲田さんは、これらの話から「平時から皆さんがやってみる、試してみることが必要。ひとつの文化として定着していれば、災害対策に有益なひとつの手段になるのでは?」と提起。そのうえで、「官民連携の要望が出てきたが、役割の整理はどうすればよいか?」と平井議員に問いかけます。

平井議員は、「平時からのお付き合いが大事だし、そこでできるトラストがいざというときに役に立つ」と回答。「被災者は個々に困っていることの内容が違いので、一律のサービスではなく様々なメニューがあるほうが良い」と意見を述べました。さらに「シェアリングエコノミー協会は、シェアサービスの提供者を認定する機能を持っているので、それらをサービスメニューを提示しながら、各自治体と防災協定を丁寧に結んでいくことから始めるべき」と述べ、次回の国会で提出する議員立法の中に、“自治体がデジタル技術を防災復興に活用すべし”とする内容を盛り込むことを明らかにしました。

さらに「民間企業はどのような役割を担うことができるか?」という問いに対し、Airbnbの山本さんは「ホストのアイデアから先の『オープンホーム』という制度が生まれたし、まだまだ他にもアイデアが生まれている。共助の精神をもって困っている人を助けたいという方が多い」と説明。そして「こういった民間対応と官の対話の場を設けていただけるとありがたい」と述べました。

Airbnb Japan株式会社の山本美香さん

カーシェアリング協会の石渡さんは「岡山県とは防災協定を結んだ。災害発生時には拠点提供と自動車業界団体がカーシェア協会に車を提供するように発令。それを被災者に貸し出すというスキームを作った」と説明。「行政の皆さんと役割が明確になることで災害復旧のスピードがあがっていくのではないか」と意見を述べます。

甲田さんはAsmamaの事例も紹介。「ここ3年の間に官民連携で自治体と協定を締結している。地域活動家の掘り起こしと実際に子育てを中心に、共助しあう仕組みの社会実装を行ってきた」と説明。「平時から共助しあえる状況を作っておくと減災、防災につながる」と述べました。

最後に、それぞれが今後の取り組みやビジョンについて以下のように述べました。

「来年は東京オリンピック/パラリンピックが開催。多くの外国人が日本に初めていらっしゃる。しっかり楽しんでいただきたいが、何か起きたときには、きちんとホストの情報を発信したい。それは自治体の要望も含まれる。すでに新宿区とは提携を結び、ホストとしっかり災害対策をしていこうと考えている。他の自治体とも何かできたたらよいと思っている」(山本さん)

「災害は起きないほうが良いが、どうしても起きてしまう。私たちは車を出すスピードをあげていきたい。また400万台の車が劣化で廃車になっている。私たちに託していただき有効活用する活動も進めている。自分たちができることを提供するのがシェアエコの精神。私たちは車が循環できる仕組みを整え社会に貢献したい」(石渡さん)

「シェアエコは色々な可能性とアイデアに満ちている。災害時に日本のシェアエコが持っているパワーを全部発揮できたら、日本人のシェアエコに対する考え方が根本的に変わる。最近の若い人はお金のことだけを考えて事業を起こしているわけではない。GAFAのような巨大プラットフォームではなく、小さなプラットフォームをたくさん作るのが令和の時代に最適な方法。それぞれのシェアエコ事業者がそれぞれの分野で世の中のニーズに応える、そんな日本流のCo-エコノミーが必要。もっとシェアエコを社会に浸透させたい。自治体との連携を深めていただきたい」(平井議員)

最後にモデレーターの甲田さんが「災害時、役に立つ情報は、身近な個人からの発信だった。普段から、今日のような話を周囲に発信してほしい。ホストが増えてこそ、助けてもらえる被災者も増える」と来場者に呼びかけながら締めくくりました。