お茶屋さんの広報として働く三浦さんは、貸しスペース「イエローハウス」のオーナーでもある。貸したい人と使いたい人を結ぶスペース貸しのシェアサービス「軒先ビジネス」を活用して、自宅1階のアトリエを若手アーティストへのギャラリーに、駐車場をキッチンカーにと2種類のスペース貸しを運営しているという。そんな三浦さんにスペース貸しの魅力についてお話を伺いました。

__三浦さんは、普段どんなお仕事をされていますか?
静岡に本社を構えるカネカ北川製茶株式会社の広報/営業として、お茶に関するさまざまなサービスやイベントの企画などを行っています。その前は都内のPR会社に勤めていて、スペース貸しの「軒先ビジネス」にも関わっていたりしたので、自分にとってシェアサービスはとても身近な存在でしたね。

__なぜ、この物件を借りようと思ったのですか?
お茶に関するイベントができるスペースを探していたときに、偶然「軒先ビジネス」でイエローハウスを見つけました。話を聞くと、次のオーナーを探しているというタイミングだったので、それならばと自宅兼シェアスペースとして借りることにしたんです。もともとこの近所に住んでいて、日本橋エリアが大好きだったので、「地域の人たちが交流できる場所を作りたい」という思いと、「いつかギャラリーに住んでみたい!」というアート好きの野望が合致したのかもしれませんね。

__「イエローハウス」のスペースシェアは、どのようにして広めていきましたか?
いくつかのサイトに登録しましたが、メインは「軒先ビジネス」です。このエリアは東京藝術大学のキャンパスからも近いので、1階のギャラリースペースは、彼らの展示やPOP UP STOREが低価格でできる場所を探していたという条件にもマッチしたんだと思います。東京芸大に限らず多くの芸大生が使ってくれましたね。このイエローハウスはそんな若いアーティストたちのサポートがしたいと思って先代が始めたものだったので、僕がオーナーになってもその意思は引き継いでいこうと思いましたね。写真や文章で詳しく丁寧に利用方法や利用例を紹介したり、FBでギャラリーページを作ってPRをしたりしましたが、一番は口コミが大きかったです。それ加えてスペースの稼働率も大きな信用になることもわかりました。

__駐車場にはキッチンカーがかなりの頻度で利用しているそうですが、相性が良かったのでしょうか?
正直ここまで人気になるとは思っていなかったのですが、僕がオーナーになって、キッチンカーは、月の利用0日が月22日にまで伸びました。ほぼ毎日何かしらのキッチンカーが利用してくれているという状況ですね。この場所は通りに面していて周りに会社が多いという好立地はもちろんなのですが、曜日や日にち、時間での固定出店ができたり、あとは自由に使ってOKという条件がよかったのかもしれません。キッチンカー界隈では「イエローハウスは売れる!」と評判になっていったようで、実際ここをきっかけに行列が絶えない有名キッチンカーへと巣立って行かれた方たちもいます。オーナー冥利につきますね。

__「イエローハウス」を運営する際に心がけていたことはありますか?

ギャラリーにしても駐車場にしても「夢に向かって頑張る若手にチャンスを与えたい」と思っているので、利益は考えていません。僕自身メインはお茶屋さんなので、「絶対に利益をいくら出さなきゃ」と思わず気楽にできたのが結果的によかったのかもしれませんね。
あとは、これは僕の職業柄なんでしょうけど、積極的にコミュニケーションを取るようにしていました。キッチンカーの方とは「ここに看板を出した方がいいですよ」とか、メニューに関しても「こうした方が売れると思いますよ」などとアドバイスをしたり。どうせやるなら売れてほしいと思ってしまって、自然とPRのお手伝いをしていたのかもしれませんね。
僕はとにかく人が好きだし、誰かが喜んでくれる“場所をつくる”ことが好きなんだと思います。

__特に印象に残っている展示はありますか?
この3年で数えきれない方たちがギャラリーを利用してくださいました。ネパールで服作りをする友人のブランド『mahatoma(マハトマ)』が毎年ここで展示会を開いてくれて、回を重ねるごとに彼らの成長を目の当たりにしたり。壁画×ダンス×音楽をテーマに、地域住民を巻き込んだアートプロジェクト「おどりのもり」もたくさんの子どもたちが来てくれて面白かったですね。「コンクリートジャングルの中の憩いの場になれたら」という思いで、スペースを貸し出ていたのですが、たくさんの笑顔が見られたり、利用してくださる方たちの成長が見られるのがとても楽しかったです。

毎週水曜に出店していたカレー屋の「八仙花」。おいしいカレーを求めて出店日には行列ができています。

イエローハウスでキッチンカーデビューした「ハタコーヒー」。出店から1年半が経ち、地域の人に愛されるお店に成長。

マハトマの展示販売会。ネパールで作られたこだわりの服を買いにたくさんの人が訪れました。

__三浦さんにとって「イエローハウス」はどんな存在ですか?
残念ながら、このイエローハウスは、日本橋再開発の関係で取り壊しが決定してしまって、間もなくクローズするんですが(イエローハウスの営業は2019年9月1日で終了となりまう)、僕にとっては身体の一部というかライフワークそのものでしたね。昭和23年に建てられたここは、夏は暑いし、雨漏りはするし、正直住むうえでは不便もありましたが、それすらも楽しかった。やりたいことは全部やったという達成感でいっぱいです。ここの運営をしたことがきっかけで、今の本業であるお茶屋さんの「New Title」というサイトのデザインをしてくれているビジネスパートナーにも出会えましたし、僕にとってかけがえのない財産となる出会いがたくさんありました。

僕自身、シェアハウスに住んでいたこともありますし、本業のお茶屋さんではコワーキングスペースや会議室のシェアを活用しますし、イベントをする際は「スペースマーケット」で場所を探したりとシェアサービスはとても身近な存在です。今回のスペース貸しオーナーという経験を、今後は本業に活かしていけたらと思っています。もちろん、これからもこのエリアに住むつもりなので、この地域を盛り上げる活動もしていきたいですね。

__これからスペース貸を始めたいと考える人にアドバイスを!
借り手の売り上げが伸びると、自然と稼働率が上がり定着していきます。そのためには、ただ場所を貸すだけではなくて、借り手と密にコミュニケーションを取ること、一緒にそのスペースの運営を作っていくと言う意識が大切だと思います。初めて借りる方はその場所の土地勘もなければ、一日の中でどんな人の流れがあるかもわかりませんから、そのあたりをアドバイスするだけでも変わってくると思いますよ。

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