ミニマリスト 石川県の私立高校で英語教師をしている吉川さん

石川県の私立高校で英語教師をしている吉川さん。彼はあることがきっかけで ミニマリスト 生活を始め、昨年ついに家まで手放した。どんな変わった人なのか…という思いを抱きつつ話を聞くと、生徒思いの真っすぐで素敵な先生だった。今の暮らしに至る理由もとても明確で、生徒や保護者、同僚の先生たちも理解してくれているという。一体どんな生活を送っているのだろうか。

__現在のお仕事や取り組まれていることについて教えてください

普段は石川県の私立高校で英語の教師をしています。教師歴は4年で、高2の担任も受け持っています。また最近は平日の仕事が終わったあとや休日の時間を利用して、ボランティアで英会話教室や異業種交流イベントを開いたり、ミニマリスト や教育についての講演活動を行ったりもしています。

__なぜ、家を借りずにゲストハウスに住むことにしたのですか?

大学4年の卒業旅行で訪れたイギリスでバックパッカーの子と知り合って。リュックひとつで旅をするさまがとてもかっこよくて衝撃を受けました。その後、いかに自分が不要なものに囲まれた生活をしているかと思うようになり、洋服や収集していたフィギュア、自慢の600冊近い本、財布に車と2年くらいかけて徐々に 断捨離 していきました。
家を手放すきっかけは昨年の夏休みです。イスラエルへ2週間旅に出て、帰国後も都内で10日間の社会人インターンをしたりしていたら、1ヵ月で5日も家にいないことに気づいて。「ああ、これなら必ずしも自分の家に住んでいる必要はないな」と思いました。
ゲストハウスを選んだ理由は主に2つあります。一つ目はいろいろな価値観に触れたかったということ。教師という仕事をしていると、なかなか学校外の方と触れ合う機会がありません。ゲストハウスに住めば世界中から異なる職業や年齢、宗教、文化の人たちとたくさん出会えるのではないかと思いました。二つ目は、専門である英語の上達。日本にいながらも英語を使う環境に身をおきたかったんです。環境を変えることで結果的に生徒たちとの関わり方や授業の方法も変わってくるのではないかという期待もありました。

ミニマリスト 高校教師の吉川さんの部屋

吉川さんがメインで泊まっているゲストハウス。ここが吉川さんのプライベートスペースとなる。

__家を手放して学校や保護者、生徒さんの反応はいかがですか?

始めはすごく驚かれましたが、この暮らしに至る思いを話すと皆さん理解してくれました。僕のこの生活スタイルは学校関係者や保護者、生徒たち、周囲の理解があってできることだと思うので、今の環境にはとても感謝しています。

__今の生活を始めてよかったことを教えてだくさい

ゲストハウスに住んで現在半年くらいになりますが、今のところいいことばかりです。
仕事の面では、プリントや教科書もデータ化していてパソコンさえあればどこでも仕事ができるので、wifi環境が整ったゲストハウスは問題なし。美味しいコーヒーも自由に飲めたりするのでむしろ作業がはかどります(笑)。英語の上達も思った以上でした。僕のゲストハウスには日に100人くらいの外国人観光客が出入りすることもあるので、英語で2~3時間話していることも。英会話教室に通うより上達する気がします。

ミニマリスト 高校教師の吉川さんの授業風景

授業では、PCやタブレット、プロジェクターを使っているため、最近は黒板にチョークで文字を書くことが少なくなったそう。「それで浮いた時間を英会話や入試演習のために使っています」と吉川さん。

生活面では、家がないので外に出歩くようになり、フットワークが軽くなりました。今までは車で家と学校との往復しかせず人と会うこともほとんどありませんでしたが、今ではゲストハウスの内外でいろいろな方と積極的に話すように。そこでの話は自分自身も勉強になりますし、学校で生徒に話すことで彼ら・彼女らにもいい影響を与えられたらと思っています。
実際に最近は、クラスの生徒たちが少しずついろいろなことにチャレンジするようになってきて。街で金沢を訪れる外国人の方々にインタビューをしてみたいと言ってきた子がいたり、学生団体を作って高校生と社会人の交流会を開催する子がいたり、被災地へボランティア活動に行く子がいたり。全てが僕の影響だとは思っていませんが、僕が普段する話がちょっとでも参考になっていたら嬉しいなと思います。

吉川さんのゲストハウスの仲間と


ゲストハウスの共有スペース。毎日ここで、国内・国外問わずいろいろな旅人やビジネスマンと交流をしているという。

__ ミニマリスト 生活を始めて自分の中での変化や気づきはありますか?

細かい部分で言ったら数えきれないくらいありますが、大きく見ると「こうしなければいけない」という固定概念に縛られなくなりました。たとえば、英語の授業においても「今まで当たり前に行っていた冒頭の英単語テストは家でもできるからやめる」「何も疑問を持たずに黒板に教科書の文字を写していたけど、時間短縮のためにプロジェクターで文字を投影しよう」など改善マインドで授業をできるようになって、結果的に授業の質が上がっていると感じています。

あとは、人生観が変わりました。会社員だから、教師だから、地方だからできない、無理だということはないんだと身をもって体験できた気がします。生徒たちにも、今の時代どこに住んでいても情報格差はないことを伝えつつ、知識だけでなく実体験に基づいた進路相談ができたらいいなと思っています。

吉川さんの持ち物

こちらが、吉川さんの所有物すべて!

吉川さんの私物

中身はこちら。「この写真は半年ほど前に撮ったもので、今はここからさらにドライヤーやジャージがなくなっています」とのこと。

__これから吉川さんが挑戦してみたいことはありますか?

学校の先生のオンラインコミュニティを作りたいと思っています。僕は学校の外で他校の先生や、先生以外の職業の方たちとの交流を通して、自分の教育がアップデートされている実感があります。ただ普通の学校の先生は基本的に部活動の指導などもあって、なかなかそのようなことのために時間を割けません。だからそういった交流をオンラインでできたらいいなと思い、現在、準備をしているところです。そのコミュニティでは授業のアイディアを共有したり仕事の相談をできるだけでなく、プリントやスライドなどのシェアや異業種の方々との交流もできるようにと考えています。

ミニマリスト 高校教師の吉川さん

仲良くさせていただいている学習塾にて。大学生のインターンの子と話をしたりすることも。

__これからの時代を生きる学生さんたちに何か伝えたいことはありますか

生き方に答えはないし、できないことはない。今の時代、スマホさえあれば親指ひとつで人生を変えることだってできる。世の中にはいろんな人がいて、いろんな価値観があるということを若いうちに経験して、やりたいことにどんどん挑戦してほしいと思います。

__ ミニマリスト 生活をどんな人におすすめしますか?

誰にでもこの生活をおすすめするわけではありませんが、少なくとも僕は物、とくに家を手放すことで人生がガラッと変わりました。環境を変えるとお金や時間の使い方、付き合う人が変わるのからです。だから「毎日が楽しくない」とか「生活に刺激が欲しい」という人は一度試してみてもいいのかなと思います。忙しく働く人たちや家庭がある人が急に家を手放すのは難しいでしょうが、例えば週末だけとか1週間だけでもゲストハウスに泊まってみると、何かのきっかけになるかもしれません。