現役高校教師でありながら、“家を持たない”=アドレスホッパーな暮らしをする吉川先生。
1年前に取材させていただいてから、講演活動や複業など多忙な日々を送られています。そしてなんと、9月には初の著書『高校教師、住まいを捨てる。』(河出書房新社)も出版!そんな、身の周りに起きた変化について、再びお話を伺いました。

__前回の取材後、反響があったと聞きましたが
学校や生徒たちはもちろんですが、予想もしていなかったような方たちと出会えて本当に驚いています。先日も楽天と博報堂の新しいECサイト「アースモール」の方たちと一緒にお仕事をさせていただく機会があって。家を持たなくなってから、おつきあいさせていただく方々や、仕事のフィールドがぐんぐん広がっているのを感じています。

__ミニマリストとして講演活動もされているとか
そうなんです。しかも面白いことに、工業高校の建築科や住宅メーカーからの依頼が多くて。建築家や住宅メーカーなんて家を作る人たちじゃないですか。家を持たない僕にとっては真逆な世界。逆に僕に何をはなしてほしいのか興味があって。建築家の学生さんたちには、「家を作ると言う固定観念を取っ払ってください」という依頼で、住宅メーカーさんからは「家を買ってからモノであふれかえらせないためのミニマムな生活の方法を教えてください」という依頼でした。どちらもとても興味深かったですね。

__さらに、教員をしながら「複業」も始めたそうですね!
全国でもかなりレアなケースだと思います。子どもたちに教えることは大好きなのですが、元々教師だけをやり続けようとは思っていなくて。以前のインタビューでもお答えしたのですが、「先生=世間知らず、学校しか知らない」とは思われたくなくて。ゲストハウスで暮らしてさまざまな人と関わるうちに、どんどん自分の視野が広がっていって、新しいことにもチャレンジしたいという気持ちが止められなくなってしまったんです。学校にも生徒たちにもきちんと話をして、今年の4月からは非常勤講師として学校では平日の午前中だけ授業をしています。平日の午後は地元のゲストハウスを運営するベンチャー企業で働いて、この9月からはさらに残りの時間を使って、フルリモートワークで東京の会社と、大学生向けの新規事業のお仕事にも関わらせていただくようになりました。学校では担任という立場ではなくなりましたが、変わらず生徒たちとは交流がありますし、学校の外の世界の話をできるようにもなって、このワークスタイルを選んでよかったなと思います。

最近は教員としての仕事の幅も広がっています。これは石川県中の高校生が集まって開かれた、1日限りの学校での授業の様子。

__アドレスホッパーのコミュニティも増えましたか?
そうですね。自分の周りでも似たような生活を始めた人はいます。他にも、ミニマリストとして仲間たちとコラムを書いたり、アドレスホッパーのコミュニティで、「アドレスホッピングを1つのカルチャーにするための活動」を行っています。最近は大学や大学院でアドレスホッパーについて研究している方たちもいるようで、そういった方々から取材を受けることも増えました。

相変わらずゲストハウスで交流を楽しんでいます。これはスペインからの旅行客と、地元の人たちと、たこ焼きを作っている様子。

__以前「アドレスホッパーは期間限定」とおっしゃっていましたが、まだ続ける予定ですか?
10月1日で家を持たなくなって1年経ちますが、辞める理由はまだ見つからないのでしばらく続ける予定です。荷物もバックパック2つから1つに減り、さらにミニマムな暮らしになってきました(笑)。ただ、単に物を捨てている訳ではなく、1つで2つの機能を持っているモノや、本当にこだわって作られたモノを持つようになってきました。たとえば半年前に買った「オールユアーズ」のセットアップ(“着たくないのに、毎日着てしまう”がコンセプト。機能的にも優れた人気ブランド)は、生産者の思いがよく伝わってくる商品で、仕事着としても私服としても着ています。

最新の荷物一式がこちら。

__自身初となる著書『高校教師、住まいを捨てる。』(河出書房新社)出版、おめでとうございます!どんな本なのでしょうか?
今の僕のミニマリストな暮らしについてはもちろん、SDGsやシェアリングエコノミーの現状や歴史(江戸時代の日本人は、火事が絶えず、すぐに風呂敷ひとつを持って逃げるため、ミニマリストだらけだった」など)などについてもたっぷり触れております。
教師というザ・トラディショナルな職業からでも、自由で新しい暮らしやワークスタイルが叶うということが伝えられたらいいなと思っています。
仕事を3つしながら執筆する作業は、想像以上にハードでしたが(笑)、書店に本が並んだときは感動しましたね。生徒たちも見つけては喜んでくれて、それも嬉しかったです。

出版記念イベントの様子。地元で行い、20名を超える方々にお越しいただきました。

__アドレスホッパーをする中で見えてきたことや、これから挑戦してみたいことはありますか?
僕が家を持たなくなって一番感じたのは、生徒たちへ話す内容が変わってきたこと。進路指導にしても、広い選択肢を提案できるようになりました。たとえば、必ずしも偏差値の高い大学に行くことがいいのではなくて、その先に何がしたいのかが重要なんだと。「何がしたいか分からない」という生徒にアドバイスする方法は僕の中で2つあって、「とにかく外に出て、家と学校以外の3つ目の楽しいと思える場所をみつけること(できればそこに年上の人がいるといい)」、もうひとつは、ビリギャルの坪田先生がおっしゃっていた言葉なんですけど「お金と時間、才能があったら何をしたい?」と聞くと、大抵何か出てくるはず。そんな感じで、何で勉強するかの本質を掘り下げていくと、おのずと道は開けてくると思います。

僕自身は特にこれに挑戦したい!ということはありませんが、「子どもたちにいい教育をするためにはどうすればいいだろうか」ということはずっと考えていきたいです。あとはこれからも、必ずしも同じスタイルに固執せず、自分のステージごとに変化するライフスタイルやワークスタイルも楽しんでいきたいですね。

 

『高校教師、住まいを捨てる。』河出書房新社)

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