シェアリングエコノミー協会 小池弘代氏

2017年5月17日から19日までの3日間に渡り、アメリカ・ニューヨークで、4大陸、13か国、22の都市がニューヨークに集結し「The Sharing Cities Summit NYC 2017」が開催されました。日本を代表して参加したシェアリングエコノミー協会事務局次長の小池弘代さんに、サミットの様子や成果についてお話を伺いました。

The Sharing Cities Summit NYC 2017参加者

――そもそも“Sharing Cities=シェアリングシティ”とは、どのような都市を指す言葉なのでしょうか。
プラットフォーム上で展開されるシェアリングサービスを継続的に活用などして、地域課題の解決や、市民の生活向上を実現するために取り組んでいる自治体を指す言葉です。日本語に訳して一言で表現するならば“共助の街”。昔の日本には、ご近所さん同士が助け合う文化が根付いていたので、私たち日本人にとっては、“原点回帰”のような感覚があるかと思います。さらに“共有経済都市”という言葉でも表現されるように、モノや空間、個人が保有するスキルなど、遊休時間の共有によって生じる経済効果が期待できる新たな施策でもあります。

Navy Yard内にある倉庫を活用したNEWLAB

――どうして、世界中でシェアリングシティが誕生しているのでしょうか。その背景をどのように分析されますか。
“成り立ち”といいますか、普及のプロセスはそれぞれの都市ごとに違います。例えばシェアリングシティの先進事例として知られるソウルとアムステルダムも対局的なモデルになっていて、ソウルは自治体が発信し、民間をサポートする形がとられています。一方のアムステルダムは、課題意識を持つ市民団体が立ち上がり、最終的に自治体を巻き込んで民間共同のシェアリングシティを形成するに至っています。
日本においては、都市の規模や地域によって課題も異なるため、一概にはいえないのですが、それぞれのケースにおいて最適な方法を見つけ、前進させるために私たちシェアリングエコノミー協会も推進体制を強化しています。昨年11月、湯沢市、千葉市、浜松市、島原市、多久市の5つの都市が“シェアリングシティ宣言”を発表しました。さらに先日、渋谷区と協会が提携協定を締結。シェアリングシティ実現に向けての様々な意見交換や施策をスタートさせています。

――小池さんが参加された「The Sharing Cities Summit NYC 2017」とは、いったいどのようなものだったのでしょうか。
アメリカ・ニューヨーク市の主催で開催されたもので、世界の都市から市長、副市長、議員などキーパーソンが集まる有識者会議でした。「シェアリングエコノミーを活用し、それらを受け入れていく都市の在り方」というテーマで、課題や可能性について様々なディスカッションが展開されました。
データ収集、政策決定、消費者保護、市場の公平性のほか、労働者保護の観点から見えてくる課題などが議論に上がりました。これら世界で広がるシェアリングシティに関して先進事例を学ぶという目的はもちろんのこと、それ以上に私たち協会が、日本においても同様に取り組み、活動をしているのだということを、発信していきたいという思いがありました。また、今私たちが推進と実現に向けて力を入れている“シェアリングシティ構想”が、きちんと世界でも取り上げてもらえるような事例になれるよう、世界レベルで目線を合わせていきたいと思っています。そのため、海外連携の強化もしていきたいと考えています。

ニューヨーク大学 アルン・スンドララジャン教授

アルン・スンドララジャン教授とSeoulのNew team

――小池さんが特に興味を抱いたテーマはどのようなものだったのでしょうか。
今回のディスカッションを通じて、オープンデータをどう活用していくか、というテーマについて改めて考えさせられました。自治体が保有するデータとシェアプラットフォーマーが保有するデータを共有しあうことで、課題解決が図れるというものです。例えば、ある公共施設の利用状況をみて一時的に需要と共有がアンバランスになることが把握できれば、交通量の分散化や、供給担保など、施策を考えることができます。交通という点においても、この先、技術の進化が進み、AIや自動運転車が普及していく世の中になっていくと思いますが、オープンデータの活用で渋滞を軽減することができるし、もしかしたら信号機すらなくなる未来がくるかもしれません。こうして段階的ではありますが、官民連携で街づくりが進められていく未来になると思うのです。オープンデータ活用というテーマ以外にも、労働者保護・消費者における安全性の担保をテーマにしたディスカッションにも興味を持ちました。私たちも、ホスト(サービス提供者)とユーザー(サービス利用者)の間で安心・安全なシェアサービスが利用されていくための仕組みづくりには重点をおいています。6月1日に発表させていただきましたが、それらを背景に、国のガイドラインに沿った認証制度を開始しました。消費者保護の観点からも、健全な経営をしているサービス事業者に対し、認定マークを付与するという取り組みです。現在20社ほどの企業から申請をいただいており、7/25 (火) に開催される経産省との共催イベント IoT推進ラボ “IoT Lab Connection” では、第1号認定の授与式も行う予定です。
シカゴの副市長のお話も興味深かったです。シェアリングエコノミーという経済活動を理解するためにまずはデータを収集し、次にベースラインとしての安全規制を確立、そして自治体に対して、税収面における何かしらのリターンのある仕組みという3つのアプローチを作っているとのことでした。2014年にライドシェア導入をスタートさせたときにも、ドライバーのためのライセンスを発行し、ドライバーの個人情報と紐づけて、バックグランドに問題がないかなど、管理徹底をされたそうです。さらにそのドライバーがどれくらい稼働しているか”というデータを収集していると。今後はデータマイニングによってトラフィックパターンや消費者行動を分析し、最適化を図っていくという話が印象に残りました。まだシェアリングエコノミーの入り口に立っているにすぎない日本にとっても参考になる、大変良い事例でした。

Sharing Cities Summit にて

――参加されて、何か新たなアイデアは生まれましたか。
ニューヨーク市という、世界をリードする大都市が、このような取り組みを進め、そしてコミットするような発言をしているということ自体、“大きな流れ”なのかなと感じました。日本国内でシェアシティ宣言をしてくださった自治体は、どちらかというと中規模の地方都市。そのため、このような大都市圏でベストプラクティスをつくりたいという目標を持つに至りました。その先にはもちろん、地方都市への水平展開というビジョンがあります。実際、政府によって発表された今年の成長戦略の中にはシェアリングエコノミーの推進が掲げられ、活用事例を30件つくるという具体的目標も生まれました。私たち協会としてもより一層体制を強化し、推進・実現していくべき立場にあると感じています。


話題の旧線路を活用したThe High Line視察

――決意も新たにされたようですね。
そうですね。先に述べたように、渋谷区と協会が連携協定を結ばせていただき、シェアリングシティ実現に向けて動き始めました。実は渋谷区は1970年代から1980年代にかけてニューヨーク州が行った観光キャンペーン「I Love New York」をベンチマークしていて、“東京”ではなく、“渋谷”をポストNYにしたいと考えていらっしゃるのですね。渋谷区としては既に地域コミュニティづくりやダイバーシティとして世界からも注目を集めています。表現は違っても、シェアシティ構想と文脈的にご一緒できる点が多々あると実感しています。今後、具体的には研究会を発足し、“街づくり”に関わる地域の方、事業者、職員、協会事務局メンバーなど、コアメンバーが集まって協議を進めていきます。また、今年の11月には渋谷区との共催でシェアサミットを開催する予定もあります。

――日本国内での展開についてはどのようにお考えですか。
世界の前例に続き、日本が、東京や地方都市がシェアリングシティとして注目を集め、発信していける事例を、この一年間でつくっていきたいと考えています。各都市の規模や課題に合わせて支援しながら、自治体の方々と連携し官民連携のモデルを一緒に実現していきたいですね。
現在、シェアサービスの導入やシェアリングシティ宣言・認定を検討している自治体も増加傾向にありますが、シェアリングエコノミー協会では、これらの自治体の方々に対し、シェアの概念を正しく理解するためのeラーニング講座『シェアリングエコノミーラボ』を用意したりと支援における体制や活用いただきやすい仕組みを準備しています。

――ますますシェアリングエコノミー協会の存在感が大きくなっていきますね。
そうですね。同時に大きな使命感を負っているような感覚です。(笑) 私たちシェアリングエコノミー協会としては、“第4次産業”と呼ばれるこの新しい産業創出に寄与したいと考えているので、そこでは社会のルールメイキング的な大事なところも担いますし、その先には企業や事業者、個人が働きやすい環境づくりも必要となる。まさに「働き方改革」の文脈にも深く関わっていると思っています。個人がサービス提供者側になることで、誰でも経済活動に参加できるという社会的メリットも生まれています。とにかく、まだまだやるべきことはたくさんあるなと、日々自覚しています。

――参加前に掲げていた目標は達成できましたか。
はい、達成できたと思っています。新たなコネクションもできましたし、その方々に対して、私たちが日本でどのような取り組みを進めているのかを伝えることができました。また、先に述べてきたような諸外国の事例も知ることもできました。協会が得た先進事例の知識やナレッジは、日本の企業や自治体の皆さんへどんどん情報発信していきたいと思います。日本における“シェアリングエコノミー”の概念は、まだまだ浸透していないので、世界の優れた事例をお伝えするとともに、今世界では何が起こっているのか?日本の未来はどうなのか?を伝えていきたいと考えています。私たちの大きな役割は、シェアリングエコノミーによる日本の未来や目指す社会のありかたについて、それを実現するために必要な手段を伝え、支援していくことです。これからも発信を続けていきたいと、決意も新たに、激動の日々を楽しみながら頑張りたいと思います。

Photo by Niko Lanzuisi

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