シェアリングエコノミーの市場も約2兆円規模へと成長し、新しいライフスタイルが浸透しつつある今、利用者のすそ野も増えたことによる、サービス利用者と提供者間でのトラブルや課題も出てきています。その解決策を探るべく、今回は初の試みとして、事業者・利用者・提供者の3者でのフラットな意見交換の場として、シェアリングエコノミー協会ファシリテーションの下、“円卓会議”を開催。第一弾は家事代行サービスでお馴染みタスカジ社です。サービス提供者はもちろん利用者もぜひ知っておくべきことがたくさんありました。
また、2021年3月に実施された内閣官房シェアリングエコノミー検討会議においても、プラットフォーム事業者とユーザーが透明性の高い双方向のコミュニケーションを通じて協働する場としての円卓会議について議論されるなど、政府にもそのような取り組みが期待されています。
事業者・利用者・提供者がフラットに話し合う場の必要性
__今回のタスカジ円卓会議の目的とは何でしょう?
シェアリングエコノミー協会事務局長 石山アンジュさん:安心してシェアサービスを利用できる環境づくりに向けた取り組みが一層求められている今、事業者・利用者・提供者の三者がフラットに話し合う場が必要なのではないかと考えました。透明性が高い双方向のコミュニケーションをはかっていこうというのが今回の目的です。私たちはもちろん、行政もこの取り組みに注目しています。
タスカジ事務局 瀧川さん:タスカジは有り難いことに年々登録者数も増え、規模も大きくなってきています。その中で私たちは今後の発展のために、ユーザー同士や、ユーザーと事務局とのコミュニケーションを図っていくことを大切にしていきたいと考えています。そこで運営、利用者(依頼者)、提供者(タスカジさん)の三者で一緒にそして対等に議論する場を設けて、今後どうなっていくべきかを考えたいと思っています。さらに中立性の観点からシェアリングエコノミー協会にも入ってもらい、四位一体で考えていこうというスタンスです。
まずは、第一回ということで「タスカジさん・依頼者さん双方が安心して気持ちよく取引できるようにするために、「タスカジ」というプラットフォームでどのような工夫・活用をしていますか」ということをぜひ、みなさんと議論したいと考えています。
ミスマッチを防ぐには、“家事のスタイルが一致する人”にお願いすること
__では早速本題へ。タスカジさん(ホスト)と依頼者の双方が安心して気持ちよく取引できるようにするために、どのような工夫をしていますか? それぞれの立場で教えてください。
タスカジさんIさん(専門は作り置き料理): 私は、依頼者さんの要望に対してできる/できないの判断ができず、結果的に失望させてしまったり、要望が増えて自分もパンクしてしまうことがあったので、その判断を早くするために自分のできないことをプロフィールに記載するようにしたり、初めて依頼を頂いて再度リピートして頂いた際にはあえて言いづらい点を聞くようにしています。あとはヒアリング項目をメモしておいて、途中でなるべく聞かなくていいように工夫しています。
タスカジさんAさん(専門は作り置き料理):私は、あらかじめ準備してもらいたいものをプロフィールに記載しておいて、事前のやりとりは不要にするなど、忙しい依頼者さんになるべく負担をかけないよう意識しています。たまに、調理器具の何がどこにあるかを紙に細かく書いてくださる方もいるんですが、依頼者さんがもっと気軽に使用してもらえるためにはどうしたらいいんだろうと思うことがあります。
依頼者Bさん:私は、タスカジなどの家事代行を利用する際、やりとりはあまりしたくない派です。さらに説明することがストレスなので、できれば同じ人にやってほしいですね。タスカジを利用してみて驚いたのは「汚いキッチンのままでも驚かれないんだ」ということ。
ただ、料理の場合、味覚や好みは人それぞれなので、私は「美味しいとヘルシーだったらヘルシーを重要視してほしい」、「砂糖は極力いれないでほしい」など希望を伝えるようにしています。うれしかったことはもちろんですが、改善点もできるだけ伝えることが、お互い長く付き合うためには大事なんじゃないかと思っています。
依頼者Hさん:同感です。私は「一緒に成長していきましょう」という意味もこめて、レビューでは「ここは改善した方がよいよ」とマイナスの要素も書くようにしています。
__初めての相手だと、何をどこまで共有すべきか悩んだりしませんか?
タスカジさんCさん(専門は整理収納):ミスマッチを防ぐには、“もともとの家事のスタイルが一致する人”にお願いすることが大切です。私の工夫で言うと、得意ではない依頼が来ないように、自分のプロフィールに得意なことを詳しく明記しています。
あとは、掃除なら「広く浅く」か「狭く深く」か、作り置きなら「食べ盛りの子どもがいます」など、一言でいいので依頼者からも要望があると嬉しいですね。そうするとこちら側もニーズがイメージしやすいです。一度マッチングしてから「なんか違った」となると大変なので、自分の得意なことを必要な人とつながることがコツだと思います。
依頼者Dさん:私はつくりおきもお掃除もタスカジをよく利用していますが、確かに得意不得意ってあると思うんです。たとえば掃除業者の経験がある方は、ほこりを取って元に戻すタイプでおもちゃは整えてくれなかったので、私の要望には合わないなと思いました。作り置きも、私はリストを見て買うのがストレスなので、「子どもがいるので1品でなるべくたくさんの野菜を」とか、嫌いなものを伝えてお願いしています。
何より、1回じゃベストな人とマッチングできないのは当たり前と思うので、私は自分に合うのはどんな人かを知るために、15人くらい違うタスカジさんを試して今は2人の固定で落ち着いています。
__15人とはすごいですね!
依頼者Bさん:確かに。利用者は「1回で合う人を探すのは当たり前じゃない」と知るのって大事かもしれないですね。
依頼者Dさん:タスカジが掲げている“家事のパートナーを見つける場所”っていうキャッチコピーは、まさにその通りだなと思って。
タスカジ事務局Xさん:そう言っていただけるとすごくうれしいです。
依頼者Bさん:私が利用するのは作り置きがメイン。整理収納は本当はやってほしいけど心的ハードルは取れてない状況ですね……。
整理収納は定期利用がおすすめ! 価値観が似ている人だと相乗効果も
__整理収納を依頼する上での心的ハードルとは?
依頼者Bさん:何がどれくらい入っているか自分でも分からない状態の押入れを人に見せていいのかと……。恥ずかしさと、どのくらい指示したらいいのか、横にいるべきかの不安もあります。
タスカジさんCさん:そうなんですね。指示に関しては一緒に作業して進めるのがベストですけど、今は在宅していてもテレワークでお仕事されている方が多いし、赤ちゃんのお世話がある人もいます。だから私は無理のない範囲でとお願いしています。逆に「こういう風にしか関われません」と言ってもらえれば大丈夫! でも、そういった心的ハードルを払拭できるように、もっと事前に説明を書いた方がいいのかもって思いました。
依頼者Bさん:今後引っ越しする予定があるのですが、「リバウンドさせない収納コンセプトを考えて」などのお願いもありなんですか?
タスカジさんCさん:全然ありです。むしろ荷詰めからご一緒すると新居でもやりやすいんですよね。荷詰めから巻き込んでもらうとこちらとしてはすごくスムーズに進みます。でもそういう利用方法はまだ知られていなのかもしれませんね。
__確かに、整理収納=片付けと言うイメージが先行しているのかもしれませんね。
タスカジ事務局Yさん:最初の利用に至るまでの心的ハードルをどう下げるかは今後の課題になりそうですね。
__整理収納はスポットより定期利用の方が、効果があるんでしょうか?
タスカジさんEさん:定期的に行くことでその家により合った提案ができるというのはあります。収納はもちろん家事子育ての相談を受けることもありますし。自分と考えや感覚が似ている人だとお互い相乗効果が得られるなと思っています。
タスカジさんCさん:片付けは価値観も大きいので相性も大切ですよね。「この人と片付けしていると楽だった」、「背中を押してもらった」など。あと未就学児の場合は年単位でフェーズが変わるので、そのタイミングで利用するといいかもしれません。
__子育てのフェーズに合わせて定期利用するといいんですね、勉強になります。
タスカジさんEさん:タスカジさんを家事のパートナーと考えてもらえたら嬉しいですよね。
__料理の定期利用の場合、メニューのネタ切れはないですか?
タスカジさんAさん:定期だと好みもご家族の雰囲気なんかも分かるしお互い楽なんです。全く同じ料理はしないけど、「これは好きだから同じものを作ってほしい」と依頼されることも。あとは同じ食材でも作る料理を選んでもらったり。野菜は旬で変わるし、写真をとって記録するのもポイントですね。
依頼者Dさん:私は作り置きの場合は、好みのバランスを考えて、自分と合う2人の人に交互に来てもらっています。
依頼者Bさん:私は食べたいものがあれば先に言うようにして、あまった野菜はきざんでもらうようにしています(炒めるのは好きだけど切るのが苦手なので)。
タスカジ事務局Xさん:余った野菜をきざんでもらうというのはアイデアですね!
依頼者は100%を求めすぎず、家事のベストパートナーを探すというマインドで!
__過去の失敗談はありますか?
タスカジさんCさん:掃除の場合は、ニーズと準備が大事なので、初めて伺うお宅には「カビ取り剤1本では足りないです」などFAQを送るようにしています。
整理収納の場合は、ざっくり依頼者さんが何に困っているのかを聞いて、頭の整理だけをしてもらうようにしています。無理して事前に仕分けを自分でやろうとしたけれども終わらず、直前でキャンセルになったことがあったので、いかに事前に依頼者さんの仕事を増やさないかが大事かなと思っています。
タスカジさんEさん:初めの頃の失敗談なんですが、汚れを徹底的にきれいにしたいと丁寧にやりすぎて、時間が足りなくなって最後が雑になったり、汚れが手ごわくて延長してもらったら、それが嫌だったと言われたことがありました。今は、時間内で終わらせること、慌てないように「どこを何分でやる」とメモするようにしたら余裕が生まれました。
タスカジさんJさん(オールジャンル):時間で失敗したことは私も結構あります! 料理の材料が残ってしまったことも。今は10数年経って、やっと体で時間感覚がわかるようにはなってきましたが、時計を見て確認をするようにしています。
タスカジさんGさん(専門は整理収納):私は自分の金額設定ミスで、一番低い料金体系で依頼を受けてしまった際に、焦って企業の通知みたいな対応をしてしまい猛反省……。その後は、気持ちや文章の構成の仕方も工夫するようになりました。自分にとっては数ある依頼の一つかもしれないけど、依頼者さんにとっては一年に一回、一生に一度の依頼かもしれない、ということを心に留めながら一期一会を大切にするようになりました。
依頼者Hさん:慣れているタスカジさんでも初めての家だと時間がギリギリになることがあるので、気になったことは早めに言うようになりました。終了時間の30分前には「どうですか?」と声かけするようにしています。無理だと自分の期待値も下がるので、最初や最後の確認をしながら、期待値コントロールをするのが長く利用するコツかと思います。
依頼者Fさん:高いお鍋の蓋が割れていたがタスカジさんから報告がなかったことがあったんです。「任せたのはこちらの責任だし……」と、その時は迷って我慢して言い出せずに、自分も傷ついたので、今は何かあれば言うようにしています。
タスカジさんAさん:作り置きで「お腹の調子が悪いのでやさしい味付けを」というオーダーだったのですが、薄くしたら「味がない」と言われてしまって。食は健康に直結するものなので加減が難しいです……。
依頼者Bさん:「薄ければ自分でアレンジを」と一言添えてもいいのでは? あと依頼者はタスカジさんに100%を求めないのも大切なのかなと思います。
タスカジさんCさん:味と衛生観念は人によって本当に違うと思います! でも確かに依頼される側としては、ある程度おおらかに見守ってもらった方が、いきいきと作業出来る印象があります。
__ 作業する側としては、ある程度自由度が高い方が、クリエイティビティが発揮されやすいということなんですね、面白い。
依頼者Dさん:家事全般のこだわりは定量化しにくいもの。ただ、タスカジさんは手際、クオリティ、気遣いとプロだなと思うことがすごく多いんです。だから私はお金を払ってお願いしている。そういったトータルで理解することが、依頼者全体にも進むといいんでしょうね。
依頼者Fさん:同感です。「お互い育て合う」というマインドも大切なので、こだわり以外は細かいことは言わないようにしています。初めの頃は完璧を求めすぎて疲れてしまったので、思った通りにならなかったとしても、任せた自分の責任と考えるようにしています。
プロフィールは書き方のニュアンスも見られている!
__タスカジさんを選ぶ上で欠かせないプロフィール、依頼者やホスト側はどんなところに注目しているんでしょうか?
タスカジさんEさん(専門はオールジャンル):私はプロフィールで、自分がどうすれば快適かNGかをあらかじめ伝えています。レビューやプロフィールは、ユーザーさんはよく見てくれているなと感じるので、そこでちゃんと自分の人となりを伝えたいと思っています。
依頼者Fさん: プロフィールはかなりじっくり読み込んでます。レビューに関しては「褒められている点が自分の価値観と一致するか」という点を見ています。また、最初のメッセージで「ご縁があれば定期をお願いしたいこと」「不在にすること」をはじめに伝えるようにしています。
__プロフィール、奥が深いですね……。
タスカジさんGさん:プロフィールは常に最新に更新する工夫も必要ですよね。家事代行サービスは人と人、心のやりとりが基本ですから。まさに一期一会だと思っています。
依頼者Fさん:私は何人も依頼する時間がとれないので、プロフィールの読み込みや事前の確認は重要視しています。最初のヒアリングと終了30分前の相談も必須ですね! さらに定期利用するかどうかは、料理だと味の好みもありますが、家族の同意や相性も大切なポイント。私は最初の一回は子どももコンタクトできる時間を設けて、子どものOKをもらって決めています。
タスカジ事務局Yさん:プロフィールとヒアリングは双方向のコミュニケーションを円滑に行うためには欠かせないということが改めて分かりました。
初めて家事代行を依頼する時は家族に内緒でするとうまくいく!?
__初めてタスカジを利用する人にアドバイスはありますか?
依頼者Hさん:とにかく、子どもとの時間が取れるようになります! タスカジ依頼は費用対効果で考えるとプライスレスだと思うのでぜひ試してみてください。
依頼者Fさん:私の場合、家族に反対されていたので、一番最初は家族に内緒で使いました。それで「今日の夕飯どう? 実はこれはママじゃないんだよね」と種明かし。すると「外でお惣菜を買うんだし、家で料理をしてもらうのも一緒だよね」と高評価で利用に至りました。この方法を紹介したら、同じように成功した人も。あとは「キャリアを得るために、手放せるものは手放してお金で解決してキャリアを長く続けることで、将来、費用を回収できる」という考え方もありだと思います。
タスカジさんGさん:今日みたいな、失敗談やよかったことをぜひシェアしてほしいですね。「どういう使い方をしたらよかったよ」という点まで踏み込んで口コミをしてもらえると嬉しいです。
__最後に、タスカジ社の和田社長から本日の感想をいただきました。
和田社長:素晴らしい議論ができて感謝しています。タスカジさん・依頼者さん同士の意見交換の場としても、とても参考になりました。今後はサービスの安定性、タスカジさんのキャリアアップの選択肢を拡大するとともに、タスカジというサービスを学校教育やキャリア教育、育休セミナーに導入してもいいのでは、とも考えています。
ユーザーの皆さんの声によると、タスカジは圧倒的に「会社の先輩や友達に勧められた」という話が多いんです。自分とライフスタイルが似た人から紹介されるのが心を動かすのだと実感しています。ですから、依頼者のみなさんはぜひ周りの方にも発信してもらえたら嬉しいです。
依頼者とタスカジさん双方での雰囲気まで含めた相性が大切なんだなというお話や、ちょっと余裕をもったコミュニケーションがいい取引につながるというお話が印象深かったです。また、依頼する側のタスカジさんへのお願いの仕方が分からないという声もあるのだなと改めて認識しました。こうした円卓会議は、弊社だけでなくシェアリングエコノミー協会も国もとても大事だと思っている活動なので、今後も続けていきたいと思っております。