自動車を買わず、オフィスも借りず、本や道具は必要な時だけ借りる。このように、所有するのではなく「シェア」することで代替する「シェアリングエコノミー」のサービスが日々広がりを見せる中、「シェアリングシティ」という概念が世界各国で広がりを見せています。日本でも、これからの街づくりの大事なキーワードとして注目されつつあります。

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シェアリングシティって何?

「シェアリングシティ」とは、人口が密集し、インフラが整っている都市部において、シェアを通じて暮らしを豊かにしていこうという考え方です。空間やモノに限りがある都市部だからこそ、場所や乗り物、モノや人、お金などの資産を有効的に再活用することで誰もが暮らしやすい環境の確率や、新しい経済の流れを生み出すことに繋がると考えられています。

例えば、シェアリングエコノミーを都市部で導入することで、いち個人を生産者として輩出することを可能にしたり、資産の再活用による地域活性化からもたらされる経済効果などが期待できます。また、都市部で不足している公共サービスをシェアリングエコノミーで補うことで、各自治体の課題を解決し、都市全体の経済状況を向上させる可能性があるとして、大きな関心が寄せられています。

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シェアリングシティの発展には、世界の人々のライフスタイルを変化させるものとして大変注目が集まっており、すでに世界各地でシェアリングシティの取り組みが進められています。なかでも、「ソウル」と「アムステルダム」は、世界的に有名なシェアリングシティとして挙げられる都市。両都市でシェアリングシティの取り組み方に差はあれど、それぞれのシェア文化は、市民の生活に大きな影響を与えています。

シェアリングエコノミー先進国! 韓国「ソウル」の街づくりとは?

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「ソウル」は、政府主導型のシェアリングシティであり、政府が積極的にインフラ整備や、スタートアップ企業への出資を行っています。もともとソウルは、交通渋滞、環境問題、社会保障など様々な都市問題を抱えていました。これらの対策として行政が主導となり、シェアリングエコノミーの促進を掲げたのです。これによって、人口増加に伴う過度なインフラ整備(道路、駐車場、図書館等)を削減するとともに、市民への行政サービスを充実させることが可能に。政府の手厚い支援もあり、シェアリングエコノミーの範囲は拡大していきました。

例えば、子ども服やスーツをシェアする「モノのシェア」、古民家をシェアハウスとして利用する「空間のシェア」、誰でもオンラインで食事会を開くことができ、料理をシェアすることができる「スキルのシェア」といった様々な分野で展開されています。

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また、市内537ヶ所、972台のカーシェアリングサービスも導入。韓国発のライドシェア(配車サービス)を促進するために、Uberを禁止し、SOCARとGreencarの2社の利用を促すなど、徹底した行政によるサポートも。その結果、利用数は、564の自動車で282,000回を記録しました。

このUberを禁止するといった規制は、政府主導型だからできた取り組みだといえます。日本でもカーシェアリングのサービスは存在しますが、残念なことにまだまだ浸透していないのが現実。ソウルでの取り組みは、日本でも参考にできる点があるかもしれません。

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さらにソウル市は、公共の資産の活用も進めており、業務時間外や休業日における公共庁舎の会議室・講堂、駐車場を開放。公共Wi-Fiを設置したり、市に関するデータをオープンデータ化するなど、市民が広く利用できるようになっています。このような取り組みに関しても、政府主導型だからこそ可能になったシェアリングのサービスといえます。都市のポジティブな点もネガティブな点も把握している政府が積極的に介入していくことで、市民にとって必要なサービスを把握でき、効率的に普及させることができたのではないでしょうか。

世界で初めて「Airbnb」の規制を作り、成功に導いたアムステルダム

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一方、「アムステルダム」では、政府もシェアリングシティの取り組みに関わっているものの、「shareNL」という非政府機関が主導しています。「shareNL」は、オランダのシェアリングエコノミーに関する情報を紹介しており、地域と海外のシェアリングビジネスを繋ぐだけでなく、大企業や政府機関、EUなどのヨーロッパ機構とも連携しています。

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▲路上で乗り捨て可能な「ワンウェイ」式カーシェアリング『CAR2GO』

アムステルダムでもソウルと同様、「モノのシェア」、「空間のシェア」、「スキルのシェア」、「移動のシェア」、「お金のシェア」といったシェアリングエコノミーが普及しており、世界で初めてAirbnbに適用する規制を作った都市でもあります。ホテルなどの既存産業に配慮した規制を作ることで、軋轢を生むことなく、シェアリングエコノミーのサービスを市民に浸透させることに成功したという点では高い評価を受けています。

また、アムステルダムでは、様々な機関・企業・団体から集まった“アンバサダー”が相互に連携し、シェア文化を促進させているのも特徴の一つです。アンバサダーらの協力もあり、革新的なシェアリングエコノミーが続々と誕生。学校やコミュニティセンター、起業家や研究者を支援する研究所が創設されています。

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もともとアムステルダムは、「スマートシティ」プロジェクトに取り組んでおり、先端技術を活用して、社会・生活インフラを効率化・高度化(スマート化)することを目指していた都市。このような土台があったことで、学校や研究所などのシェアといった革新的なシェアエコノミーも広く市民に受け入れられたといえるでしょう。

シェアリングシティのメリットとデメリット

シェアリングシティには、世の中に眠っている遊休資産を個々のニーズとマッチングすることにより、稼働率を大幅に向上できるというメリットがあります。ソウルでは、古民家を利用することで使われていなかった居住空間を有効活用していますし、2台以上の車を保有している市民が多いアムステルダムでは、2台目の車をシェアするカーシェアリングのサービスが広く受け入れられています。今後、テクノロジーの発展にも伴い、乗り物、空間、モノ、お金、人をはじめ、世の中に存在するあらゆる資産がシェアリングの対象になってくることが考えられます。

一方で、急速なシェアリングサービスの進展、普及に伴い、一部に課題が顕在化しているのも事実です。日々新たなビジネスが生まれているサービスについては、評価の仕組みや、保険加入等の民間によるルール作りを尊重するべきとの声も上がっています。

実際にアムステルダムでは、シェアリングエコノミーの導入の際には、既存企業の反発に配慮し、共存する機会を設けるなどの対応策が取られていました。市民へのシェアリングの意識を浸透させるためにも、様々な分野の人々から協力を得る必要があり、政府に対しても、民事ルールやガイドライン策定、法律の整理等を進めていくことが求められています。

世界中でさらなる広がりを見せるシェアリングシティ

最近では、サンフランシスコ、インド、デンマークといった都市もシェアリングシティとして注目を集めはじめています。

サンフランシスコでは、通勤バスをシェアするライドシェアサービス「Chariot」なども普及。これは、通勤専用のオンデマンドバスで、専用のアプリを使い15人乗りのバスを呼び出し、乗り合いで乗車できるというもの。人数が一定に達すればバス停やルートも増えていく仕組みです。サンフランシスコは、公共の交通機関だけでの移動では不便と感じでしまう土地柄のため、UberやLyftのようなオンデマンド配車サービスも広く受け入れられているようです。

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シェアリングシティのはじまりは、都市によって様々。ソウルにしてもアムステルダムにしても、都市のインフラや市民の意識など、共通している点ばかりではありませんでした。普及の際にも「政府主導型」「非政府機関主導型」と、全く異なる形で取り組みを行っています。しかし、今では両都市ともシェアリングシティの先進都市といわれており、人々がシェアによってより快適なライフスタイルを手にしているという点では共通しています。シェアリングシティとは、都市そのものやそこに暮らす人々にあわせ、いくらでも形を変化させていくことができる取り組みといえるのではないでしょうか。

今後、各都市で、暮らしに合わせたオリジナリティ溢れるシェアリングエコノミーが広がっていくことが予想されており、世界中から期待が寄せられています。すでに日本でも企業やNPOとともに、地域全体の共助環境作りや地域活性化に取り組む都市が増加しており、シェアに興味を持つ市民も増えているといいます。世界の都市のように、日本でも“みんなで助け合い、みんなで街をつくる”という考えが各地で浸透してきているのは事実。この流れはこれからさらに、日本国内でも大きな広がりを見せていくことでしょう。

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