今、ビジネスシーンで話題沸騰中の“グラレコ”をご存知だろうか。会議などでの議論を、絵や図を使ったグラフィックで可視化して記録するグラフィックレコーディング(通称グラレコ)。今回は、会社員の傍ら独学でグラレコを学び、2年間で6,000人にグラレコ講座で指導してきた、グラフィックコミュニケータの本園大介さんにお話しを伺いました。

__現在のお仕事について教えてください

大手通信関連会社のサラリーマンで新規企画室にいます。今の会社は15年目です。グラレコは副業として休みの日や夜に講座をオンラインとオフラインで行っています。

ちなみに、会社員とグラレコ講師の他にも、大学で心理学を学ぶ学生、中央区の地域新聞で「佃月島新聞」で4コマ漫画を連載する漫画家と4足のわらじを履いています。

__グラフィックレコーディングを始めたきっかけは何ですか?

東日本大震災は一つの転機でした。それまでは社畜のように仕事と家の往復しかしていなかったのですが、震災を機に改めて命が有限であることに気付かされて……。何か自分でもしてみようとプレゼンについて勉強をするうちに、グラレコに出会い、興味を持って独学で習得していきました。いつから仕事としてグラレコをやり始めたか、はっきりとした記憶はないのですが、だいたい2年ほど前だと思います。


こちらが、本園さんが描いたグラレコです。

__グラレコ講座は実際にどのような方が参加されていますか?

この2年間で約6,000人の方が受講してくださいましたが、下は高校生から、上は定年されたシニアの方まで本当に幅広いです。受講される方の多くはグラレコをやってみたい、または部活やサークルで会議をまとめたいと言う目的で参加されているようです。受講された86歳のおばあさんが、「本当に感動しました!」と言ってくださったこともありました。


本園さんのグラレコ講座の様子。皆さん真剣な表情で聞いています。(写真はパラレルキャリア研究所の講座より)


セミナー終了後は皆さん晴れやかな表情。充実ぶりが伺えます。(写真はパラレルキャリア研究所の講座より)

__講座ではどんなことをするのですか?

初級は主にコミュニケーションを中心に、中級はアイコン(イラスト)を本質をとらえて描けるかのスキル、上級は実際にグラレコを実践という3段階があります。

グラレコに一番大切なのは傾聴すること。必要なのは「聴く力」と「拾う力」、そして「まとめる力」。それができさえすれば、絵は下手でも全然構わないんんです。まずは書いてみて、実践あるのみです!

僕の講座では、“安心して失敗できる場所”であるよう心がけています。失敗することって大人になるとすごく少なくなると思うんですが、失敗しない=挑戦していないことだったりするんですよね。この講座では「正解」はありませんから、どんどん失敗していろんなことに挑戦してほしいと思っているので、僕も積極的に失敗して見せたりします。


受講生のデビュー時に本園さんがアシストすることもあるそう。

__本園さんがグラレコをする際に意識していることはどんなことですか?

「場の主役は誰であるかを考えること」ですかね。最初の頃は、話す人の横で描いていたんですが、聴講者の視線が登壇者に向かないことがあり怒られたこともありました(笑)。今は、講演中は聞き手から見えにくい位置で描くように心がけています。

グラレコは「誰のために書くか」が非常に重要なのですが、セミナーの参加者のために描く場合は、参加者がどう受け止めたか、何を持ち帰りたいかを意識して可視化しています。ですので、登壇者のプロフィールなどは必要以上に描かないようにしています。ですから、聞く人たちがどこに反応し、何が心に響いているかを意識しながらグラレコに落とし込んでいきます。

__グラレコをやっていてよかったなと感じる瞬間は?

グラレコを描いているときの僕の手は、別人格のように勝手に動いていますので、自分でも予想しない話の流れをつないでいって、最後にバチっとはまった瞬間はすごく気持ちいいですね。

あとは、講座を受講する前は「私には絶対無理です!」と言っていた方が、最後には「こんなグラレコ描いたんで見てください!」と笑顔になっているのを見たときは心から嬉しくなりますね。

__本園さんが目指すグラレコのゴールとは?

僕は“人を笑顔にしたい”という思いでグラレコをやっています。まさに人を幸せにする「福業」なんです。他にも、パラキャリ的には「複業」(複数の種類の仕事を行う)、「副業」(誰かにやとわれて仕事をする)、「伏業」(会社に伏せた内緒の仕事、「覆業」(顔出しをしない仕事)……いろいろ種類はあると思いますが。

それで、今僕が考えるグラレコのゴールは“子どもの学びにグラレコを加えたい”という思いがあります。グラレコでは、要約力、創造力、傾聴力、プレゼン力とさまざまな力が養えるからです。グラレコノートをとることで楽しく授業が受けられ、そうすると成績が伸びて、またノートが楽しくなる、さらに成績が伸びてもっと楽しくなる、とポジティブループに持っていきたいです。

今は大学で心理学を勉強しながら、中学校や高校で出張授業をさせていただく機会をいただいております。子どもの視点は大人と全く違うので、すごく刺激を受けますよ。
夢や目標の可視化にも使えるので、子供たちの進路指導にも役立てるのではないかと考えているところです。

 

__最後に、副業を始めたいと思う方たちにメッセージをお願いします

ぜひ自分の強みを生かして、雇われない様な「複業」をしてほしいなと思います。意識してみると、目の前に向こう岸へ行くためのチャンスであるロープがたくさんぶらさがっているんです。でもそれを掴むきっかけがないと、素通りしていってしまう。だから、“目指す方向のチャンスがきたらとにかく掴むこと”を意識して動いてみると、案外道は開けてくると思います。皆さんの成功を心から願っております。