プロボノ は専門性を活かしたボランティア

本業のほかに第二のキャリアも持つ「  パラレルキャリア  」。シェアリングサービスを活用して パラレルキャリア をする方も増え、注目が集まる新しい働き方です。パラレルキャリア研究所代表の高村エリナさんが、複数回にわたり パラレルキャリア について解説します。

プロボノとは

プロボノは専門性を活かしたボランティア

プロボノ とは、ビジネスパーソンが職業上持っている知識やスキルを提供するボランティア活動のことです。言葉の語源は、公共善のためにという意味の「Pro Bono Publico」というラテン語です。

プロボノもボランティアの一種ですが、単なるマンパワーの提供ではなく、より専門的な知識や職能上のスキルを提供する側面が強いときに、ボランティアではなく「プロボノ」と称されることが多い傾向があります。

 

パラレルキャリアの文脈でも注目を浴びる プロボノ

近年、複数の軸足を持つパラレルキャリアに興味を持つビジネスマンが増えつつあります。その結果、「解決したい社会課題がある」というモチベーションだけだけでなく「自らのキャリア形成の一環として プロボノ 活動をしたい」と考える層も以前より厚くなってきました。無償で行うプロボノは副業禁止の企業で働く会社員も取り組むことができ、個人事業主として有償案件を受けるよりも参画のハードルが低いことから、初心者でも実践しやすいパラレルキャリアとして注目されています。

 

プロボノ のメリット

本業だけでは得られなかった「社会資本」が増える

プロボノでは金銭的な報酬を得ないことがほとんどですが、金銭以外のリターンはもちろんあります。人的ネットワークや所属するコミュニティができるなど、「社会資本」が増えることです。異業種の方との交流の中で新しい知見や気づきを得たり、仕事以外で居場所ができたりすることは、プロボノをするメリットの一つです。

スキルアップなど「文化資本」の獲得にもつながる

プロボノではプロジェクトの中で、本業とは違う分野での知見を深めたり、既存のスキルの更なる向上も目指せます。そのような成長、スキルアップは「文化資本」と呼ばれ、その獲得を金銭以外の報酬と捉えることができます。また、もともとのスキルを発揮するだけでなく、未経験だったスキルの獲得にチャレンジすることもできます。利益を得る活動だと成果が求められますが、無償の場合は求められる成果のハードルも下がるため、「これから高めたいスキル」をを伸ばすチャンスにしやすいのも特徴です。

いずれ「経済資本」に変わる可能性も

「社会資本」や「文化資本」自体は金銭によるリターンではありませんが、これらは長期的に見ればお金を稼げる「経済資本」に変わる可能性があります。たとえば、プロボノ活動の中で知り合った方の中からビジネスパートナーやクライアントが見つかる、伸ばしたスキルを活用してビジネスをはじめる、などの可能性があります。また、プロボノとして身につけたコミュニケーションスキルや知見を、本業の中で活かして活躍することもできます。短期的には無償の取り組みであるプロボノも、本人次第で自身のキャリアや収入を向上させる手段になり得ます。

プロボノ 二枚目の名刺
二枚目の名刺(https://nimaime.or.jp/

プロボノ サービスグラント
サービスグラント(https://www.servicegrant.or.jp/

プロボノ a-con
a-con(https://www.a-conweb.net/

 

プロボノ に参加する方法とは

プロボノとNPO法人のマッチングサービスも普及

プロボノとして活動する際、プロボノを受け入れているNPO法人などの団体に参加することになります。プロボノとしてサポートしたいNPO法人に直接問い合わせるほか、近年では「プロボノをしたい人とNPO法人をマッチングする団体」も増えているので、そのような団体に登録して参加したいプロジェクトを探す方法もあります。幅広いNPO法人の中から自分にマッチする団体を選べる、任期やプロジェクトごとの目標が設定されているので本業があっても気軽に参加しやすい、などのメリットもあります。二枚目の名刺(https://nimaime.or.jp/)、サービスグラント(https://www.servicegrant.or.jp/)、a-con(https://www.a-conweb.net/)などの団体では、定期的にプロボノ参加者向け説明会を開催しています。

「誰のために」と「何ができるか」を考える

「 プロボノ をやりたい」と考えたときに、どんな団体に参加するか迷われる方も多いでしょう。そんなときは、「誰のために」と「何ができるか」を出発点に考えてみてはいかがでしょうか。「誰のために」は、参加するNPO法人の理念やプロボノとして解決する社会課題が何かを指します。「何ができるか」は、プロジェクト内での役割や自分が発揮できるスキルにあたります。既に本業で発揮しているスキルはもちろん、これから伸ばしたいスキルに挑戦するのも手です。「誰のために」と「何ができるか」のどちらに重きを置くも、人によって比重が変わってくるでしょう。「NPO法人の理念に共感したので役割は何でもいい」という方もいれば、「広報に挑戦したいので、広報を担当できるNPO法人を探したい」という方もいるはずです。参加するプロジェクトに迷ったときは、「誰のために」「何ができるか」という物差しにご自身がどのようなモチベーションを感じるかを、ぜひ考えてみてください。

プロボノ を継続するポイント

プロボノ を継続するポイント

「本業がある」前提を共有する大切さ

専業でNPO法人の職員をされている方も多くいますが、プロボノとして参加する場合は本業の傍らで活動することになります。そうなると、使える時間も限られる上に、急な残業などでプロジェクトの活動に参加できない日が出てくる可能性があります。プロボノとして活動をする場合は、「月や週に何時間くらい時間を使えるか」「本業の忙しさ」などを、同じプロジェクトのメンバーに伝える工夫が必要です。仕事や家庭の事情でプロボノ活動に使える時間が減ってしまう際も、コミュニケーションを取って調整を試みることが大切です。企業活動の中では与えられたタスクやノルマは簡単に変更しにくいものですが、プロボノ活動で個人の状況に応じて柔軟に調整ができないと、「両立ができずプロボノを辞めるしかない」「プロボノ活動を優先して仕事や家庭にしわ寄せがくる」など悪影響が出てしまいかねません。プロボノ活動を持続可能なものにするためには、自身の状況をきちんと伝えることが必要です。

プロボノ を受け入れるポイント

プロボノを受け入れるNPO法人側にも、プロボノ活動を長く続けてもらうために工夫できる余地はあります。まず、プロボノ参加者に対して「使える時間や可能な関わり方」を細かくヒアリングすることが、無理のあるタスクの振り分けをしないためには必要です。さらに、本人の同意を得たうえでその情報を職員やプロボノメ同士で共有することも有効です。プロボノ参加者によって使える時間は違うので、その前提が共有されていないと「自分ばかり負担が多くて不公平だ」「他の人はがんばっているのに、自分だけ短時間で申し訳ない」などとネガティブな感情が生まれがちです。それぞれのキャパシティが異なること、プロボノ参加者は多様なバックグラウンドやモチベーションを持っていることを、プロジェクトメンバー全員が理解できるようなルールや場づくりをすることが、プロボノのフェードアウトを防ぎます。

 

まとめ

プロボノ は、本業以外のフィールドでキャリアアップやスキルアップも目指せる活動です。一昔前のプロボノは社会貢献がしたい一部の方が取り組むイメージが強かったものの、パラレルキャリアの普及とともに、自身の成長の手段としてプロボノを選ぶ方が増えることが予想されます。
ただし、プロボノ活動を通じて「すぐに収入をアップさせる」「転職活動を有利にする」など短期的なリターンを求めると、必ずしもうまくいかず悩んでしまうかもしれません。非営利活動であるプロボノを実績として評価する企業は、まだまだ少ないのが実情です。

「プロボノとして経験を積んで、まずは少額の報酬を得ることを目指す」「プロボノ活動を通じて他業界の知人を増やし、転職を希望する業界の方から話を伺う機会を得る」など、小さなチャンスを増やしながらゆっくりと取り組むスタンスの方が持続可能です。

自分のペースで社会資本や文化資本を増やせるプロボノ活動は、直線的なキャリアを描きにくくなる人生100年時代にこそ、有効な生存戦略になり得ると考えられます。