先日の調査報告では2020年度のシェアリングエコノミー市場規模は2兆円、30年度には14兆円を超えるという予測が出ました。新型コロナウィルスの影響はあったものの、サービス全体の市場規模としては前倒しの成長が見込まれています。では、2021年はシェアリングエコノミーに市場にとってどんな年となるのでしょうか? 協会事務局長の石山アンジュさんが、2020年の振り返りと2021年のシェアリングエコノミーのトレンドを大胆予測します!
コロナの影響はあったが、市場規模は2兆円越えと前倒しの成長が見えた2020年
__まず、2020年を振り返ってみて、シェアリングエコノミーとしてはどんな1年でしたか?
やはり、2020年は新型コロナウィルスの影響を大きく受けた年でした。4月の緊急事態宣言下では、民泊、家事代行、シッター、インバウンド観光といった人との接触がある対面型サービスは大きな痛手となりました。一方で、非接触型のサービスはむしろ伸びた例もあります。代表的なものは「ココナラ」などのスキルシェア、「食べチョク」といった生産者を支援する非対面の売買、など。いずれにしても、イエナカ需要もあり、これまでとは売れるものが変わってきたという傾向が見られました。
引用:コロナ禍でも右肩上がりの4社が予言! ポストコロナの消費~ストーリーが紡ぐ新たな経済圏~
また外出自粛が続く中では、コロナ渦の課題解決に取り組むサービスも登場。地域の飲食店を救うために「Uber Eats」と自治体が連携したサービスを開始したり、傘のシェアサービス「アイカサ」では設置場所に消毒液を置いたり、カーステイが医療従事者にキャンピングカーを無償で貸し出すバンシェルターなど、デジタルな共助の仕組みとして注目が集まりました。
シェアリングエコノミー協会の調査報告では、2020年度のシェアリングエコノミーの市場規模は2兆円、30年度には14兆円を超えるという予測が発表されました。新型コロナウィルスの影響はあったけれど、サービス全体の市場規模は伸び、前倒しの成長が見込まれていると言えます。
引用:シェアリングエコノミー経済規模は過去最高の2兆円超え。新型コロナウイルスで新たな活用の広がり、SDGsへも貢献。
ニューノーマルな生活様式は「分散型」と「共感消費」がキーワード
__“ニューノーマルな生活様式”は世の中的にもキーワードとなりましたが、シェアリングエコノミーサービスではどんな変化がありましたか?
消費もそうですが、働き方やライフスタイルも「分散型」の傾向が大きく感じられた年でした。感染が拡大する密な都会ではなく、郊外で暮らそうという動きや、地方の民泊で多拠点生活ができるサービス「ADDress」も注目を集めました。
また、「密になる公共交通機関より車が安心だけど、所有するのはちょっと……」という需要からカーシェアも大きく伸びたサービスです。
さらに、コロナ禍での在宅ワーク増加に伴い、自宅でのリモートワークが難しい人に向けたレンタルスペース「スペースマーケット」のサテライトオフィスとしての利用、シェアオフィス「WeWork」でも、月額3万円でどこの拠点にも通えるプランが始まるなど人混みをさけながら、半所有かつ分散型のライフスタイルを実現するライフスタイルの在り方が印象的な年だったと言えます。
引用:社員を守りながらもイノベーションを生み出し続けるためには? テレワーク時代のオフィス~withコロナのオフィス改革~
__2020年を振り返る中で、特に印象的なシェアリングエコノミーサービスはありますか?
緊急事態宣言の休業要請に伴う飲食店の閉鎖で、フードロスも大きな問題でしたが、一次産業の生産者と消費者を直接つなぐサービス「食べチョク」は売上前年比47倍。
これまでの「安くて便利だから買う」という消費行動から「食べて応援するという」購入意識や、共感消費という流れにうまく乗れたのは、まさにシェアリングエコノミーサービスの特長を生かしたものではないかと思います。
2021年は“サスティナブルな経済・社会モデル”がカギとなる!
__では、シェアリングエコノミーにとっての2021年はどんな年になると予測しますか?
“ニューノーマルなシェアリングエコノミー定着の岐路になる年”だと予想しています。リモートワークからオフィス勤務へのより戻しがある中、未だコロナの感染拡大も止まりません。そこでカギとなってくるのは、「分散型の生活スタイルを選択し続けられるか」だと思っています。さらにマクロな視点で見ると、“何度となく立ち直れるサスティナブルな経済モデル”の重要性も感じています。新型コロナや災害といった、不確定要素の高いリスクと共存する社会で、どうしたら、持続可能で何度でも立ち直れるビジネスや社会モデルを作れるかがポイントとなるのではないでしょうか。それにはシェアリングエコノミーサービスの活用が不可欠となるはずです。
引用:SHARE SUMMIT 2020 「防災とシェアリングエコノミー 〜複合災害にも対応できる共助による備え〜」セッションより
__サスティナブルなビジネスモデルの例を具体的に教えていただけますか?
サスティナブルでレジリエンスなビジネスモデルは個人にとっても可能性があります。Withコロナ時代の働き方として、個人では一つの暮らしや働き方に依存するにはリスクがあるので、AもBもCも選択できる収入分散型の働き方“ポートフォリオワーク”が主流となるはずです。
引用:SHARE SUMMIT 2020「ポートフォリオワークという働き方 〜2020年以降のキャリアデザイン〜」セッションより
企業としても、リスクの高い不確定要素な状況では大きな投資に踏み込みにくいので、社員を守りながらコストを削減するためにシェアオフィスを活用したり、人材をシェアするオープンイノベーションの活用など、既存のものにどのように付加価値をつけてビジネスにしていくかというサスティナブルな経営が必須だと感じています。
また、地方においては、人口が減り自治体側の税収が減ると公共サービスの維持がさらに難しくなっていきます。そこで、持続可能な形での自治体経営ををどのように維持していくか、の新たなモデルとして、シェアリングの地方実装が進むでしょう。2020年にはシェアリングシティの自治体ネットワークの拡大や地域課題解決のスキームを作ることを目的としたシェアリングシティ推進協議会が立ち上がりました。そういったマクロな視点としてもシェアリングエコノミーサービスの活用は期待できるのではないかと考えています。
課題は業界全体の安心安全水準の向上
__シェアリングエコノミー協会として、2021年に注力していきたい施策はありますか?
2020年は、シェアリングエコノミー市場が2兆円規模に拡大成長していくフェーズで、一部の家事代行プラットフォームにおける性被害の発覚や、フードデリバリー配達員の交通安全などを背景に、シェアサービスにおけるさらなる安全性確保のための取り組みが急務となっています。
そこで、協会としてはプラットフォームとしての安心安全水準を向上していくべく様々な取り組みを行っています。
●重大な利用規約違反者等について一部事業者間で情報共有化する仕組みの検討
●利用者間の迅速なトラブル解決を支援するため、ODR(オンライン紛争解決)の開発
●シェアワーカーのリテラシー向上に向けたシェアワーカー認証制度の開発
●シェアリングエコノミー認証制度における審査基準の見直し
●会員企業のリスクマネジメント力の向上に向けた勉強会(リスクマネジメント分科会)の定期開催
ユーザーホストとゲスト、プラットフォームの仲介に協会が入る「円卓会議」。さらに、シェアリングエコノミーが解決できる課題として、ITを使って災害対策を取り組む「防災テック」にも注力したいと考えています。災害時の避難所に民泊を活用するなど、市民同士でつながれば活用できることはたくさんあります。災害などの現場においてもシェアリングエコノミーの活用例を進めていきたいですね。
__最後に、シェアワーカーとして働き方に興味がある方へアドバイスをお願いします
これからの時代は、生き方も働き方も複数選択肢があることが豊かさのスタンダードになると感じています。ぜひシェアリングエコノミーサービスを活用していただき、その可能性を実感してほしいと思います。
現在、シェアリングエコノミー協会としては、シェアワーカーとしてメインで働かれている個人の方が、安心安全で働ける環境整備にも着手しています。2021年中には補助金申請のサポートや業界初の共済組合(自立休業見舞金、事故見舞金、出産祝金など)を設立する予定です。協会の取り組みもぜひ注目してください。