女性が活躍する社会の実現は、政府が掲げる経済政策の中で、もっとも重視されるテーマ。ところが、社会慣習や考え方、制度などが障壁となり、必ずしもスムーズに進んでいるとは言えません。特に地方においては、深刻な状況が続いています。
元々、女性の活躍が期待される職場そのものの絶対数も少ないうえに、いまだに“女性は家庭を守るもの”という固定観念も強く根付いているため、極端に女性の社会進出が遅れている地域もあります。
そんな、“社会進出を果たしたいけれども、それを実現できない女性たち”にとって、各地で社会実験が進められているシェアリングエコノミー・サービスは、期待のできる施策として注目を集めています。
「AsMama」が目指す子育て共助の世界
女性の社会進出の足かせのひとつになっているのが子育てでしょう。近年、都心部では、“働き方改革”が推進される職場で育児休暇を積極的に取得し、子育てを自分ごととして捉える男親も急増。その一方、地方ではまだまだ、そういった考え方は“先進的”と捉えられがちですし、周囲の方々の理解も薄いため、どうしても女性が遠慮せざるを得なくなっています。そんな現状課題の解決を図るため、昨年の10月に長野県の川上村で実証実験を開始したのが、官民連携施策「KAWAKAMI SMART PROJECT」が推進するシェアリングエコノミーシステム「MAKETIME!」。家事や育児といった家庭内労働を地域内でシェアし、家庭内労働負担時間の軽減を図ろうと試みました。
ところが、知らない人に子ども預けるという文化がそもそも地域性に馴染まずに、定着しませんでした。
そこで注目を集めているのが、同様の子育てシェアのプラットフォームでありながら、友達と頼りあう仕組みを採用している「AsMama」です。
子どもの保育園や学校が同じユーザー同士を自動でグルーピングされるため、学校が同じ、ご近所さん、もともとの知り合いなど、顔見知り同士が子どもの送迎や託児を1時間500円で頼りあうことで、互いに気兼ねせずに子育てをシェア。昨年度から東北地方を中心に官民連携プロジェクトを展開し成功を収めているだけに、さらなる展開が期待されています。
働くこと、預かることでそれぞれの世帯収入もあがり、経済を発展させると同時に、地域コミュニティの活性化も図ることができる、共助のシステムとなっている点に信頼性が高まっています。
「airbnb」で大きな副収入を得ている女性たち
「airbnb」の登場により、全世界に一気に浸透。日本においても、ようやく行政の取り組みが本格化してきた感のある“民泊”もまた、女性の活躍が期待されるシェアリングエコノミー・サービスとして注目を集めています。今年3月の「国際女性デー」に合わせairbnbが発表した調査データによると、女性ホストの数は男性より多く、世界中に女性ホストのコミュニティが拡大。シェアリングエコノミー・サービスの活用により、収益を得るようになってきているとの報告があがっていました。
女性ホストの収益はairbnb創業以来、通算で100億ドルを超える模様となっており、これは米国の平均収入6,600米ドルを上回る数値となり、日本女性の平均年収の1/3以上という大きな金額になっています。特にシングルマザーのホストにとっては、airbnbの収入がなくてはならないものに。ちなみに日本の女性ホストの“民泊”収入は年間平均で1,255,370円(10,000米ドル)となっています。
また副収入は家計を支えるのみならず、女性の起業にも寄与。世界中の女性が、自らビジネスを始める資金に充てているという調査結果もあります。これからの民泊事業の発展が、女性の社会進出にとって大きなチャンスとなる可能性があることは間違いありません。
女性の活躍が期待されるその他のサービス
「育児サービス」「民泊」のほかにも、女性の社会進出と親和性の高いシャエリングエコノミーサービスがいくつか存在しています。「DogHuggy」はペット版airbnbとも言えるプラットフォーム。旅行や外出などでペットを預けたい飼い主と飼育経験のあるホストをマッチングするサービスです。
まずは飼い主が住んでいる地域の近所に在住するホストを検索。条件を確認して予約し、当日ペットを預けに行くという流れです。想定されている単価は1泊あたり5000~6000円程度。その30%を「DogHuggy」が手数料として徴収します。空いている時間に可愛いペットをを自宅に迎えて触れあえるということで、ペット好きの女性から注目を集めています。
ホストは獣医やペット飼育経験者、さらにはペット関連の有資格者を中心に、面接などを行った上で認定。1日数回ペットの写真を飼い主に送ることが義務づけられています。
日本にいながら、海外ホームステイをしているような時間を過ごすことができると評判を集めています。参加者は20~40代女性が多く、3時間半~4時間のレッスンが一般的で、日本に住む外国人女性が活躍できるサービスと言えます。 「SHOP COUNTER」は、空きスペースを持っている人とスペースを短期で利用したい方のマッチングサービス。お店を出したい人と、スペースを所有するオーナーをマッチングするため、インターネットで、アクセサリーや洋服を販売している女性の、“いつかリアル店舗でお店を持ちたい”という夢を叶えることがシェアサービスとして注目を集めています。最短1日から出店可能です。
開店までのやりとりもスムーズで、好きなスペースを選び、オーナーと直接やりとりを行い、出店条件がまとまったら、利用料をオンラインで決済するだけで予約完了。サイト上に希望の条件の出店先がなくても、掲載準備中のスペースを無料で提案してくれますし、什器・内装など、出店先以外の部分もしっかりサポートしてくれるので、出店が初めての人でも安心して利用できるサービスといえます。
単純に、空いている時間やスペースの有効利用によって、働きやすい環境づくりをサポートするだけでなく、起業のチャンスの創出にもつながる、そんな女性の社会進出と親和性の高いシェアリングエコノミー・サービスに、今後も注目していきます。