一般社団法人シェアリングエコノミー協会は、2022年11月30日よりビジョンである「Co-Socoiety-持続可能な共生社会-の実現」に向けて新たに6名にアドバイザーとして就任いただきました

本企画では、アドバイザーと理事幹事との対談を通じて、当協会が目指すビジョン「Co-Society-持続可能な共生社会」をどのようにステークホルダーとともに設計・実践しながら実現してくべきなのかをひも解き、発信していくダイアログです。

第4弾となる今回は、Glocal Government Relationz株式会社 代表取締役 / 前 横須賀市長の吉田 雄人(よしだゆうと)氏との対談。

お話を伺ったのは、当協会理事の株式会社アドレス佐別当代表と、幹事の株式会社おてつたび永岡代表です。

 



吉田 雄人
Glocal Government Relationz株式会社 代表取締役 / 前 横須賀市長

1975年生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業後、アクセンチュアにて3年弱勤務。退職後、早稲田大学大学院(政治学修士)に通いながら、2003年の横須賀市議会議員選挙に立候補し、初当選。2009年の横須賀市長選挙で初当選し、2013年に再選。2017年7月に退任するまで、完全無所属を貫いた。現在、地域課題解決のための良質で戦略的な官民連携手法である「日本版GR:ガバメント・リレーションズ」が必要であるという考え方の元、一般社団法人日本GR協会を設立して現在に至る。また、地域課題にとりくむ民間企業のコンサルテーションなどをGlocal Government Relationz株式会社で行うかたわら、地域課題解決のためのGR人材育成ゼミ(通称:吉田雄人ゼミ)を主宰している。ほかに少年院や児童養護施設等を退院した若者の自立支援を行う「認定NPO法人なんとかなる」の共同代表などを務めている。

 


 

__(吉田)

私は2009年から神奈川県の横須賀市で市長をしていました。 当時は「シェアリング」という言葉を聞く機会はあまりありませんでしたが、例えばスペースマーケット社に横須賀市が所有している島(公園)を冬の閑散期の平日等、利用者が少ない時に貸し出す、という連携はしていました。

思い返すと、ちょうどシェアリングエコノミーが走り出したときに市長をやらせていただいてたんですね。

その後も「もう少し地方に根を張っていこう」「実践の根を張って行こう」という考え方を発信しており、市長を退任した後、シェアリングエコノミー協会が主催するシェアサミットに登壇という機会も頂戴しました。

その後2020年シェアリングシティ推進協議会の立ち上げ時から、アドバイザーとして関わらせていただいています。お二人とはもうだいぶ付き合いが長いですが、本日はよろしくお願いします。

 

__(佐別当)

2016年協会の立ち上げ初期から携わり、事務局長を経て今は、協会の理事と、ADDressという多拠点生活ができるプラットフォームの代表の佐別当です。このサービスを始めるようになった経緯は、協会で「シェアリングシティ」という構想を掲げて、各自治体とシェアサービスを活用した「まちづくり」を推進しようとしていたんです。

しかし様々な事業者を自治体に紹介しても、地域の課題は大きく経済が衰退していくスピードの方が早いことに気付きました。

中でも遊休資産としての空き家は800万軒超になると言われていて、それを活用するシェアサービスがないかと自治体から相談をいただきました。ちょうど自分が二拠点生活をしたいという気持ちもあったので、「都市に住む人のニーズと地方の課題をマッチングさせると、事業として成立するんじゃないか」と思い、2018年11月にADDressを創業しました。

 

__(永岡)

2023年の6月に協会幹事に就任しました、株式会社おてつたびの永岡と申します。「おてつたび」は、お手伝いと旅を掛け合わせた造語で、スポットワークとトラベルを掛け合わせたようなプラットフォームです。地域の短期的・季節的な人手不足で困っている収穫時の農家さんといった、ハイシーズンのときにお宿さんのお手伝いをするとアルバイト代が得られるので、旅費がリーズナブルになります。利用者にとって「第2・第3故郷」のようなものができていくサービスを運営しています。

私自身が三重県の尾鷲市の出身です。尾鷲市は東京から車でも電車でも6時間かかり、「陸の孤島」と呼ばれています。他の地域と同様に少子高齢化や過疎化が深刻で、若い人たちもいなくなっています。地域がどうしたら存続していけるのかを考えたときに着目したのが、「関係人口」という考え方でした。これは地域には住んでいなくてもお手伝いに来てくれたり、買い物をしたりして自治体の経済を回してもらえる方々を指します。このような方たちを増やすことによって、尾鷲のような地域も次世代に残ります。私はそのような世界を作りたくておてつたびを創業しました。

シェアリングという概念はこれまでも大事にしていた考え方であり、創業当初から、シェアリングエコノミー協会には加盟させてもらっていました。イベント参加や登壇の機会もいただいてきましたが、皆さん分け隔てなく一緒に走っていっている感じが素敵だなと思います。

 

__(吉田)2023年の社会経済の変化より、今後の社会に必要なキーファクターって何なのでしょうか?

 

__(永岡)

関係人口という考え方は、どの分野にでも重要になってくると思っています。 創業したときに関係人口という言葉はありましたが、まだ世の中に浸透していませんでした。地域の方からも「関係人口っていう理念はわかるけど、移住者の方が欲しい」、「そんな関係人口なんてきれいごとだ」という声が多かったです。

 

__(吉田)

関係人口という指標が定まっていないところが難しい点だと思いますが、指標はどのように提示されているんですか?

 

__(永岡)

おてつたびが作りたい関係人口が何なのかを、指針としています。関係人口を作ることによって、労働力・お金・情報のどれか一つでも入ればいいという考え方ですね。

 

__(佐別当)

僕らも多拠点生活をする中で関係人口を増やす活動はしています。彼ら向けの住まいを提供し、いくつかの地域に自分の居場所を作ってくれたりすればいいなと思っています。

今住んでいる場所だけだと「自分の居場所」と言えない人たちもいるわけです。例えば、東京で一人暮らしで、テレワークで会社にあまり行かなくて、隣近所に誰が住んでるかわからない、という人たちですね。コミュニティの一員という自覚がない生活をしている。助けてくれる人が周りにいない暮らし方は、自分の居場所と思えるような暮らし方になっていないのです。

関係人口として地域に行く人たちやリピートする人たちは、その地域に自分の居場所と思えるような友達、暮らし、自分らしい時間の使い方を見つけてる人たちですね。そういう暮らし方が、豊かな選択肢を作ります。「その生活をシェアする、暮らしをシェアする」ような感覚です。

 

__(吉田)

関係人口には私も注目していて、私が支援している宮崎県の高原町という自治体は、人口8000人、牛の数は1万頭以上という自治体で、サウナと冷たい炭酸泉に交互に入ったり、霧島連峰の下のカルデラ湖でSUPできるアクティビティもあり、多様な資源を活かそうとしています。ただ人口8000人の町で1人、2人を呼び込んでもインパクトが薄いので、「企業版関係人口」という考え方で様々な取り組みを行っています。ベンチャーの経営者に一度来てもらって好きになってもらうとか、企業版ふるさと納税をやってもらうとか、 さまざまな形で企業としての関わりを作っていくんです。かつその「見える化」という意味では、 「企業版関係人口作り推進協議会」という任意団体を立ち上げて、そこに加盟してもらって、企業の数を見える化しています。

お二人にとって、地方創生やシェアリングシティの役割は何だと思いますか?

 

__(佐別当)

都会の方を受け入れること、都会から資金調達をすること、都会の仕事を受注することができるのは、ハイクラス人材だけなんですね。おじいちゃんやおばあちゃん、子どもたちが、簡単に気軽にクラウドソーシングでは稼げません。各地域においては、そのポストの役割をどれだけ増やせるかが重要ですね。シェアして1円でもいいから稼ぐ、成約をするっていう体験を増やすのが大事じゃないかなと。

 

__(永岡)

地域に行って関係人口といってもピンと来ない方が多いですよね。関係人口を作ることによって、地域の方にとってどのような良いことが起きるのかを私達も訴求していかないといけません。まち全体として、自治体の方が啓発の部分で一緒に力をお力添えいただけると良いですね。

地方は人材確保が激化しやすいので、今から活躍できる人材を採用できる土壌を整えなくてはなりません。今は何とかなっても、十年後にはどうすることもできない未来が訪れます。

 

 

__(吉田)最後にシェアシェアリングエコノミーが果たす役割と期待について教えてください。

 

__(佐別当)

場所にとらわれない働き方、まさにシェアで人とつながったり、稼いだりすることを広めることですね。障がいを持っていたり、コミュニケーションが苦手だったりといった出社することが難しい人たちもいます。介護中の方が働く機会を生み出すシェアエコ全般のサービスを規制する法案が検討されそうになったとき、「違うんじゃないか」と思い、勉強会を開催させていただきしました。その結果、理解してもらい、応援者側に政府が代わってくれたこともありました。

ただ、どうしてもこのようなサービスは都会中心に広がってきたので、協会では全国各地の支部と連携し、各地域で支部を中心に広がるような体制を作っています。

テクノロジーやプラットフォームに関わらないようなシェア団体やNPOも一緒に、シェアの領域概念も広げていきたいです。

 

__(永岡)

日本は課題先進国じゃないですか。日本が今の課題を解決していけば、今後、海外から着目される部分がありますよね。

台湾も2019年に「地方創生元年」と打ち出して、日本を視察に来ています。日本の考え方が海外にも浸透していくと、より可能性が広がります。私たちのようなベンチャーはまずは国内で地方創生を固めることもですけれども、もっと世界を見ながらやっていかなきゃいけませんね。

 

__(吉田)

私が代表をやってるNPOも、熱意ある地方創生ベンチャー連合やシェアリングエコノミー協会さんとは、よく連携をさせてもらっています。その中で感じるのは、裾野がどんどん広くなっていることです。ロビイング(※ 企業や組織団体が有利に動けるよう、政府や国際機関に対して働きかける活動)もひとつの機能としては残り続けるとは思うんですけれども、 そのシェアの思想を拡大していくことも、これから求められているんだろうなと思います。

 

 

ライター:登 彩さん