ブロックチェーン技術を駆使し、増減を繰り返すという、まったく新しいコンセプトを有する仮想通貨「PEACE COIN」が話題になっています。サービスの創始者にしてPEACE COIN OÜのCEOである阿部 喨一さんに、この通貨の概念や、目指すべき世界観についてお聞きしました。

――前職は金融業界にいらっしゃったということですが、具体的にはどのようなお仕事に従事していたのでしょうか。

大学を卒業して、独立系の投資顧問会社に入社。「国際金融コンサルタント」という肩書で、個人投資家や海外進出を考えている中堅、中小企業様の支援を行ってきました。

私自身、実際に事業を行っている方をリスペクトしていて、そういった方々に、より早く貨幣を獲得できる手段や同じ資金量の中でもいかに大きな収益を上げるのか、あるいは海外拠点における資金調達など、ファイナンス視点による様々な効率化のアドバイスやサポートを実施してきました。

私自身、お金の勉強は、すなわち世の中のルールの勉強なのだと考え、金融業界を志したという経緯があります。例えばバスケットボールであれば、ルールを知らなければコートに立ち続け、活躍することはできません。私たちが今、生きているこの世の中でも同じことがいえます。

実際に仕事をしていると、この資本主義社会では、結局、目の前で行われていることは、貨幣を効率よく獲得していくゲームなのだと感じるようになりました。10年間の経験の中で接してきたお客様は、「お金を増やしたい」「お金を減らしたくない」という話ばかりをしていました。

もう、一生使いきれないくらいのお金を持っている方たちが、まだお金を増やそうとしている。そんな姿を目の当たりにしていると、使わないお金を増やしていくことって、果たして幸せなのだろうか?という疑問に至ります。

私は少なくとも、人生において実現できることの選択肢を増やすためであったり、経験値をあげるためにお金を増やすことを重要視していて、20代の後半以降はお金を増やすこと自体を目的にしているわけではありませんでした。だから、お金を増やすこと自体を目的としている方々は幸せではないのでは?と感じていたのです。

――使い切れないほどのお金を持っているのに、なぜ、まだ増やそうとするのでしょう。

大きく分けて二つの理由があると思っています。ひとつは不安を原動力にしている方で、もうひとつは単純に承認欲求というか、お金を持っていることで自分のパワーを示したいという人に分類されます。だから、際限なく増やしていきたいと思うのでしょう。

もちろん、一部には、お金は単なる手段のひとつと考えている人もいましたけれど、それはごく少数。お金をもっと欲しいと思っている大多数の人は、本質的に豊かではないでしょうね。お金を増やすことが豊かさという思考自体が豊かでないから、もっと欲しいと考えるのだと感じていました。

本質的には、みんな幸せになりたいと思っていて、それって“お金では買えない豊かさ”を求めているわけですが、この“お金で買えない豊かさ”を追いかけにくい社会モデルになっているのですね。つまり、それが貨幣を獲得していくゲームで成立している世界なので、億万長者や大きな家に住んでいる人々…、結局、お金を貯めている人が評価されるのです。

でも、経済は循環させることで皆が居場所を見つけたり、生計を成り立たせている。ここに大きな矛盾を内包しています。現在の貨幣経済のベースが形成された100年以上前からリーマンショック頃まで前ならまだしも、資本主義経済が成熟した現在社会においては、間違いなく貨幣モデルと社会構造とのミスマッチが起こっているように思えます。

――お金を貯めることではなく、お金をたくさん使ったほうが評価される世界になるべきということですね?

ある意味で、そういうことですね。現在の貨幣を供給していく仕組み、すなわち銀行が初めに受け入れた預金の貸し付けによって預金通貨を創造できる“信用創造”モデルは、経済成長が前提となって作られています。

経済成長が頭打ちになっている現在の日本では、効率化やコスト削減が優先されており、そのため仕事がなくなったり、自分の居場所がどんどん減っていくような現象が起きています。要するに、効率化で勝負できない人がどんどんつらい思いをしていっている。これは、社会デザインそのものに起因する問題です。

何度も言うように、現在の社会デザインにおいては、お金を貯めることが最上位にあるので、コストパフォーマンスを求めがちですが、それで幸福は買えません。本当はコスパの良いものではなく、好きなものを誰もが買いたいのではないでしょうか。そこに構造的な課題があることは間違いありません。

――そういった社会課題に対して、どのような解決法があるとお考えでしょうか。

大前提として、「公平」であることが重要だと考えています。日本では「公平」と「平等」が曖昧になっていますが、それは明確に違います。「平等」はそれぞれの状況を鑑みずに全員に対して同じ待遇を施している状態で、一方の「公平」は、それぞれの状況に応じて待遇を変え、アウトプットを均一にするイメ―ジです。

例えば二人で飲みに行って、会計が一人1万円ずつだったとします。全財産が10万円の人にとっての1万円と、全財産が1000万円の人の1万円では価値の重さが違いますよね。それは「平等」ではありますが「公平」ではありません。

その飲み会に価値を感じるのであれば、支払う金額は何も同じではなくてもいいですよね。価値を感じたら、同じ金額ではなく同席者より多く払っても良いではないですか。支払う金額は感謝の度合いを表しているのですから、既存の貨幣経済では、感謝をより多くした方が多くのお金を支払って損をするというデザインになっていますよね。それって、お金を使うより、貯めたほうが得だという理屈につながっていきます。

たくさん感謝をして、多く支払った方が得になるという仕組み、すなわち使って増えるお金があれば、サステナブルで幸福な社会が作れるのではないか?という発想から「PEACE COIN」は生まれました。

気前よく使った人が得になる社会を創れば、どのような価値を生むか。コストパフォーマンスを意識せず、好きなもの、クオリティの高いものを購入するようになります。その代金は、そういったこだわりの商品を生み出す人の給料になります。そうなれば、コストパフォーマンスなど意識することなく、もっと品質の良いものを生み出していこうという機運が生まれます。コスパが重要だと思っている世の中で、それだけではない文脈を作りたいというのが「PEACE COIN」の試みです。

後編へ続く

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