銭湯をシェアする?!「銭湯シェアハウス”清水湯”」

神奈川県横浜市・鶴見駅から2kmほど離れた場所に、昔ながらの煙突を構えてそびえ立つ”銭湯”がある。

1950年から今日まで、65年間続く「清水湯」。地元でもかなりの評判だ。
周りの銭湯は廃墟に変わってしまったり、潰れてマンションが建ったりなどと経営困難の中、1日100人程度のお客さんが集まるこの銭湯は、毎日変化を求める3代目の髙橋政臣(たかはし・まさおみ)さんが経営をしている。

あるきっかけを機に「清水湯」を”銭湯シェアハウス”として貸出し、様々な仕掛けで盛り上がりを見せている。今回はそんな仕掛け人の髙橋さんにお話を聞いてきた。

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きっかけは5年前、父親から入った一本の電話…。

5年前、東京で働いていた高橋さん。
ある日、父親から「銭湯の経営を辞めようと思う」との電話をもらったそうだ。

髙橋:銭湯は、親父が経営していました。その時は、東京でIT系のウェブ制作会社で働いていたんですけど、ちょうど1人暮らしをしていて、話を聞いた時に辞めるなら自分が継いでやろうと思って。まだお客さんも来てるし、辞める辞めないを自分が見てないところで決まってしまうのはもったいないし、これは自分が決めようと思った。

決断したポイントは、子供の頃からの「銭湯を継ぎたい!」という純粋な気持ちだったと言う。

髙橋:結局、「清水湯」を継ぐことを決意しました。東京から実家に戻ってくると、両親が家を空けて別のところに住むという話になっていて、もともと僕達夫婦だけで住む予定だったから、「2人でこんな広い家は必要ないから、じゃあここでシェアハウスやろうか」となりました。

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こうして始まった「銭湯シェアハウス」

シェアハウスは住む人によって雰囲気が大きく変わることもある。だからこそ「銭湯シェアハウス」では住人選びにかなり慎重で、その雰囲気を壊してしまうような人の場合は断ることもあるという。

髙橋:特に住人選びに関しては基準を決めてるわけでは無いんですけど、30代の方が多いこともあり、なんとなくわいわい騒ぐ感じじゃないなと思って。今のシェアハウスでは暮らしやすいとか落ち着けるとか、サポートしあうにしても足りないところを補い合うというよりは、余裕がある部分をシェアしあうという感じになっています

「銭湯シェアハウス」は他のシェアハウスとは違い30代が多く集まる。その理由は何故だろうか?

髙橋:友達の紹介とか自分の知り合いと住むことが多いから、そのせいで年齢層があがっていると思います。基本的に募集はかけていなくて、大体スカウトして住むとか、「友達に住んだほうがいいと言われて来ました」とかいうのが多いです。「そう言われたなら住んだほうがいいんじゃない」という感じで住んでもらってます。

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3組もの夫婦が住み、銭湯をシェアして生活を共にする

現在「銭湯シェアハウス」にはどのような方たちが住んでいるのだろうか?

髙橋:基本的に個人事業主が多いですね。だから、誰かがやりたいと思った企画をみんなで手伝ったりしています。例えば、キッチンカーを使ってお店をやりたいっていう住人がいたので、キッチンカーを借りてきて、住人みんなで前日に文化祭のように準備をして当日お店を開いたり。自分がもともとそういったことをするのが好きだったので楽しみながらやっています。あとは、夫婦が2組住んでいます。自分たちを入れると3組いて、さらに1組は妊娠・出産を控えている状態なので、異質な感じですね。

個人事業主が多いとシェアハウス自体に刺激があり、髙橋さん自身もワクワクすることが多いという。また、一般的に知られているシェアハウスであれば、夫婦になったらシェアハウスから出て行くことの方が多い。だが、寛容な「銭湯シェアハウス」ではその事実を受け止め、一緒に住むことを選んでいる。これも髙橋さんの”刺激”のひとつ。

髙橋:あるひとりの方は、彼女がNYにいたので日本に帰ってくるタイミングで引っ越し先を探す、という話で受け入れてたんですね。実際に彼女が日本に返ってきてからすぐ結婚することになって、「じゃあ引越し先を探そうか」となっていたんですけど、結婚式の準備が忙しく引っ越しの方に手が回らなそうで。だったら結婚した後も「銭湯シェアハウス」に住めばとなったんです。

「え、シェアハウスで夫婦として住むことなんてありえるの?」と思う方もいると思うが、実際に夫婦で住むシェアハウスや、シングルマザーだけのシェアハウスなど形態は様々だ。

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何もかも開放的な銭湯で、こぼれるお湯と本音

髙橋:銭湯って昔ならではのものだから、周辺地域の方との繋がりはもとからあって、「銭湯シェアハウスに住んでいます」って言うだけで、地域の方たちから信頼されるというのはありますね。お祭りとかも規模がでがく、地域交流が盛んな地域だからこそ銭湯でのコミュニケーションも気楽なんですよね。

銭湯の中でもシェアハウスの住人と地域の方との交流は盛んで、いろんな話がされるのだという。
やはり何もかもが開放的な銭湯は、一緒に入ることで自然と本音がこぼれてしまうらしい。

髙橋:何も隠すことがないので身体はもちろん、心も開放的になるんですよね。だからなのか、自然と本音がこぼれたり、聞き手として話を聞いていることが多いように感じます。

一方で、単に銭湯をシェアするだけではなく、変わった使い方もしているようだ。

髙橋:銭湯って音響の響きが相当よかったりとか、昔ならではの場所だからなのか、日本人に共通して嬉しくなる空間であることは感じていて。よくわからないけど盛り上がるじゃないですか。なので、銭湯を使ってコンサートを開催したりしています。”銭湯”という文化だったり、雰囲気、ビジュアルやそれに対する愛着をもっと持ってもらえるように、お風呂に入るだけじゃなく、銭湯を面白く使ったイベントをこれからも企画していきます。

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“シェアハウス”と”銭湯”、これからの展望について

【 シェアハウス 】

髙橋:ひとつ考えてるのは、「銭湯シェアハウス」と「銭湯の運営」を他の誰かにやってもらうこと。この家の規模だと、最大20人くらい住めるんですね。そのくらいの規模でシェアハウスを運営したら面白そうなのですが、さすがにこの年齢になるとこれ以上大人数で暮らすのは難しいと感じてます。なので、お風呂の運営も含めて他の人にやってもらうのは面白い。「大人数のシェアハウスも運用できるし銭湯の経営もやれる!」という人が誰かいれば、任せようかなと思っています。

【 銭湯 】

髙橋:銭湯に関しては、自分の銭湯にこだわらず他の銭湯を利用したいと思っています。銭湯って、年々来場客が減っていると言われているんですが、本当はもっとやりようがあるんですよね。なので、他の銭湯の運営だったり、元々銭湯で今は潰れたままになっている場所を使って、何か出来ることはないかと常に考えています。

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高橋さんにとって、”銭湯シェアハウス”や”銭湯の経営”、更に片手間に始めた”焼き芋”や”かき氷”の販売など、全ては自分の人生を面白く、楽しく過ごすための手段であって、それが目的ではないという。

髙橋:楽しい人生を歩むにあたっては、繋がりがあるというのはすごく重要だなと思いますね。シェアハウスは仕事というより、”生活をより豊かにするためのもの”だと思ってるので、そこから外れないように意識しています。犬を飼っていると出かけられない時もあるけれど、ペットホテルに預ける代わりにうちで預かれば、その人も喜ぶし犬も独占できる。そんな感じで、自分の身の回りにいる人や、身の回りにあるものを活かして、助け合いながら自分や誰かの生活をより豊かにできればいいなと、日々試行錯誤しています。足りない部分を補うとか、余裕のある部分をシェアしていく環境を、これからも作っていきたいなと思っています。

この記事の登場人物
  • 髙橋 政臣
    1977年生まれ。鶴見区潮田町にある銭湯「清水湯」の三代目。 毎日楽しく暮らすことをモットーにお風呂も社会も沸かす活動中。 銭湯・銭湯シェアハウス・焼き芋屋「ホクホク・ザ・ダッチオーブン」を運営。
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