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9月のシルバーウィーク最終日に開催された、「シェア」を起点にこれからの都市について考えるイベント<SHARING CITY FUKUOKA 2016>。オープニングトークを皮切りに、メインステージにはシェアに着眼した様々なジャンルのシェアリングサービスの代表者が代わる代わる登壇し、都市環境における「シェア」の有効性を5つのテーマから意見交換をおこないました。また、メイン会場外の広場には、シェアリングにまつわる新しいソーシャルサービス企業のブース「シェアラウンジ」も登場。あいにくの空模様にもかかわらず、ブースが立ち並ぶ警固公園には、家族連れやカップル、年配者など多くの来場者で賑わいました。

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▲メインステージのモデレーターを務めた小松 里沙さん

出会い、子育て、乗り物、はたまたスペースや宿泊など、様々なジャンルのシェアリングサービスが普及する昨今、そこで生まれるコミュニティが未来の福岡をどのように描くかを討論する「シェアズセッション」。壇上では、“出会い”や“環境”、“やりがい”、“もてなし”、それに“アクティビティ”の5つのテーマを中心に、全国から20名のシェアリングビジネスを牽引するゲストスピーカーによるプレゼンテーションがおこなわれました。

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▲「シェアで出会う街」をテーマに議論する、株式会社スペースマーケット 代表 重松大輔氏、株式会社notteco 代表取締役 東 祐太朗氏、株式会社エニセンス 代表取締役 熊谷 昭彦氏(写真左より)

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▲株式会社スペースマーケット 代表 重松大輔氏

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▲「シェアで環境を見直す街」をテーマに登壇された、ソーシャルグッド・プロデューサー 石川 淳哉氏、環境省 地球環境局 地球温暖化対策課課長 松澤 裕氏、コギコギ株式会社 CEO 中島 幹彰氏(写真左より)

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▲「シェアで環境を見直す街」をテーマに登壇された、ランサーズ株式会社 福岡支社支社長 谷脇 良也氏、株式会社クラウドワークス 経営企画 石山 安珠氏、株式会社AsMama 代表取締役 甲田 恵子氏、株式会社ikkai 共同設立者兼代表取締役 Thomas Pouplin氏(写真左より)

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▲株式会社AsMama 代表取締役 甲田 恵子氏

一日の時間のなかで“休眠スペース”となりうる空間や、そもそも使われなくなった場所(約6000カ所)を会議や結婚式などに有効的に一時利用(共有)できるシェアリングサービス(スペースマーケット 代表 重松大輔氏)。また、昔ながらの“近所の頼り合い”を現代に再現する子育てのシェア(株式会社AsMama 代表 甲田恵子氏)のサービスは、待機児童問題や、育児と仕事を一手に抱える女性の来場者の共感を得ました。また、必要の際、各種ブレーンや業務をオンラインで受発注できるクラウドファウンディングの有効性(クラウドワークス 石山安珠氏)の他、ワークライフバランスの観点から、趣味や自分磨きの時間を充実させるためのスキルのシェア(ストリートアカデミー 代表 藤本崇氏)も着実に利用者が増加傾向にあることも紹介されました。

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▲「シェアでもてなす街」をテーマに登壇された、株式会社MATCHA 執行役員 山田 圭介氏、株式会社Huber. 取締役CMO 佐藤 祥氏、TABICA 事業責任者 上田 祐司氏(写真左より)

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▲「シェアズセッション」最後のテーマ「シェアでもっとアクティブな街」をテーマに議論する、ストリートアカデミー株式会社 代表取締役 藤本 崇氏、株式会社ココナラ 代表取締役 南 章行氏、スタートアップカフェ コンシェルジュ 藤見 哲郎氏(写真左より)

生活上のありとあらゆる物事が「シェア」によって無駄を省けるようになるということは、一方で従来の消費型、所有型を正としてきた日本経済にとって不都合が生じることにもなりかねません。しかし、民泊という言葉を既に誰もが知るように、あるいは利用者の急増という現実から見ても、「シェア」の大きなうねりが今後、“民間の”メインストリームに発展することは時間の問題かもしれません。そのために急がれるのは、秩序あるシェアリングの枠組みづくり。それを担うのは他でもなく行政です。

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▲オープ二ングトーク「福岡市はシェアでこう変わる」に飛び入りで登壇された高島宗一郎福岡市長

その思いが届いたのか、「オープニングトーク」のステージには、私服をまとった高島宗一郎福岡市長の姿がありました。今年、住み良い街づくりの都市計画モデルとして国内で唯一、国連加盟国に推奨された他、「スマートシティ」を掲げ国際都市としてのポテンシャル向上に取り組む福岡市。市政のトップを務める高島市長はシェアリングに関する規制緩和(条例改正)も全国に先駆け実現化しました。しかし、本人曰く、ここに至るまでには大きな苦労があったそう。

「(中略)福岡市のような一部の尖った地域だけでなく、“シェア”を全体(他の地方都市)に広げようと思うなら、国で決めた枠組みをそのまま地方までエクスキューズする仕組みづくりも必要なのではないか」。とはいえ、シェアリングのように、新規なる大テーマを地方自治体の裁量で取り扱う際、そこには私たち市民に馴染みがうすい歴史的な検証や法律との整合性が要るからすぐさま実行に移せない(決定までに時間がかかる)のも現状なのだそう。

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屋外の警固公園に展開された「シェアラウンジ」では、似顔絵ブース byココナラや、マッチング・サービス「Huber」による国際交流ガイダンスなど、シェアリングサービスを手がける登壇者たちの企業や団体がブースを出展。体験者が楽しく過ごしている表情を見ていると、福岡に定着しつつある“民泊”の分野のみならず、市民、観光客が求める都市型シェアリングのニーズ、一つひとつをクリアにするための課題も見えてきました。

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福岡市が全国でも抜きん出た取組みをおこなえるのは、紛れもなく高島市長の市政の“姿勢”にあると感じました。福岡市のオフィシャルアカウントに基づく市政情報公開はもちろん、市長自身のSNSからも市民目線の問題点にどうあたっていくかという意思をみてとれます。シェアリングシティの気運も、そうした市長の日ごろの活動や思いに市民が引っ張られている側面もあるでしょう。また、積極的な民間ブレーンの活用も挙げられます。アイディア自体の熱が冷めぬうちに、体(てい)をつくりやすくする枠組み(法整備)は言うに及ばず、それを実行に移すための施策を有識者はじめ、現場を担う民間企業と取組んでいるのです。国で決めたスキームをそのまま地方に落とし込むという難しさは前述したものの、行政における意思決定のスピード感は、より加速を迫られる場面が多くなります。そういう場面で、特例を設けるとか、市長により強い裁量権を与えるとか、抜本的な改善の余地がまだまだあるように思いました。

今回の国内初自由参加型フォーラムフェス<SHARING CITY FUKUOKA 2016>は、シェアの現状や可能性を通し、来場者一人ひとりの物事の捉え方、価値観に大きな気づきや変化をもたらしたように感じます。シェアされる側もする側も、一方がどうこうというのではなく、“分かち合い”という考え方によって、今後わたしたち自身のライフスタイルを見つめ直す指標につながると確信しました。

photo by 関征士(McQUEEN)、ヤマベマナブ(calmphoto)