“働き方改革”の一環として、日本政府が“原則、副業・兼業を認める方向で普及促進を図る”との指針を示したことで、企業、個人の双方で、副業・兼業に対するポジティブな機運が一気に高まりを見せています。
「副業元年」になるとも言われている2018年を、優秀な副業人材獲得の絶好の機会と捉えている地方自治体や企業も多く、全国各地で様々な動きが活発になっています。
そんな動きをいち早くキャッチし、アクションを起こしているビズリーチが「副業・兼業限定『地域貢献ビジネスプロ人材』公募」をスタート。その説明会が実施されました。当日は全8社の副業・兼業人材を求める地方拠点企業と、副業・兼業に関心の高い参加者82名が会場に集結。活発な情報交換が行われました。

冒頭、株式会社ビズリーチ地域活性推進事業部チーフプロデューサーの加瀬澤良年さんが登壇。本公募を開始した背景について以下のように説明しました。
「インターネットの力で世の中の選択肢と可能性を広げていくことをミッションにしているビズリーチは、2014年から地方創生を掲げ、省庁や自治体向けの採用支援を実施してきました。内閣府の『プロフェッショナル人材戦略事業』にも積極的にご協力を申し上げ、38都道府県において人材採用をサポート。首都圏在住のプロ人材に対して地方転職のやりがいを紹介してきました」
このような実績を重ねてきた同社は、政府が進める“兼業・副業”推進の流れに早くから着目。完全な転職だけでなく、副業・兼業という新たなかかわり方を提案しようと考えたのだといいます。
「ビスリーチ会員を対象とした調査によれば兼業副業のトライしたいと考える方が83%、首都圏以外の地域での兼業・副業に興味があると回答した方が75%にも上りました。一方で、それを認めていない企業は85%と多く、兼業・副業の推進において企業とプロ人材のアンマッチが発生しています」と指摘します。
そこで同社は昨年、広島県福山市で日本初となる兼業・副業限定による戦略推進マネジャー、すなわち市長の右腕の公募に踏み切ることに。約400人の応募者の中から5名を採用するに至りました。
「目指すは受け入れ企業、本業企業、プロ人材によるWin-Win-Winの関係。平成30年度の地域中小企業人材確保支援事業に参画し、モデルケースとなる成功事例を創出する実証実験として、今回の大規模公募に踏みきりました」
最後に加瀬澤さんが力強く、「プロ人材にやりがいを提示すると同時に、地方の人材不足を解消したい」と意気込みを語り、その場を締めくくりました。

続いて登壇したのは、熱海市観光経済課産業振興室の長谷川智志さん。今回、地元の4企業が公募に踏み切ったことで、市全体の取り組みとして、その思いを次のように語ります。
「明治、大正、昭和と、過去には幾度となく飛躍的な発展を遂げ、盛り上がりを見せてきた熱海。近年では残念ながら、急激な人口減少や高齢化、若年層流出、さらには観光客の激減などにより、今や“課題の先進地”として認識されるようになりました。それは、同様な課題を抱える日本の30年後の姿ともいえます」
ところが、熱海に住む人々はそれを悲観することなく、その現状を“可能性のかたまり”としてポジティブに捉えているといいます。
「改善すべき課題が顕著になっている今こそ、新たなイノベーションを起こす絶好のタイミングとして捉えるべきであり、そのために行政でしかできないことがあると自覚。民間が徹底的に稼げて、所得をあげる施策を打つ必要があります」
東京に限りなく近い観光地であるという立地条件から、遊びと仕事のリンクが可能。オンオフがある活き活きとした研修や開発合宿に利用されるケースも増えているといいます。また、首都圏への通勤も可能となる距離の近さにより、地域定住に向けてのステップとして、あるいは2拠点居住の可能性を探るにも適した立地であるといいます。
「これまで、観光や社員旅行、別荘地としてなど様々な要素を柔軟に受け入れながら発展してきた熱海は、いわば多様性と寛容性が同居する町です。皆様のアイデアを受容しながら、さらに発展を続けていくと思っています。私たち行政も単なるマッチングでは終わらない、伴走型のフォローを実施します」

長谷川さんからバトンを渡された形で登壇した水野綾子さんは、実際に熱海と東京の二拠点を行き来しながら複業を実践している女性です。東京の会社に所属して、編集業に加え文化人のPRやプロディースをしながら、実家のある熱海で3人のお子さんを育て、さらにはまちづくりに積極的に参画。そんな水野さんは、ご自身の経験から二拠点ワークの可能性について、次のように語ります。
「地方での副業によって、皆さんのキャリアは確実に広がります。その理由はいくつかあります。まず、まさに今、働き方の潮目が来ているということ。終身雇用や年功序列、大企業神話が崩壊。副業が解禁され、“パラレルキャリア”という考え方も定着しつつあります。ひとつの会社に依存することがリスクとなる一方で、異なるコミュニティにかかわることが人生のリスクヘッジになる時代がやってきました。会社の肩書ではなく、個人の名前で勝負をし、複数の信頼関係を構築する必要があります」
水野さんはさらに、どうして複業を地方で実施するべきなのかについて言及します。
「先ほど、熱海市役所の長谷川さんからご説明があったように、熱海は課題だらけのまちです。だからこそ、やるべきことやできることが山ほどあります。また、人手が不足しているからこそ、自分のスキルを活かしながら、やりがいある仕事を獲得していくことが可能です。地方こそ、いわば個が活躍できる先進地域といえます」
しかも完全移住ではなく、複業だからこそできることがあると説明を加えます。
「地方に魅力はあるものの、仕事やコミュニティを捨ててまで移住するかと言ったら、それは難しいというのが正直なところでしょう。複業という選択肢は、培ってきた立場やスキルを捨てずに、新しいカタチで活かせる機会でもあります」
複業者を受け入れる側の企業も低リスク、低予算で高いスキルを持った人材を獲得し、社内全体のモチベーションもアップ。本業の企業も多様な働き方をする人材がいることで成長や変革につながっていくと考えられるとしたうえで、「複業という新しい働き方は、個人も企業もローリスクで最大の結果を出せる」と締めくくりました。

その後、今回の企画に賛同し、実際に公募する企業からのプレゼンと求める人材について説明がありました。熱海市からは熱海ガス、ホテルニューアカオ、モリボー、マジオネットの4社が参加。さらに島根県の海士町からはAMAホールディングス、風と土と、海士の3社、香川県三豊市から瀬戸内うどんカンパニーの関係者も登壇し、それぞれの企業の魅力を発表しました。

イベント終了後に水野さんに個別インタビューを実施。ご本人の役割について以下のように述べていました。
「今回の取り組みにおいては、企業選定の段階からコーディネーターとして参加。企業の方々に複業の概念や、受け入れることで生まれる可能性のご説明などもさせていただきました。今後は、応募者と企業の間をつなぎながら、この取り組みを成功に導くべく、熱海のチームでサポートを続けます」
多拠点ワーク、複・兼業を通じて実施される“個人のスキルシェア”の可能性について議論が活発に行われるようになった昨今、ビズリーチと熱海市がタッグを組んだ今回の取り組みが、ひとつのロールモデルとなることは間違いありません。私たちShare!Share!Share!編集部としても、しっかり今後の動向をチェックしていければと思います。