産廃ビジネスというとどんなイメージが浮かぶでしょうか。不用になった機会製品がスクラップになる様子? それとも解体された電子部品が日本以外のアジア諸国に流れるといったイメージ? もしくはペットボトルを粉砕してリサイクルするといったところでしょうか。しかし今、産廃ビジネスはリサイクルとも単なるリユースとも違う、新たな時代を迎えています。

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11月25日(金)に開催されたシェアリングエコノミーのすべてがわかる、国内初のカンファレンス<シェア経済サミット>のワークショップで登場した株式会社ナカダイの常務取締役の中台澄之氏。中台氏が示したビジョンは、産廃ビジネスに関わる人だけでなく、「モノ」と一生付き合うわたしたちのライフスタイルをどう変えるべきか? シェアリングエコノミーとの接点や、新しい考え方のヒントに溢れたものでした。

“捨てる情報”のシェアでビジネスが変わる

「産廃屋さんって、怖い、汚いというイメージがあると思うが、現実にはそうじゃない」と語る中台氏。

今回のシェア経済サミットの会場に設置された照明や椅子などは、ほぼナカダイから納品された“捨ててしまえばただのゴミ”だったものばかり。その中の一つ、照明を仕込んだ円筒形のコンテナ(写真上)は、元々はシャンプーが入っていてイギリスから運ばれた。

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「うちの工場は工場見学や、はとバスツアーもやっているんですが、それは産廃物やゴミを集めても、臭くもないし怖くもないということを見せるためなんです。モノを作ったり、壊したりするワークショップも開催していて、特に人気なのはパソコンの解体。夏休みには毎日10組前後の親子連れで賑わっています。他にも、“リサイクルの瓶を思う存分割りまくれる”イベントもやっていて、ストレス発散できると好評です(笑)。楽しくないと興味って湧かないじゃないですか? 環境問題意識を持てとか、マイ箸持ってないとエコじゃないとか、そういうのはもうやめようと。興味が湧いたら自然と自分で調べますよね」

自分で体験することで、改めて『ゴミってなんだろう?』『もしかしたら今までゴミと思ってたものはゴミじゃないのかも』という気づきに繋がる。中台氏は、まず産廃業へのイメージを覆したところで、ナカダイのビジネスが『リサイクルのその先』を行く理由についてこう語ります。

「今、皆さんが座ってる椅子は、ある企業が35年間箱根の研修センターで使っていたもので、撤去するときに回収したものですが、そのまま使えています。他にも、例えば美術館や博物館は展示に使った備品は会期が終わると廃棄してしまいますが、それを我々が引き取って他の企業に提供する。つまり“今まで捨てていたものを次に使う人へ繋ぐ”という考えから、“モノの流れ”と“カネの使い方”を変えていきましょう、というのが我々のビジネスです」

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「そもそも産廃屋って売り上げが廃棄物の量 × 単価なので、量を集めると儲かる。ゴミを集めたもん勝ちなんですよ。我々の会社にも毎日60トン近く回収されてきます。そこで一番の問題は、廃棄物の中身は入ってきて初めて分かるということ。そこから“こんなおもしろい織物入ってきたけど使うか?”って言ったところで、毎日60トン回収されるので、結局は生かしきれずモノも溢れるから壊してリサイクルしなくちゃいけない。でも本来、きれいに保管しておけばそのまま使えます。今回のサミットの“シェア”というキーワードも同じですけど、これからは大量生産、大量消費しない時代になってきていて、個人消費も減少して行く社会。そんな中、たくさんモノを集めないと成り立たないビジネスって、この先30年持たないんじゃないかと思うんです。むしろ、産廃物を減らしながら、どうやって産廃ビジネスを成立させるか? そこから考えたのが今のビジネスなんです」

“ゴミそのものを減らしたい”という社会的な理想があるなか、現実ではゴミの量を確保することに固執していては将来的にビジネス自体が先細る。この、一見矛盾するような両軸が、捨てる人と使う人を繋ぐビジネスに進化し、産廃業が発展したと言えます。しかし理想的なビジネスに見えるナカダイのこのスキームを構築するために不足しているのは、『捨てられる情報』が無いことだと中台氏は語ります。

「新発売の情報はたくさんありますが、企業の“捨てる情報”っていうのは全然存在しない。我々は捨てられた時点からサービスを始めることになる。つまり、先ほどのモノが溢れてしまうから壊してリサイクルする他なくなるということです。でも、“捨てられる情報”が1,2ヶ月前から分かっていれば全然違う使い方ができる。例えば東京オリンピックの開催期間は分かりますが、どこでどんなものを使って、いつ何を捨てるかが分かれば、これは外国に売って、これは国内で使って、これは例えば<第4回 シェア経済サミット>で使って、というふうに、あらかじめ紐付いた状態でスタートすれば、捨てるものは特にないんです」

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「我々は今“モノ”をシェアしているけれど、そもそもの“捨てる情報”のシェアができれば、ビジネスが変わる可能性がある。その情報がないことが世の中のモノの流れを悪くしている根源だとわたしは思っています。企業側が日常的に廃棄処分しているものを世の中に出す、我々はそれらを“もったいないから”ではなく、もう一回使おう、という多様な価値観を持てれば、ビジネスとしても広がって行くと思いますし、推し進めていけるのではないかと思います」

「捨てる情報がない」=「どんなモノがいつ捨てられるのかがわからない状況」の今、もし状況を把握できれば「廃棄」ではなく「モノの保管と移動」という考え方に価値転換が起きる。実際、<シェア経済サミット>で使われた備品は、モノとしては普通のオフィス用品だったりしたが、そのまま使うもの、ちょっと手を加えて本来の使い方からアレンジしたものが混在し、ユニークな空間を作っていました。わたしたちが一生使い、付き合う「モノ」がどこからきて、次にどこへ行くのか? について興味が湧いたことは事実。なんでももったいないからリサイクル、リユースするというだけでなく、欲しいものを「交換」するサービスが人気なのも、時代が醸成しているムードなのかもしれません。

Photo by Kayo Sekiguchi