全国民泊同業組連合会理事を務めるL&B空間プロデュース代表の七種(さいくさ)珠水さん。手掛けたAirbnbの内装が次々と高収益を上げた事が話題となり、マンション・邸宅・別荘・オフィスを年間50空間プロデュースしている空間プロデューサーです。元客室乗務員である経験や2児のお子さんをもつママ目線も生かした“おもてなしの心”を大切にする部屋作りについてお話を伺いました。

__空間プロデュースを始めたきっかけは?

育児と仕事の両立を考える中、CAという仕事だとどうしても子どもと離れる時間が多くなってしまいますので、子どもを優先した仕事をしたいなと考える中で産休中から副業として空間プロデュースを始めたことが今の仕事につながっています。

__なぜAirbnbに着目をしたんでしょうか?

5年程前に友人が空き物件を所有していて、海外で人気のAirbnbをプロデュースしてみないかという話になって。空間プロデュースは初めてでしたが、ホテルやインテリアは大好きでしたので、とにかくどんな物件があるのか、人気のAirbnbの部屋をたくさん泊まってみました。その後はじめて手掛けた物件が、稼働率90%でかなりの収益を出すようになって。そこから自分でもAirbnbホストをしながら、数々の部屋をプロデュースするようになりました。

__ズバリ、人気のAirbnb物件を作るコツは何ですか?

これというマニュアルがないので、本当にホストによってやり方はさまざまなのですが、人気の物件にはルールがありますね。ゲストに喜んでもらいたい「想い」のある物件なのではないでしょうか。私が大事にしているのは、「明るさと清潔感」「肌に触れるものはいいものを使う」ということ。肌に直接触れるシャンプーなどのアメニティや寝具類は清潔で良いものを意識します。もちろん予算の中でやりくりも大切です。あとは何より目に見えない“おもてなしの気持ち”がとても大事。私がホストをする際は、ゲストに合わせたプチギフトを用意していました。ヨーロッパの女の子だったらチョコレートなどのプチスイーツをベッドの上に置いてみたり、中国の方だったら炊飯器を使われるのでその使い方を詳しく書いたメモを置いてみたり…。部屋さえよければいいということではないことはAirbnbの大事なポイントだと思います。

__これからのAirbnb市場をどう見ていますか?

大手企業も参入してきて認知度は益々上がるでしょう。日本ではAirbnb=安くてお得というイメージがまだあると思いますが、海外ではむしろその逆で、その土地で暮らすように泊まりたいという目的で使う方が多く、お金に余裕のある人たちも使うものだったりします。日本にも都市に限らず、その土地ならではの体験ができる物件が増えてくると面白いですよね。民泊は諸問題もありますが、一部の心ない人がメディアで大きく取り上げられてしまっているのは残念ですね。私の知る限り、ほとんどのホストの方は人が大好きでおもてなしをしたいというハートフルなホストばかりです。
もっと、そんなホストの方をとりあげてほしいです。

__インテリアコーディネートをする上で心掛けていることは?

「依頼していただいた方が喜んでくれるか」、「空間に+αの価値を付けられるか」を意識しています。社長さんや自営業のご自宅を作る際は、その人のライフスタイルに合わせた住みやすさはもちろん、その人や仕事を含めたトータルなブランディングまで考えます。とはいえ、私自身会社員経験が長いので、会社経営も独自の勉強法で学んでます。日々勉強で大変なことばかりですが、“分からないことはその道のプロに聞いて学ぶ”という精神で、職人の方にも多くを教えてもらいながら部屋作りを行っています。もちろん、仲間のデザイナーなどにも、たくさん助けられていますね。

七種さんが手掛けたお部屋の一例


CONCEPT:Mon auberge favori
私のお気に入りの小さなホテル☆。自由が丘のアパートの1室をかわいい空間にしました。


CONCEPT:昭和女子の部屋
ブリキの看板、レトロな壁紙。なんだかどこか懐かしい。新宿のマンションの1室、古さを生かしてみました。


CONCEPT:幸桜楼 – みおんろう
京都の旅をさらに彩付けてほしい、そんな想いを部屋の中に詰め込んでみました。

__空間プロデュースをはじめて変わったことは?

最近はオフィスのプロデュースをさせていただくことも多いのですが、自由な発想のオフィスを求める声が多く、働き方の変化を感じます。話題のシェアオフィスなどもそうですが、「会社に行くのが楽しくなるオフィス」「自分らしく生き生きと働けるオフィス」はこれからどんどん増えてくると思います。

__お子さんとの仕事の両立はどのようにしていますか?

子どもたちは日中保育園に行っているので、平日関わる時間は、朝と夜の1日4時間程度ですが、そこはもう全力で(笑)。量ではなく質で勝負だと思っていますので、たくさん向き合います。2人の娘はおままごとやお絵かきが大好きなので、一緒にインテリアショップを巡ることもありますよ。

__これからしてみたいことはありますか?
地方再生プロジェクトにも興味があります。これからどんなにAIなどが発達してきても、モノ創りは無くならない。同じ志をもった職人さんたちと一緒になって、表現の場としての空間作りを楽しんでいけたらいいなと思いますね。セミナーをさせていただいた「匠アカデミージャパン」さんもそうですが、定年後に第二の人生として好きなモノづくりを極めた匠を目指すという考えもとても素敵ですよね。世代や性別を超えてモノ作りの楽しさが広まっていくといいなと思っています。