食べることが好きな人同士がつながる“みん食”コミュニティ「キッチハイク」。ここでは料理する人をCOOK(クック)、食べる人をHIKER(ハイカー)と呼んでいる。今回は、そんなキッチハイクで「旬の魚や生産者さんのことをみんなに知ってもらいたい」という思いから、自宅で魚料理のPop-Up講座を開催する片口美保子さんにお話を伺いました。これからは食もシェアする時代になりそうです!

__キッチハイクでCOOKはじめたきかっけは?

きっかけは、東日本大震災です。そこから東北の復興支援を「東北食べる通信」(https://tohokutaberu.me/)などさまざまな形でサポートしていくうちに、農家や漁師さんといった生産者さんと知り合うことができまして。もともと趣味で魚をさばいて料理をすることが好きで、「いつか魚さばき教室をやってみたい」という夢があったのですが、所詮素人。フードコーディネーターの学校に通いお魚マイスターの資格は取得していたものの、先生として教室を開くのは何年もかかるなあと壁に当たっていた時に、キッチハイクのPop-Upを見て「これだ!」と思いCOOKになりました。

__どのくらいのペースでCOOKをしていますか?

平日の昼間は金融会社で会社員をしているので、私がCOOKをするのはだいたい仕事終わりの平日夜19:30~。魚の旬にもよるのですが、多いときで月4~5回。COOKの日は出社前と帰宅後にバタバタと準備をしています。スケジュールとしては、19:25駅へ参加者をお迎え、19:30から調理開始。19:50頃から食事、21:30に解散という感じです。メニューは、魚により変わりますが、「お魚のお福分け」千葉県船橋漁港の江戸前の魚でお魚バルお魚料理5品とミニデザート、ワイン付きで2500円、宮城県秋鮭のはらこ飯とはらす焼き3000円といった感じです。


自宅のため住所はお知らせせず、HIKERと最寄り駅で待ち合わせ。はじめましての方ともここでご挨拶。


自宅に戻り、早速調理開始。この日はひらめ、すずき、太刀魚、ホウボウ、カマス、甲イカ。どれも東京湾で昨日採れたばかりのものを、江戸前漁師である船橋漁港の大傳丸の大野和彦さんから直接仕入れたもの。


スズキは骨をとり皮をはがし、繊維に沿って切ると美味しいそう。実際にHIKERさんもお手伝いしてカルパッチョに。


太刀魚は肛門まで切り目を入れてから内臓を取り出すとやりやすいそう。皆さんで協力しながら楽しく調理していきます。


今回の料理は豪華6品!スズキのカルパッチョ、ヒラメのお刺身、ホウボウとカマスのアクアパッツァ、甲イカのサラダ、太刀魚のムニエル、スズキのパスタ。

参加者の皆さんに感想をお聞きすると、「片口さんの生産者のお話がとても面白くて他にはないのでリピートしています」「魚のおいしさが再認識できました。何よりコスパがいいのも魅力」「片口さんのホスピタリティあふれるおもてなしが好き」と皆さん満足そうでした。

__どういった方が参加されていますか?

私のPop-Up講座の場合は参加型なので包丁を使って魚をさばいたりするので、女性の方が多いですね。皆さんお仕事帰りに参加してくださっています。嬉しいことにリピーターさんが多くて、その方たちに助けてもらいながら毎回Pop-Up講座を開催できている感じです。あとは、参加される方たちは皆Airbnbをはじめとしたシェアリングエコノミーサービスの感度がとても高く理解がある方たちなので、私としても話をしていてとても刺激を受けます。“よその自宅に行って知らない人同士が一緒に食事をする”というのは一見ハードルが高く見えるかもしれませんが、シェアサービスの利用に慣れている人にとってはあまり抵抗がないんだと思います。私自身も、シェアオフィスを利用したり留学経験があるので、はじめましての人が自宅に来ることにもそこまで抵抗はありませんでした。

__Pop-Up講座をする上で心掛けていることはありますか?

先ほどの話とやや重複しますが、食べるだけではなく一緒に参加して料理をすることは一番大事にしています。そして、食材はできるだけ生産者の顔が見える食材を使っているので、その方の思いを伝えるようにしています。講座の様子を写真とともに後日、漁師さんに伝えるのですが、「自分が釣った魚を女性や男性も調理して、こんなに楽しく食べてくれているなんて!」と皆さんすごく喜んでくれて。このPop-Up講座を開くことで、生産者と消費者をつなぐ役割が少しでもできたら嬉しいですね。
あとは、魚をまるごと1匹買って自分でさばいて食べるって特に一人暮らしだとなかなか難しいものですが、この講座だと一度に4~5種類の魚を見て、さばいて食べることができるのも特徴かなと。仕事終わりに一人で定食屋へ行くのなら、ここに来てワイワイ楽しみながら普段の食事を豊かにするということをコンセプトにしています。ですので、料理もあまり凝ったものはしていません。
私の講座は「お魚のお福分け」というネーミングにしているのですが、これは海の恵(福)を皆さんと食べてシェアすることという思いが込められています。

__キッチハイクをはじめて変わったことはありますか?

料理教室を開くというと、とてもハードルが高くなりますが、COOKはあくまでアマチュア。自宅なので設備投資もいりませんし宣伝も不要です。そんな私でも実践の場を持てるチャンスを与えてくれたことで、とても世界が広がりました。秋刀魚をあまり焼いたことがなかったという参加者の方が、この講座の後に「自分で魚を料理してみました!」という声を聞くととても嬉しくなります。
また、参加される方の中には多ジャンルのCOOKの方もいらっしゃるので、COOKでありHIKERでもある、そんな自由度の高い関係性がキッチハイクならではだと思います。初対面の人同士でもみんな「食べることが好き!」という共通点があるので、毎回とても楽しいです。

__今後挑戦してみたいことはありますか?

私がよくお魚を仕入れている千葉県船橋漁港の大野さんという素敵な漁師さんがいるのですが、たとえば採れたての魚を使って、漁港で漁師さんと調理するPop-Up講座ができたら楽しそうだなと思っています。あとは、夢である「魚さばき方教室」も形にしたいですね。
私の講座を通して、食べた後の食に関する行動に何かしら変化が生まれたら嬉しいですね。
私は他にもいくつかのシェアリングエコノミーサービスの支援を行っているのですが、シェアすることは価値が増えること。抵抗を持たずにもっと多くの方が普通に利用してもらえる社会になれたら素敵ですよね。

__最後に、これからキッチハイクでCOOKを始めてみようかなという人にアドバイスを!

たとえば、牡蠣の殻を剥ける、美味しい玉子焼きが焼ける…。自分にとっては当たり前にやっていることも人によって新鮮に映ることがあります。最初から完璧にやろうとハードルを上げすぎずに、まずはエイッと初めてみてください。同じ価値観を持った人たちと集まり、食という時間を共有することはとても素晴らしいことだと思います。