シェアハウス+民泊+ワークショップスペース+料理教室と多彩な魅力を詰め込んだ「Miraie」の運営をするヨウさんは、とってもパワフルで魅力的な女性! どうして、こんな発想が生まれたのか、どうして、こんなダイバーシティな施設を切り盛りできるのか?そんな話を伺っていたら、見えてきたんです。彼女の、家族に対する深い愛情が…。じっくりお話を伺いました。

――まずは、このMiraieの概要から教えてください。

Miraieはシェアハウスと民泊、そしてアーティストを招いてのワークショップを開催するなど、複合的な価値を提供する場所ですね。ウチがユニークな点といえば、やはり家族で運営をしているということ。家族が暮らす一軒家で、どのようなシェア生活が実現できるか、色々と考えながら進めています。

――Miraieをはじめたのは旦那さんとの出会いがきっかけだったとお聞きしましたが。

元々、私が日本で生活を始めたとき、一人暮らしは寂しいと思って、恵比寿にあるシェアハウスを利用していたのですね。当時、日本ではまだシェアハウスは珍しくて、そこがハシリだったと思います。だから、ものすごく面白い人たちが集まっていて、毎日が楽しくて仕方がありませんでした。その頃、私、就職活動をしていたんですが、なかなかうまくいかなくって…。もうそろそろ家賃も払えないんじゃないかと困っていたら、そのシェアハウスのオーナーが「じゃあ、ここでバイトしたらいいじゃない」といってくれて、それから住民兼バイトって立場で運営に関わることになりました。旦那とはそこで知り合いました。まあ、彼がお客さんとして利用していたんで仲良くなって、子供と結婚が同時進行したって感じですね(笑)。

――新婚のときって夫婦だけで住みたいって思わないのですか?

一度、シェアハウスに住むと、もう普通の生活に戻れないんですよ、楽し過ぎて(笑)。結婚したからって、そういった感覚を規制する必要あるのかなって、旦那さんには、シェアハウスで生活ができないなら結婚しませんって(笑)、条件を付けたくらいですから。子どもにとっても、こういう暮らしのほうが良いのではないかって、漠然と考えていたんですね。ただ、いきなりやるのはさすがに怖いので、ちょっと実験してみたんですよ。マンションで暮らしているときに、私の友達にルームメイトになってもらったり、泊まりにきてもらったりして、少しずつ慣らしていって、娘も大丈夫そうだなと思ったので、このMiraieを作ることにしました。そこはちゃんと段階を踏みましたね。

――民泊やワークショップをはじめたきっかけは?

シェアハウスをはじめて、しばらく経ってから旦那さんが民泊もやってみようと言い出しました。それまではちょっとした知り合いを中心にシェアしてもらっていたので、知らない人が泊まりにくるのは少し不安だったのですが、最初に利用してくれた台湾の人と仲良くなれて、大丈夫だと思ってチャレンジすることにしました。ワークショップを始めたきっかけは、共有スペースの使い方を考えるうえで、もっと私たち家族が楽しめたり、学べるような場所にしたいなって思ったのですね。当時、娘は2歳になっていて、普通だったらお稽古ごととかを始めますけれど、ここを利用してくれたシェアメイトが「小さなころから音楽やアートに触れるのが一番いいね」って言ってくれて、これだと思ったのですね。すぐに、色々なアーティストに、この場所でワークショップとか新しい試みをやりませんかと交渉して、だんだん近所の子どもたちに開放し、地域を巻きこんで拡大していったのです。

――最初は娘さんのために始めたことがどんどん大きくなったイメージですね。

そうですね。でも、確かに最初は娘のために始めたのですが、自分もどんどん楽しくなってきますよね。アーティストから影響を受けると、物事を見る視点が変わってくるし、自分の中に発見した新しい可能性をどんどん掘っていくのも面白い。自分の中に眠っていた、本来あるべき意味のようなものを教えてもらったというか、カギを開けられちゃったって感じです。

――Tadakuをはじめたのは?

Tadakuをはじめたきっかけは、まずは自分自身が教わりに行ってその楽しさを知ってしまったからですね。毎年、クリスマスをどう過ごすかって悩むじゃないですか。自国の文化じゃないし、でも家族のために楽しい時間にしたいし。そんなときにデンマークのクリスマスが素敵だってことがわかって、お料理を学ぼうと思ったのですね、それがTadakuを利用したきっかけ。デンマークのお菓子作りを学んで、これは素晴らしい!と、それから毎年、娘と一緒に作るようになったのです。Tadakuに参加してから半年後くらいに、ある台湾料理の専門家と話していて、自国の食文化なのに知らないことがいっぱいある、日本の文化と関連する部分があることを知って、これも娘に伝えたい!って(笑)。色々と勉強をするうちに、他の人にも伝えたいと思いはじめて、そのイキオイで料理教室をはじめました。

――やっぱり、まずは家族なんですね。でもそれを実行するパワーがハンパない!

自分が好きなことだからできるし、やると決めたら簡単にはあきらめない。中途半端が嫌いなんですよね、ゼロかイチ。収益のことなんてほとんど考えていませんよ。そっちを先に考えるとうまくいかないような気がするんです。まず、自分たちが楽しいと思えることをやって、それをしっかり運営して、楽しさを伝えるから人が集まってくるし、協力してくれる人が現れる。その順番が逆になったら、なんか意味がないと思うし、たぶん収益もあがらないですよ。お金ってあったらいいし、なかったらそれでいい、って視点で捉えていたほうがいいと思うんですよね。
もちろん、イベントを準備する費用は必要です。でもイベントで収益をあげるつもりはなくって、それはコミュニケーションの場だし、娘の教育費とか家族のレジャー費だって考えるようにしています。その代わり、うちは旅行とか贅沢はしていません。そもそも常にここには人がいますから、あまり出かけることはできないけれども、満たされているんですよ、心が。色々な人に会って刺激を受けて、学んで、自分の内面が充実して満足しているから、物欲もなくなる。娘もすっごく成長しているし、周囲の人に感謝する気持ちが育まれているような気がします。

――確かに良いことづくめですね。でも、家族だけですごしたいって思うことはないのですか?

あまり考えていないですね(笑)。共有スペースで普通にみんなと話しているほうが楽しいですよ。家族だけだと喧嘩になるようなことも、ルームメイトがいるから空気が和らいだり、「そう思うよね」って同調してくれて味方になってくれたり(笑)。プライベートな時間が欲しければ自分の部屋に避難すればいいので、それほど困ってはいませんね。それよりも楽しいことばかりがありますよ。民泊では色々な国の人との出会いがあって、世界中に家族がいるような感覚になるし、Tadukuは自国の文化を見直すきっかえにもなったし、それを娘にしっかり伝えることができるし、何よりも料理上手になってレパートリーも増えました。

――今後はどのようなことにチャレンジしたいですか?

基本のベースは変わらないけれど、子供の成長を見ながら、何かそのタイミングでできる、最適なものはないかと考えていければと思います。やっぱり2歳の時から娘と一緒に色々なことにチャレンジしてきたので、このままいけるところまで続けていきたいですね。あとは、こういった教育スタイルがあるのだってことを発信して、共感を持ってくれる人が増えたらいいかなと思います。さらに自分たちの活動が認められて、民泊やシェアハウスの価値がもっと多くの人に伝わればいいなとも思います。このMiraieを見て、遊びに来てもらって、本来のシェアリングの魅力を伝えたいと思います。

――最後に、シェアハウスや民泊、Tadakuでホストをやってみたいと考えている人に向けてメッセージをお願いします。

自分の気持ちもそうだし、周囲の人にも素直になること、そしてどういう思いで、自分はこういうことを始めたのか?という、ベースの部分はぶれないようにしたほうがいいですね。民泊の場合、日本のホストがどうやって地域と良い関係を作っていけばいいのか?そこを躊躇して踏み出すことができないという話を聞くのですが、私は素直に話すしかないと思うのです。周囲の方に、楽しくやっていますよ、こういう良さがありますよって伝える。素直になると、お互いが求めていることがわかるし誤解も解けると思います。お互いが求めているところを繋いでいけば、周りの方も理解してくれると思うのです。例えば、地域のお店が求めているようなイベントを企画すれば喜んでくれるし、反対はされません。両方が楽しいと感じる方法をみつけていけば、どんどん楽しいことが広がってくると思うし、誤解も消えて、応援してくれる人も増えてきます。