大手外食産業に30年間勤務し、包丁の研ぎ方などを従業員に指導していた豊住さん。定年後に偶然出会った学びのシェアサイト「ストアカ」をきっかけに、4年間で受講者数は延べ1000人、今では数ヵ月先まで予約が埋まる“包丁研ぎの人気先生”に。そんな「ストアカ」で定年後の“生きがい”を見つけたという豊住さんにお話を伺いました。「何歳になっても何かを学んだり、人に喜ばれたいと思う気持ちがあれば、老ける暇なんてありません」と言う言葉が印象的でした。

__ストアカで先生をはじめたきかっけを教えてください

定年後にTVでストアカのカメラの講座を見て、趣味として習い始めたのがストアカとの出会いでした。そこから、先生になるためのワークショップに参加して、自分でも何かできることはないかと考えていたときに、町内会の仕出しで奥様たちが切れない包丁を使って料理をしていたので僕が研いであげたんです。そしたらすごく喜ばれましてね。「一般の主婦の方たちはこんなに切れない包丁で料理をしているのか。だったら私レベルの包丁研ぎのスキルでも喜んでもらえるかもしれない」と思い、長年仕事のひとつであった包丁研ぎの講座をやってみることにしたんです。

__ストアカをはじめて大変だったことはありますか?

最初から軌道に乗ったわけではありませんでしたよ。自宅でやるのに始めは抵抗があったので、別の場所を借りたのですが、人が集まらなかったり。あとは価格を1500円と安くしていたら、キャンセルされやすくなってしまったり、「何か買わされるんじゃないか」と不安に思われたりすると知って。口コミや利用者の声を聞きながら、今の自宅で最大4名で3000円に落ち着きました。高すぎてもダメですが安すぎてもダメ。ちょうどいい価格設定は大事だなと思いましたね。それと、自宅でやれないと意味がないので、持ち帰るテキストを用意したり、動画撮影もOKとするようにしました。

__どういった方が受講されていますか?

僕の包丁研ぎはその道のプロではないので、あくまで「家庭用」と掲げています。ですので、講座を始める前は主婦の方がほとんどだろうなと思っていたんですが、実際は男性やお仕事で包丁を使う方もかなり多く、驚きましたね。男性は料理をする人や釣りが趣味で自分で魚をさばきたいという人、奥さんに行ってきてと言われて来る人(笑)。
仕事で使われる方は、給食センターや食肉センターなどで働く人。僕も外食産業で長年仕事をしていたのでよく分かるんですが、社員は店舗を増やすことやお金の管理で忙しくて、なかなか現場の包丁まで頭が回らないんですよね。「本部の方たちに文句を言ってもなかなか改善されないから、包丁くらい自分で研げるようになった方が早い」というのが受講の理由だったりします。

__やってよかったなと思う瞬間はどんなときですか?

知らないおじさんの家に来るわけですから、みなさん最初はドキドキ不安そうな顔をしていらっしゃいます。でも、自分で包丁を研いで、切れ味の変化を体験した瞬間、顔がぱっと明るく変わるんです。包丁を研ぎたい、切りたいと思う顔になる。帰りにはニコニコです。それがもう嬉しくてね。この年でも人に喜んでもらえることがあると、日々の生きがいになるし、講座を通じてFacebookの友人も増えましたし、忙しくて老け込む暇なんてありません(笑)。あとは、講座を受けたあとに「包丁を大切にしたいと思うようになりました」と言ってくれること。昔は台所に研石があってお母さんが研いでいたでしょう。でも今は安価な包丁も出回ってほとんど研ぐ人もいないし、それを伝承することもしない。だから、若い人たちに包丁研ぎから物を大切にする気持ちを少しでも感じてもらえたらとても嬉しいですね。

__講座を行う上で心掛けていることは?

第一は刃物を使うので安全であること。あとはその人のレベルに合わせた指導をしていくこと。簡単すぎても満足度を得られませんが、難しくしすぎても自宅で再現できず満足度も低くなってしまうので、リアルな目線で満足と不満足の境目を見極めるのを大事にしています。これはビジネスでも言えることですよね。たとえば外食産業だとお客様の満足度はテーブルのアンケートなんかよりも、「ごちそうさま!」を帰り際に何人言ってもらえるかの方がリアルだったりしますから。そのあたりも面白いなと思っています。
あとは包丁も研石も販売や宣伝はしません。「アマゾンで買えますよ」と言っています(笑)。
100均の包丁も8000円の包丁も研ぎ方は一緒なので、そのスキルを持って喜んで帰ってもらえたらそれでいいんです。

実際に持参した包丁。研ぐ前はこちら。スポンジで洗っても汚れが取れません。この汚れが食中毒の原因になることもあると知って一同唖然…。

研ぐ前にまずは包丁の汚れをキレイにします。シャンパンのコルクに専用のクレンザーを付けて磨くとキレイになるそう!

研石はこの20×7cmがベストだそう。アマゾンで購入できますとのこと。講座では砥石や包丁を売りつけられることはありません。

包丁を研ぎ始めると豊住さんの表情も真剣に!

研ぐ角度や回数を教わりながら自分でも研いでいきます。無心になれていい時間でした。

砥石やタオルを駆使して研ぐことわずか数分!研ぎ終わった包丁がこちら。輝きと鋭さが全然違います!

トマトのみじん切りやスライスもこの通り!

ちなみに、100円の包丁もスパッと切れるように。切れ味の違いを体感してみて思うのは、包丁は重さで切るということ。100円だとやはり軽い印象でした。

__どのくらいのペースで働いていますか?

今は一年の半分を夫婦でマレーシアで過ごしているので、日本にいるのは春と秋の3ヵ月づつの計半年間。講座をやるのは基本そのときだけです。定年後の趣味程度にゆるくやろうと思っていたのですが、待ってくださる人がいるとお断りするのも申し訳なくて、今は帰国しているときは週3日、4コマ程度入れています。奥さんも家に人が来ると生活にハリが出るみたいで、応援してくれています。

__これからストアカで先生を始めてみよという人にアドバイスを!

僕の好きな言葉で“運と縁を生かすのは自分次第”というのがあります。何歳になったって何かを学んだり、人に必要とされると生活にハリが出ますから。特に男の人は長年働いていたわけですから、定年して社会との接点がなくなると気力がなく一気に老け込む人が多い。もう体の細胞がビジネス向きになってしまっているんだと思います。だから、何でもいいから人に会って話を聞いて、問題意識を持つこと。そうしたらきっと何か出来ることがあると思うんです。ハローワークなどに行って紹介される求人は限られたもの。それならば、ストアカを利用し、様々な講座を受講したり自身が先生になったりして、第二の人生の生きがいを見つけてみてください!

この記事の登場人物
  • 豊住久さん
    大手D外食産業に定年まで勤務し、包丁の研ぎ方を従業員に指導。その際に習得した「包丁研ぎ技術の肝」を、切れ味でお困りの初心者の方々に伝授したいと思いストアカにて開講。
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