――どうしてミニマリストに?

私、物心ついたときから、片づけが苦手な人でした。私の母は戦後間もない生まれで、“使えるものを捨てるのはもったいない”という考え方の持ち主。家の中にモノがあふれている状態が当たり前という環境で育ってきたのですね。

ぬるい温度の中で22年間を過ごしてきて、はじめて実家を出て結婚したら、モノが多くて片づけられないというだけで、不都合なことがたくさん出てきました。家事も仕事も家族関係にも悪影響が出てきます。家って安らぐ場所なのに、そこが片づいていないと、みんな疲れてしまいますよね。このままではまずい…というところまで追い込まれて、そこでようやく“モノをコントロールする側の人間”になろうと思い立って、モノを手放し始めました。

いわゆる“汚部屋”の状態から、一般的な“綺麗な部屋”になるまでは、単純にゴミを捨てればそこに行き着きました。そうなると、もう少し突き詰めて、おしゃれな家にしようと思うようになって、今度は思い出のモノとか、使った記憶のない過去のモノを捨て始めるようになりました。

それで“シンプリスト”みたいなところまでたどり着くと、どんどん片づけがおもしろく感じるようになってきます。でも“収納を工夫する”みたいな、ちょっと複雑なことをしているということは、まだまだモノが多いんだなと思って、もっと突き詰めていこうって思い始めるのですね。

その頃には少しずつ、執筆のお仕事もいただいていて、ブログにも片づけのことを書き始めていました。そんなタイミングで、世間に“ミニマリスト”という言葉があることを知って、そこまでいってみようと、目標を見つけたんです。でも、“シンプリスト”から“ミニマリスト”になるまでの過程が難しくて、すっごくハードルが高い。

もっともっと簡素化していって、他の人の暮らしと比べたりなんかしないで、“自分たちの家族が必要なものだけにしよう”と決心したら、一気にモノが減りました。それからも、どんどん考え方も変わっていって、少しずつアップデートされてきます。今は、極限までモノを減らし過ぎた限界点から、“適正量”みたいなところに戻して、“自分サイズの暮らし”を意識するようになっています。

――片付けができない人って、一方でモノを買いすぎちゃうっていう側面を持っていたりしませんか?

考え方がぬるい人だったんですよ、私。買うときの考えが甘い。“あったら着るよね”とか、“あったら食べるよね”“あったら便利だよね”みたいな調子で、先々をイメージする力が低すぎたんです。ミニマリストへ近づいていく過程で、“それを使ってどう感じるか?”“どういう未来があるのか?”までイメージしたうえで、それで納得できたら買うように考え方を変えました。

でも、捨てるときは逆に考えてはいけません。考え始めて、感情が入らないうちに、直感的に“いらないかも”と思った瞬間に直感的にきっぱり捨てないと。思い出に浸って、捨てないでいると、結局、どんどんモノが貯まっていってしまうのですね。とにかく、買うときは慎重に、捨てるときは時間をおかないっていうのが鉄則。昔は逆だったんですよ。

――マインドを変えるのって難しくなかったですか?

人って、困らないと行動に移せないですよね。特に私は、そういう傾向が強いんです。落ち込んだ時に、本当に変わりたい!と思って、色々な人の情報を見るんですよ。本を買ったり、ブログをみたり。憧れの人を参考にする。でも、“すごいな”と思うことは真似しても、一度だって成功したことがなかったんですね。それで、“できそうだな”と思うところだけをやっていました。“すごいな”に行き着くには、結局、“できそう”を重ねていくしかありません。気づいたら、“すごいな”というゴールに手が届くようになっていました。少しずつなんで、すごく時間がかかるんです。でも地道に積み重ねることが、結果、一番早いのではないかなと思うのです。

――その落ち込みの落差というか、反動力がポイントになるんですかね?

片付けられないっていう状態が究極まで進むと、生活の中で大切な他の要素に悪影響を及ぼすんですよ。モノが多いってことは、お金の管理ができないってことで、お金が足りないと医療費も渋るようになってしまいます。そうすると健康にも悪影響を及ぼしてしまいます。

モノを減らしていったら、“そんなにお金も使わないで良いかな”って考えるようになって、そうなるとお金も残っていくから、どう使うか?って考えるようになりますよね。モノは必要ないから買わない。そこで私はスポーツジムに通ったりして、どんどん健康になっていきました。底辺にいた自分を全体的に引きあげていってくれた感覚です。

――なるほど!“ミニマリスト”って聞くと、何か“哲学っぽい”って思っていたのですけれど、阪口さん場合、ちょっと違いますね。すごく現実的だし、身近なものに感じます。

ちょっと宗教的な感覚になる側面はありますよ(笑)。モノを減らすとき、ちょっぴりハイになって、どんどん幸せになっていく気がしますから。捨てるのってけっこう、自分の中でマイナスな行為だったりするではないですか。捨てたことがない人にとっては、“これって良くない行為では?”みたいな罪悪感を持ちがち。だから、脳が何か小さな良いことを見つけようとするんですね。

でも、本質はそこにあるわけではない。思想ではなくて、家計や健康といったリアルな生活要素に跳ね返ってくる行為です。

――ブログのお話も聞かせてください。230万PVって、かなりインパクトが大きいですが、自己分析するに、どうしてここまで反響が大きいのか?その要因をどのようにお考えですか。

一度も自己分析とかしたことなくって、今でもわからないんですよね。この間も、“私の何がよくて人が来ているのだ?”って話になったときに、ブログ運営会社の担当さんが、「阪口さんだからじゃない?」って(笑)。それが結論になりました。

ブログには、本当に当たり前のことしか書いていないんですよ。いつも“あなたには、あなたのやり方があるじゃない”というニュアンスで終わっています。アドバイスなんかほとんどしていない。“それでいいじゃない”と、背中を押しているのかもしれませんね。

――確かに「〇〇すべき」って書いてあると、それってハードル高いわーってなって、もう読む気がしなくなったりしますもんね。

“簡単ですよ”といわれることが、私にはぜんぜん簡単ではないんですよ。家計簿もそうだし、ダイエットもそう。3食後に飲みましょうという薬さえも続きません。けっこうポンコツなんですよ(笑)。だから、できない人の気持ちが分かるし、“みんな私よりマシやで”って声をかけたくなっちゃうんです。

――TABICAを始めたきっかけを教えてください。

私、少し前から、各地を回ってセミナーをしていたんですね。自慢できることが欲しくて、47都道府県を回ろう、ブログを読んでくれる読者に会いに行こうと思い立ちました。それで、費用が発生するセミナーって大それたものではなく、47都道府県を回りたいという私の夢を叶えてくれるクラウド・ファンディングのような感覚で募って、賛同者が集まってくれました。

それをTABICAを使って、予約管理や、お金の事前入金などの機能が非常にありがたいって思いました。けっこう、名簿の管理とか苦手だったので…。そしてもうひとつ、私、書き物しているから、ホストとしてセミナー体験を提供するだけでなく、ゲスト側の立場で体験コラムも書きますよと言ったら、どうぞどうぞとなって、それで今に至るって感じですね。

“モノより体験”という私の考えとTABICAのサービスがマッチしたんですね。モノを減らして、時間をたくさん作って、やりたいことをやっているという私の生き方に、TABICAの代表のテッセー君も共感してくれました。なんか、モノを減らしたら、私の周りのすべてが動き始めた感覚です。

――そもそも、ブログの読者=ファンに直接会うことに強いこだわりを持っているのはなぜなんですか。

私のことを好きな人がどんな人なのか見たいだけというか、私のことが好きな人が好きなんですよ。お金を出して私に会いに来てくれるって、完全に私のことを好きな人ですよね。そんな人の顔がみたいんですよ。会ってみると、面白いことにみんなゆるい(笑)。類友だなって思います。

一応『整えゼミ』っていう名目でやっていますが、片付けられない人ばかりではなく、悩んでいない人もくる。それで、お菓子食べながらコーヒー飲んで、ゆるく2時間くらいお話をします。全員としゃべって、「私もそういうときあったわ」とか「それでいいんじゃない」って言い合ったりして。直接会って、話をしていると、私が相手を好きになって、さらに向こうももっと私を好きになってくれる。そして私もさらにさらに好きになるみたいな、そんな好循環を生んでいます。

――そういった関係性から生まれる価値って?

うーん。それで自分の活動にメリットが生まれるとか、そういうのって全然なくって、本当に“うれしい”とか、“楽しい”っていう感情しかありません。だって、普通の主婦がブロガーになって、それがきっかけになって色々な経験ができるようになったじゃないですか。TABICAにも出会えたし。

テッセー君に引っ張っていってもらって、鹿児島で仕事したときにも思ったんですが、“この間まで普通の主婦だったのに、ここで私は何しているんだろう?”って。ファンは私の日常で、TABICAは非日常。ごく普通に、何も考えないで生きていたら体験できなかったことばかりさせてくれる。そうしたら欲がでてくるんですよね。

――どんな欲ですか?

もっと色々なことを知りたいとか、体験したいって思うようになります。やりたいこと言っていいのかな?って気分になって、この間、「留学したい」と口に出したら、テッセー君が「インフルエンサーを招待している留学制度ありますよ」って紹介してくれて、私、秒で応募しました。この7月から息子と一緒に行ってきます。自分のやりたいことを口にしたら、テッセー君が覚えていてくれて、つながっていって実現した。これってすごいことですよね。

すごいといえば、TABICAだってすごいです。普通に生きていたらやらなかったことに、ちょっと軽い気持ちで参加できて、そこから派生するし、広がるし、深くなることもあると思うんです。追求してお稽古ごとにしたり、ライフワークになったりとか。TABICAから来たメールをそのままごみ箱に入れていたら、こういった素晴らしい世界があることを知れなかったかと思うと…本当に良かったって思います。

体験って財産、もっといえば知識と体験は財産かな。体験すると、考えることが多くなる。普段使わない脳を使うんですよね。だから、考え方がものすごく柔らかくなる。そして自分の人生に彩りを添える。そういうものを手に入れるのって案外、簡単なんだって。

私はTABICAにゲスト、ホスト両方の立場から関わっているのですけれど、ゲストとしては、もっと色々な人の話を聞こう、私の人生にまったく関係ないことをしていこうって思うし、ホストとしては、もっと良い会にしたい、もっと面白いセミナーにしていきたいと思っています。あと、コラムでテッセー君をおもしろくいじっていきたいし(笑)。

――最後に、阪口さんの今後の活動についてお聞かせください。

今後ですか…。正直言って、あまり考えていないですね(笑)。もう明日とか、一週間先くらいまでしか見えていません。でも、ひとつ確実に言えることは、楽しそうなこと、できそうなことをやっていきたいってことですかね。

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