DeNAが9月にスタートした、個人間カーシェアサービス「Anyca(エニカ)」。同社が将来の中核事業と位置づけるオートモーティブ領域の事業のひとつです。スマートフォンやタブレットの専用アプリから利用でき、1日単位での保険加入や365日無休のカスタマーサポート、すべてクレジットカードで決済できるなど利便性が追求されています。今回、Anycaクルマオーナー3名にお話を聞きました。

「車、怖いんです」 だからこそAnycaを活用

一人目は、国産のスポーツカー「MAZDA RX-7」に乗る金城さん。千葉在住ながらも、他県からの利用者もいるとのこと。もともと別のカーシェアリングサービスに登録して様子を見ていたものの、あまり反応がなかったそう。そんなときに声がけを受け、Anycaを使いはじめました。

金城さんが貸し出す「MAZDA RX-7」

金城さんがシェアする「MAZDA RX-7」

二人目は2人乗りのカブリオ(スマート)に乗る山田さん。コンパクトなカブリオが好きな山田さんは、その良さを知る人が増えてほしいとの思いから、Anycaを利用するようになりました。Anycaの存在はプレスリリースが出たときに知ったそうです。

三人目は外資系企業に務める福岡さん。Audi S5を保有し、Anycaでもトップクラスのシェア回数を誇ります。それでも本人曰く「実は車はあまり好きではない」そうで、だからこそ頻繁にシェアしており、「Anycaがあることで助かっている」といいます。

自分では運転しないもののトップクラスのシェアを記録する福岡さん

自分では運転しないもののトップクラスのシェアを記録する福岡さん

さらには「車、怖いんです」と福岡さん。自分の車でも助手席に乗ることが多いのだとか。それなのに車を購入したのは、ノルマが厳しい会社のため自分へのプレッシャーをかける意味もありました。当初は自転車を載せられる実用性の高い車にしようとしていたものの、先輩に「実用性のある車はダメ」と言われ、いまの車を選んだそうです。

「こういう経緯なので、車を欲しくて買ったわけではありませんでした。実際、車を買ってから、1年半でたった3000kmしか走っていません。それでも今年9月からAnycaでシェアしはじめたことで、走行距離が1万kmにまで伸びました」

3ヵ月でシェア22回、どんなことに気を配る?

これまでのシェア回数は、福岡さんが22回、金城さんが7回、山田さんが6回。福岡さんは「家の駐車場が狭いですが、たくさんシェアしたことで、車庫入れがうまくなりました。今年中に30回を目指していきたいです」と意気込みます。

金城さんは使う中でひとつ変化があったといいます。「もともとシェアしようと思って使い始めたのですが、本当に魅力的な車が並んでいるので、見ているうちに利用してみたくなりました」。山田さんはシェアするだけでなく、Anyca経由で一度利用したことがあるそうです。

山田さんは「コンパクトなカブリオの良さを広めたい」という

山田さんは「コンパクトなカブリオの良さを広めたい」という

「当初から『BMVを利用してみたい』とか考えていたんですが、実用性の面から利用することになりました。私は通訳の仕事をしているのですが、この前スペイン人が2人来て、長野の松本、それも上高地に行きたいと言われました。

自分の車だと3人乗れないのでAnycaで探したところ、長野のオーナーさんが見つかりました。自分の車でオーナーさんの自宅まで行き、乗り換え、無事に観光できました。実際に乗ってみることで、どういう部分で説明があったら助かるのかなど、ユーザー側の気持ちになれたのはいい経験でした」

山田さんがシェアする「SMART FORTWO CABRIO」

山田さんがシェアする「SMART FORTWO CABRIO」

シェアのリクエストをほとんど承認する――。福岡さんは24回のリクエストのうち、22回OKしています。シェアする側の工夫としては、返す時間をフレキシブルにしたり、近くに住む人であれば送っていったり、自分のページのコメントをこまめに変えたり、こちらから交渉をもちかけたり……積極的にコミュニケーションをとっているそうです。

金城さんは多少の整備であれば自分でこなし、できるだけいい状態でシェアするよう心がけているとのこと。「カーシェアをはじめる前に、レンタカーを何度か利用したことがあったんです。でも、利用した車の状態が悪くて……。自分は程度が悪いままシェアするのは嫌だと思い、整備をしています」。

料金は1日1万8千円、価格調整やキャンペーンも

トップクラスのシェア回数を誇り、すでに何人かのリピーターを抱える福岡さんには、ちょっとした困ったことがあるそうです。人気車種のため車好きの方が利用することが多く、車に詳しくない福岡さんは感想やコメントをもらっても、「そうですね」「ありがとうございます」と一言くらいしか返事ができないこと。

だからこそ、年齢が近い利用者たちの「めっちゃよかったです」という気軽な感想や「代わりにもっと乗ります」という言葉が心強いのだとか。また、リピーターではないですが、「試乗」の需要も根強くあるようです。

福岡さんがシェアする「AUDI S5」

福岡さんがシェアする「AUDI S5」

山田さんも近所に一人のリピーターがいます。「夜中に利用して朝までに返します、みたいなゆるい感じで、家のポストに鍵を入れてもらうことがあります。早くスマートキーができると、家にいなくてもシェアすることができ、もっと利用の幅が広がると思うので楽しみです」。

カーシェアリングで気になることのひとつが価格です。Anycaではオーナーが価格を自由に決めることができます(DeNAが手数料10%、オーナーが90%を受け取るモデル)。たとえば福岡さんは12時間で9,600円、1日で1万2,000円という価格設定でシェアしています。

「住んでいる場所が六本木、乃木坂、青山あたりへのアクセスがいいので、利用しやすいのかもしれません」。値段もこまめに調整し、シェア回数を増やしていきました。金城さんも当初、「○○日までに利用してくれた人には安くします」といったキャンペーンのような取り組みを試していたそうです。

半径5km以内だけでもかなりの需要がある

ところで、カーシェアリングにトラブルはあるのでしょうか。「狭い駐車場なので、壁と接近してヒヤヒヤしたことはあります」(福岡さん)、「(事前に連絡をいただいたうえで)返却の時間が遅れることくらい」(金城さん)、「アルファ ロメオ ミトで来られたとき、うちの青空駐車場に停めて置いたままで大丈夫かなと思ったことはあります」(山田さん)。

千葉在住でAnycaを活用している金城さん

千葉在住でAnycaを活用している金城さん

千葉在住の金城さんも青空駐車場に駐車してもらっているとのこと。「利用者には埼玉や神奈川から来る人もいて――峠を攻めないでくださいとは伝えていますが――山のほうに行く人も多いみたいです。あとは、この車ならどに行くのがおすすめなのか、よく聞かれますね。自分の車にあったプランを考えておくことも大切なのかもしれません」。

福岡さんは、車に乗らないけれどトップのシェア回数を記録し、山田さんは、自分の住む場所から半径5km以内くらいの人しか利用していないそうで、ちゃんと需要があることを実感できているといいます。

お小遣い程度に考えている金城さんは、シェアしているのがセカンドカーのため、Anycaを介して生まれた収入を維持費に回しているとのこと。クルマオーナー3名の話を聞くなかで、それぞれモチベーションの強弱や考え方が異なるところが興味深かったです。