共働き子育て世代、特にワーママにとって、キャリアアップと家事・育児の両立が思い通りにいかず追い詰められる方も多いのではないだろうか? 家事代行サービスの価格を見ると気軽に頼めないこともしばしば。そんな中、“1時間1500円からの家事代行マッチングサービス”を謳う『タスカジ』のこの価格破壊的な設定はどうやって担保されているのか?大いに気になるところ。

大まかな仕組みをサイトで見ていくと、「家事を仕事にしたい個人」と「家事をお願いしたい個人」をネット上でつなぐマッチングサイトであることが判明。従来の家事代行サービスと何が違うのか? 個人間取引であることのメリットとは何か? 『タスカジ』を運営するブランニュウスタイルの代表・和田幸子さんに、起業の経緯から、シェアという視点での事業の展望まで、お話を伺った。

“仕事もプライベートも両立させてキャリアアップを楽しみたい”

ーーまず、和田さんが『タスカジ』を立ち上げた具体的な経緯を教えてください。

元々、私は某総合IT企業でフルタイムで働いていました。子供が生まれてからも短時間勤務ではなく、フルタイムで働いて、仕事もプライベートも両立させてキャリアアップを楽しみたかったんです。子育ては夫と分担できていたのですが、家事の担い手が家の中にいないという問題に直面して、ストレスもすごくかかって。会社の同期を見ていても、仕事と家事・育児が両立できずにキャリアアップを諦めているのを見ていたんですね。

そこで、家事のアウトソーシングを考えたのですが、一般的な家事代行サービスって3時間頼むだけで1万円ぐらいかかるし、ランニングコストになってくるととても利用できる価格じゃない。そんな時、外国人の知り合いに「外国では個人間契約が盛んでネットで見つけているんだよ」って話を聞いて。早速チャレンジしたら、低コストな上に、すごく良いハウスキーパーさんに出会えたんですよ。これはぜひみんなにシェアしたいと思ったのがきっかけですね。

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▲タスカジ サイトより

ーー実際にはどんな方法で出会ったんですか?

それが大変でした。募集したら10人ぐらいの応募が来たので面接したのですが、当時はサラリーマンなので土日全部潰して会っていましたね。でも、会って話していると、皆さんやる気もあるし、良い人に見えてしまって。実際はどうなのか、何を基準に決めたら良いのかが、よく分かりませんでした。その時、前に雇っていた人の推薦状が見られたら、安心して頼めるのでは?と思ったんです。そこから、『タスカジ』の中にも「レビュー」が中心的な機能として組み込まれているんです。

ーー『タスカジ』の立ち上げ当初は、どんな人の応募が多かったのですか?

起業する前に個人で探した時は、外国人応募者には「働きたい」という気持ちを強く持ってる人が多いなと感じました。外国人のハウスキーパーだと言葉は通じないし、文化の違いなど、一見デメリットであるかのように思えるじゃないですか? でも実際、自分がオーダーした時に、英語が喋れるとか、異国の文化に触れられることがむしろ付加価値だと思えたんですね。そこから、お互いにそういう点を付加価値だと感じられる人をマッチングすることによって、まずサービスを立ち上げたらどうか? と思ったんです。

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▲タスカジ 求人・応募ページ

ーーCtoCのメリットでもありますね。

そうですね。CtoCを選んだのは、どうやったら普通の共働き家庭が賄える価格で成立させるか? ということと、ユーザー目線で、業者経由より直接契約の方が自分のニーズ通りにカスタマイズできる、という点でした。「換気扇が汚いので、お願いできますか?」って言っても業者だと「それはプランに入ってません」となってしまいます。個人であればカスタマイズしてくれるのが、CtoCの価値だなと思います。

ーー『タスカジ』の強みは先ほどお話しに出たユーザー・レビューだと思いますが、立ち上げ当初のデータの蓄積はどのようにしたのですか?

1回目のレビューは必ず入るように、テストセンターで3時間の実地訓練テストを受けてもらいます。大枠は掃除・洗濯・料理・買い物とチャイルドケアですが、ハウスキーパー自身が「自分はこれができる」という得意な分野を指定するんですね。実際のユーザーの家に近いシチュエーションで、臨機応変に対応できるか、痒いところに手が届くサービスができているかをチェックした上で、なるべく得意なところを評価して、それを一つ目のレビューに反映しています。

ーー様々なユーザーがいると思うのですが、一般的な利用内容はどんな感じですか?

一番多いのは掃除で、その次は料理や作り置きが多いです。最近は日本人の”タスカジさん”が増えて来ていて、日本人と外国人が半々ぐらいですね。中でも日本人の栄養士さんや調理師さんによる作り置きの人気はすごく高いです。最初は「掃除はできないけど、料理はすごくできます」という栄養士さんの応募があって、それだと仕事がないかもしれないと伝えてたんですが、登録してもらったらその人に作り置きの仕事が殺到したんです。また、最近ではタイの方が応募してきて、最初は日本語も英語も喋れないのでどうなっちゃうかな? と思ったんですけど、「家でタイ料理が食べたい」というオーダーが殺到しているなんてケースもあります。そうしたオーダーを見ていると、私たちが「サービスってこういうものだ」と規定するのではなくて、サービスやスキルを提供したい人がいて、それを欲しい人がいる。私たちはその出会いの場を提供することで価値提供しているので、働き手の多様性は大切だと実感しています。むしろユーザーの選択肢が多くなるように、ハウスキーパーにもいろんな人に来てもらいたい。日本人でも外国人でも、女性でも男性でも、若くても年配の方でもいいと思っているんです。

ーーまさに個人間だからこそ見えてくるニーズがあるんですね。ちなみに1時間1500円からという利用料はどういう仕組みで成立しているのですか?

ビジネスモデルとしては、プラットフォーム利用料として手数料を20%いただく形です。『メルカリ』のシステムに似ていて、『メルカリ』は売りたいものを登録して売れるとお金が入るプラットフォームですが、『タスカジ』は自分の空き時間を登録して、それを家事の仕事として売ることができるプラットフォームと考えてもらうとわかりやすいと思います。そこで私たちはプラットフォーム利用料として売り上げ金額の20%を頂戴している、という仕組みですね。

さらに、安いけれど高品質なサービスを受けられる仕組みとしても、「レビュー」によるフィードバックが機能しています。依頼者は定期的にお願いしたいと思っているので、「自分はもっとこうして欲しい」という内容を送る。そうすると依頼された側は自分のどこが評価されているのか・いないのかがわかるので、そこを改善してサービスを提供する。評価されるとやる気も出るし、改善した方がいいポイントも教えてもらえるので、具体的にスキルアップできるんです。ハウスキーパーの中には「ついつい勉強しちゃうんです」という人もいて、成長欲求も出ているんですね。すると依頼者もサービスの向上に満足するので、いい評価をつけるし、同じ人に依頼し続けたくなる、そういう良い循環でサービスの質も向上する仕組みになっていると思います。

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▲タスカジ サイトトップページ

ーー働く意欲はあるけれど自分に何ができるのか? と感じている人と、仕事と家事・育児を両立したい人。どちらも社会に必要とされる存在でいたいという部分では根本は同じなのかもしれませんね。

そうなんです。私自身はどちらかというとワーキングマザーの立場から課題解決をしたいという想いを持って創業したのですが、サービスを開始してみると、実はタスカジさんとして働く主婦の方たちからも、ものすごく感謝されていて。家事というスキルは家の中ではあまり「ありがとう」と言われないし、女性ならやって当たり前のように思われて、どんなに頑張っても報われないような気持ちになるところがある。でもこの仕事をすることによって、依頼者から感謝の言葉がもらえるというのは大きいようです。そういう意味でもたくさんの方、世代も年齢も様々な方に働いていただきたいですね。

一方、依頼者側のメイン・ユーザーはやはり共働きの小さいお子さんがいる30代〜40代の女性がほとんどで、私が抱えていた課題と同じようなことを抱えていて、そこから脱却したいと思って利用している方が多いですね。

SNSでの投稿を見てみると、「自分の人生を輝かせたい」とか、そういうレベルではなくて、家事・育児と仕事を一人で抱え込んで追い詰められていた人が『タスカジ』を利用している印象です。というのも、まだ今の日本だとハウスキーピングや家事代行を頼むのは心理的なハードルも高いので、「あったらいいな」と気になっているけどまだ今一歩踏み出せない人が多いのが現状だと思っています。

ーー『タスカジ』のマッチングサービスを通じて、これからこういう社会になっていけばいいな、というビジョンなどはありますか?

主婦の方の家事スキルや、外国人の方の言語や異文化といった価値をシェアしていただく形で仕事ができる、ということをもっと提案していきたいですね。今は共働きの子育て世帯が主なターゲットですが、将来的にはシニア世帯なども含め、様々な家庭で我が家の家事のパートナーを見つていただけるようにしたいと思っています。例えば介護の手前の段階で、食事のサービスや、健康的に長生きするための食事を専門家に作ってもらうなど、そういうところにもニーズがあるのかもしれない。利用者側にとっての“ぴったり”の定義は人によって違うので、いろんなスキルとニーズをマッチングしていく、そういうことをやっていきたいし、その結果として新しいライフスタイルや、新しい家族のカタチを定義することができたらいいなと思いますね。

家事・育児で自分の時間がなくストレスを溜めているワーママと、働きたいけどやりがいがある仕事を見つけられない主婦や外国人、両者のニーズをマッチングさせ、カスタマイズしながら人を繋げている点が『タスカジ』の最大の魅力だと感じました。「核家族」だけでなく、様々なスキルを持った人の力をフェアな関係でチームに巻き込みながら、「拡大家族」として幸せに生活する。昔ながらのご近所付き合いに代わる、 “時間”と“スキル”の「シェア」が、今後の社会において大きな課題解決の一つになるのではないでしょうか。

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