合言葉は「貸し会議室から球場まで」。

世の中に隠れた遊休スペースや利用時間外のスペースを“貸したい人”と“借りたい人”とにマッチングさせるシェアサービスが「スペースマーケット」だ。この「スペースマーケット」を有効活用し、将来の夢に一歩ずつ近づいているのが医療機器販売の会社に勤める石黒潤(いしぐろ・じゅん)さん。月1回のペースでスペースマーケットを通じて飲食店をレンタルし、自ら調理した魚料理をふるまう「石黒鮮魚店」をオープン。いつの日か魚料理の店を開きたい、という夢の予行練習を行っている。

今回はこのスペースマーケットの利便性、特徴について、“借りる側”の石黒さん本人と、スペースを“貸す側”である「ドードーの空」オーナーの松本誉子(まつもと・たかこ)さんにインタビュー。“貸したい人”“借りたい人”双方の見地からその魅力を掘り下げていく。

もっと本格的な環境で料理の腕を試してみたい。

石黒:料理は学生の頃から趣味のひとつ。アジの三枚おろしが得意でした。でも、「これが自分の特技なのかも」と意識したのは1年前。仲間うちで新潟旅行をしたときです。市場で買った魚を宿でさばかせてもらえる機会があり、そこでみんなに振舞ったところ、「美味しい! 美味しい!!」と喜んで食べてくれたんです。あ、魚をさばいて食べてもらうのって楽しい。これって自分の特技なのかも……と思ったのがキッカケです。

この旅行以降、時間を見つけてはツテを頼って知り合いの喫茶店のキッチンを借り、「石黒鮮魚店」という名で友人、知人に魚料理をふるまうことが石黒さんの趣味となり、将来の夢の萌芽となった。

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石黒:まだ具体的なスケジュールは組めていませんが、いつか本格的に魚料理の店を始めたいと考えるようになりました。でも、今はサラリーマンの身ということもあり、どこかで修行をするわけにもいきません。いきなり脱サラをして勝負をかけるのも無謀すぎます。かといって、知り合いの喫茶店はキッチンも小さく、調理器具も揃っていなかったこともあって不満に感じることも増えていきました。

「もっと本格的な環境で腕試しができないのか?」 そんなモヤモヤを抱えていた石黒さんが、たまたまネット検察で見つけたのがシェアサービス「スペースマーケット」だった。

石黒:「なんだこれ!? ざくざく場所を探せる! すごい!!」というのが第一印象。それと、場所を特定して探せるのも重宝しました。どうせやるなら学生時代を過ごした思い出の場所、三軒茶屋でやりたいなというのが頭にあり、予算的にも、立地的にも、設備的にも自分の理想通りの場所だったのが、ここ、「ドードーの空」でした。

レンタルスペースの提供で生まれる、予想外のメリットとは。

こうして、腕試しとしての理想的なレンタルスペース「ドードーの空」と出会った石黒さん。では、そのスペースを貸す側である「ドードーの空」オーナーの松本さんは、なぜスペースマーケットを利用したのだろうか?

松本:普段は朝の9時からモーニングを始めて12時からランチ、16時でクローズ、という営業スタイルです。私ひとりのキャパシティではそれが精一杯ということもあり、使っていない時間帯や休業日がかなりある状態でした。そこで、去年7月ぐらいから、お店の営業時間以外でレンタルスペースを始めることにしたんです。

当初はお店のホームページで告知をするだけ。当然、その情報はお店を利用したことがある人か近隣の人にしか届かず、レンタル利用はそれほど多くなかったという。

松本:やはりなかなか難しいな、と思っていた折、スペースマーケットさんから「掲載しませんか?」と声をかけいただきました。実際に掲載すると、どんどん問い合わせが来てしまってむしろ大変(笑)。1日に30件以上の問いあわせが来て目が回りそうになったこともありました。そこからは、スペースマーケットの方とも相談して、イメージがしやすいように店内写真をしっかり載せたり、細かな設備説明を掲載することで、問いあわせも落ち着いていきました。

スペースマーケットの利用開始から1年以上が経過した今、月平均で15件前後、多いときには25、6件のスペース利用があるほど賑わいをみせていると語る松本さん。そのことが、予想もしなかったメリットを生み出したという。

松本:定休日には1日に3件、朝、昼、晩とご利用いただくこともあります。おかげさまでスペース利用が好調で、アルバイトを雇う余裕が生まれました。人手が増えることで、お店そのものの営業時間を増やすことができたのは、当初は考えもしないことでした。

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貸す側のメリット、借りる側のメリット

松本:あともうひとつ、驚いたことがあります。それはお店がGoogle mapの目印になったこと。仮に月20回場所を貸し出すことで、貸した20人だけでなく、パーティ利用ならそのお客様も「ドードーの空」と検索してくれるので検索順位もかなり上がりました。ほかにもブログで紹介いただいたりと、本業の方で思わぬ宣伝効果がありましたね。

そしてもうひとつ、松本さんが強調したのが「人との出会い」だった。

松本:場所を貸し出すことで、こんなにも多くの人と出会えるとは想像していませんでした。石黒さんのように店を出したいという人もいれば、みんなでパーティを開きたいという人、会社での利用、コスプレの撮影場所として使いたいといったことまで、さまざまな利用用途があります。本来、地元の方しか来ないような小さなカフェのはずが、レンタル利用の場合、遠くは兵庫県や北海道から来てくださることも。後片付けを手伝ったりするうちに個人的に仲良くなって、後日、カフェのお客様としてまた来てくださることもあるのは本当に嬉しいことです。

レンタル利用料での収益増、宣伝・集客効果など、“貸す側”にさまざまなメリットを生み出していた「スペースマーケット」。では、“借りる側”である石黒さんにとってのメリットは何だろうか?

石黒:やっぱり「本物」の環境に触れられることは大きいですね。調理器具が充実していますし、業務用のガスを使用できるのは本当にありがたいです。それと、もし将来、自分の店を出す場合は……ということを想像しながらできることも得がたい経験です。料理の技術を磨いたり、レシピを考えたりといったことは自分ひとりでもできますが、店を実際に持つシミュレーションはなかなかできないですから。

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「石黒鮮魚店」は回を重ねるごとに人気を呼び、現在は参加希望者全員に対応することが叶わず、抽選制にすることもあるという嬉しい悲鳴も。そして、ファンが増えるたびに、石黒さんは将来の夢にまた近づいたことを意味している。

石黒:「スペースマーケット」は“場所を借りる”サービスなのに、実際には“人とつながる”サービスでもあると感じました。松本さんとの出会いもそうですし、店舗の疑似体験を通して以前よりもさらに交友関係が広がっています。その中には自分の夢を応援してくれる人も大勢いて、自信にもなりました。

今後も石黒さんはここ「ドードーの空」で展開する「石黒鮮魚店」でのトライ&エラーを通して、成長を遂げていきたいという。

石黒:今後、実際にお店を始める上ではもっと大変なことがたくさんあるはず。でも、今この状況で、その一端を勉強できているのは本当に良かったと思っています。最初は不安ばかりが先行していましたが、実際に動いてみることで解消される不安もあります。何事も、まず一歩踏み出してみることが大事。やる前から諦めることほどもったいないことはないですから。

(構成・オグマナオト/写真・林直幸/編集・長嶋太陽/場所・ドードーの空)

この記事の登場人物
  • 石黒 潤
    会社員。1989年生まれ。2014年冬から、三軒茶屋の喫茶店を週末に借りて「石黒鮮魚店」という魚料理会を始める。2015年夏からスペースマーケットを活用し、「ドードーの空」にて同名料理会を開催中。
  • 松本 誉子
    大手化粧品会社を経て、カフェ&レンタルスペース「ドードーの空」をオープン。オーナー業務だけにとどまらず、夢を追う若者の「母」として、お店に訪れる人々に安心と勇気を与え続けている。
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