先日、虎ノ門ヒルズフォーラムにて開催された『SHARE SUMMIT 2019』。多方面で活躍されるゲストパネラーの方々をお迎えし、来場者は過去最多の1,300人以上! 多くの企業(シェアパートナー)も参加して大規模に開催されました。ここでは、「Key Session Co-Economy~共創と共助で創るこれからの日本~」のセッションの模様をお伝えします。

南章行さん(株式会社ココナラ 代表取締役社長)
増田宗昭さん(カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社 代表取締役社長 兼 CEO)
宮坂学さん(東京都副知事)
松島倫明さん(『WIRED』日本版編集長)
という、豪華な4名の方々による熱いトークセッションが行われました。モデレート役は南さんです。

南さん:まずは今回、シェアサミットがどういった背景や目的で「Co-Economy」というタイトルをつけたかをご説明しておきます。
シェアリングエコノミーという言葉は、ビジネスとしては6~7年前から使われるようになりました。一般的には、AirbnbやUberなどのような、既存の産業を破壊するようなイメージが強いかもしれません。一方で、地域の人たちが助け合うシェアリングエコノミーもある。本当のところ「シェアリングエコノミー」って何?となってくる。その分類が難しいんです。そこで僕たちは、あえて、アメリカ型(既存産業を壊す)と、ヨーロッパ型(サスティナビリティや市民の結びつきが強いもの)のシェアリングエコノミーという2つがあると分類しました。日本にもきっと「日本型のシェアリングエコノミー」があるはずだと思っています。
たとえば、日本ならではの課題に「少子高齢化からくるさまざまな問題」があります。日本でこれから個として働き続ける幸せとは、政府、自治体、企業、シェア事業者、個人が手を取り合い一緒になって作っていくべきなのではないかと。それが、今回のテーマ「Co-Economy」になった理由です。

松島さん:僕がシェアという言葉を知ったのは、レイチェル・ボッツマンの著書で2010年にでた『SHARE シェア<共有>からビジネスを生みだす新戦略』(NHK出版)という本でした。まだ誰も知らないAirbnbや太平洋ゴミベルトについて書かれている本で。それから約10年経って、日本では環境とシェアリングエコノミーはやっと認知されてきたと感じます。

南さん:先日オランダへ行ったときは、サスティナビリティを感じたんですが、日本だと少しその辺は歴史的に興味が薄いのかなって思うのですが。

松島さん:日本は島国ですからね。見えないスケールの環境を考えるのは苦手な人種なのかもしれません。僕は、これからはデジタルテクノロジーをどうしていくか、が大きな課題なのではないかと思っています。90年代はインターネットの普及による情報化社会へ。2010年代はSNSが台頭して人と人がもう一度つながりはじめ、シェアサービスが生まれた。次の2020年代は、情報とモノが重なり始める時代なのではと思っています。

南さん:デジタルテクノロジーが進化した先には何があると?

松島さん:個人的には、日本的な幸せを考えたいですね。ウェルビーングという概念に注目しています。個に分断しすぎた日本をどうつなげるかに興味がありますね。

南さん:ヤフーの社長を辞めて東京副知事へなられた宮坂さん。ずばり、何をされたいと考えているんでしょうか?

宮坂さん:自分が副都知事になるなんて、これっぽっちも思ってなかったです(笑)。今は、東京全体をモバイルインターネットがつながる街にすべく、電波のインフラを整備しています。世界から見て東京の一番の課題は、つながらない地域があるところ。地下と空中なんかもそうですね。
あとは、都の職員は、都立高校の先生、消防庁、水道局…と16万人いるんです。現場をすごく持っている組織なんですね。彼らに最先端の道具を与えてデジタルテクノロジーを使いこなしてもらって、20の事業局をインターネットでつないでみようという試みもやっています。
ヤフー時代は、PCやスマホのスクリーンの内側の仕事。今は外側の仕事で面白いけれど、日々悪戦苦闘の連続です。

南さん:セクターを超えて、民間からパブリック(都政)へ行かれた宮坂さん。ヤフー時代、行政とルールメイクはどうされてきたんでしょうか?

宮坂さん:例えば、1999年に日本でサービスが開始された当初のヤフオクには、ルールが全くなかった。だから、トラブルも初めてづくし。行政と関わる際のスタンスとしては、まずは民間だけで話し合って、業界で意見をまとめておくことは大切だと思います。もちろん、行政へは先んじて話に行く方がいいですね。僕は東京に一番足りないものはイノベーションだと思っていて。今あるIT関連の繁栄はすべてベンチャーのスタートアップによるもの。行政が伝統のある大きな企業との調達へばかり流れてしまうと、そこにベンチャーは入りづらい。だから、大企業とベンチャーの両軸でやっていくべきだと考えています。

南さん:行政のルールに対しての新しい事業という意味では、TSUTAYAのレンタル事業も同様かと。ルールもなかったときに、どうやって事業を推進してきたのか。コツは何でしょう?

増田さん:僕がTSUTAYAで貸しレコードを始めたとき、大手レコード会社に訴えられたんです。危険だと言われた。僕は「何がいけないのか? 印税が払えていないから? じゃあ適切な仕組みを作ればいい」と考えて、組合を作り適正な料金を作り合法化になったんです。

今回Airbnbと我々がパートナーシップ契約をしたときも、周りには大反対されたんですが、
それも同じだと僕は思っていて。民泊もいろんな法律がある。課題もある。それをクリアしたら絶対合法になるんです。
社会やお客さん、事業者が円満になるしくみを作ればいい。今思えばTSUTAYAのレンタルもシェアだったし、ビジネスの本質って全部シェアなんじゃないかと思う。

南さん:増田さんからTSUTAYA立ち上げのお話が聞けるなんて。面白いお話ありがとうございます。では、時代は変わってもビジネスの上で変わらない部分とは何でしょう?

増田さん:日本人ならではの特質ですね。たとえば企業の上場って、オーナーはリターンがあるけど他の人はあんまりなくてちょっと残酷なところがあるでしょう。シェアの時代背景に資本主義がもたらす格差社会とでもいうか。僕は「レコードを買えない人も音楽を楽しむべき」と思ってTSUTAYAを始めた。そういう「みんな幸せになりたい」っていう気分が一番大事なんじゃないかな。自然の恵みの中に漁業や農業があるように、自然との共生、仲間を大事にする利他の心、なんかがこれから世界共通で評価されるんじゃないかな。

南さん:佐賀県武雄市の図書館プロデュース、Airbnbとの連携。民間が地方やベンチャー企業と共同していく際のスタンスとは?

増田さん:当初、「今のGoogleの時代に図書館はいるのか?」と思ったんだけれど、実際は単に本を借りる場所ではなく、地域のコミュニティになっていて。若い子が行っても楽しいし、お年寄りが元気に、ママが子どもと過ごせる場所になった。人口5万人のところに、5年間で来館者500万人ですよ! ホテルや住宅、お店もできて地域の人が幸せになった。そこへ来たら発見がある場所、未来を描ける場所になったんですね。

南さん:最後に「日本型のシェアリングエコノミーとは?」について3人はどうお考えでしょうか?

松島さん:増田さんがおっしゃった利他は同感です。自分の幸せはもちろんだけど、この場が嬉しいから自分も嬉しいし、悲しいことも分かち合えていることがいいというのが日本人かなと。
これからのシェアは、データに戻ると考えています。モノのシェア、データのシェア……。
「日本型のデータ社会」をちゃんと考えるべき時期なのではないかと。アメリカのデータ資本主義でもなく、共創に個人がどう入っていくか。すごく大きなチャンスではないかと期待しています。

南さん:たとえば、中国は国が個人のデータを徹底的に管理していますが、ヨーロッパは国に個人データを管理されるなんて嫌だと言う感じですもんね。

松島さん:日本人はまだデータに関して無関心なところがある。アメリカではデータ管理が大統領選挙の争点になるくらいなんです。「データは誰のもの?」に関して、どういう方向からアプローチしていくか。今ここでやっているような議論をもっともっと進めていかないといけないと感じます。

南さん:面白いそして重要な方向に話が向きましたね。データ管理や個人情報。Tカードで集まるデータについてはどうお考えでしょうか?

増田さん:僕がデータビジネスに関心を持ったのは30年くらい前。色々話すと長いのでここでは省略しますが、「データはゴールではなく幸せだと」思っています。個人を幸せにするデータと企業を幸せにするデータの2種類がありますけれど。
個人に関しては「健康データ」に注目しています。ヨーロッパは救急時にすぐその人の持病やかかりつけ医なんかを把握できる仕組みがある。どっちが個人にとって幸せか。個人情報は、よそに流れるのはありえないけれど、安全なら僕は管理してもらいたいって思います。

宮坂さん:日本で最初のヤフオク落札商品を出品した人は僕なんです。誰かの役に立つという体験はすごく新鮮でした。当時は個人情報の概念もありませんから、相手に直接持っていった時代です。そこからシェアリングエコのエコノミー(経済)の部分が大きくなってきて、少し難しくなっていった。Airbnbにしても、シェアの概念とエコノミーの概念とどっちに振るかという考え方ですよね。

「セクターを超えたシェアリングエコノミーという視点、デジタル時代における一人一人の幸せ、どんな社会を作りたいか、がこれからの本質になってくる」と南さんは締めくくっていました。私たちも他人事にするのではなく、自分事としてこれらのことを考えていかねばならないなと思いました。