シェアリングエコノミー協会事務局長であり、内閣官房シェアリングエコノミー伝道師の石山アンジュさんに、2020年の日本でのシェアリングエコノミーに関するトレンドや、新たな取り組みについてお話を伺いました。地方、防災、SDGs、関係人口と、気になるワードが盛りだくさんです。

__2020年はシェアリングエコノミーにとってどんな年になりそうですか?

シェアリングエコノミー協会が発足して5年目となる2020年は、これまでとは違った、日本型シェアリングエコノミーが開花する年になると思っています。

「シェア」がテクノロジーとして注目されていた時期から、社会のインフラとしてどんな役割が果たせるのかが問われるフェーズに来たと感じます。

人口減少、サスティナビリティ、個人の多様な生き方・働き方の後押しと、さまざまな日本社会の課題をどう解決していけるのか。自治体や大企業、会社員の方、主婦の方など、いろんなセクターの人たちがシェアリングエコノミーに期待を寄せているのも実感しています。今年は、具体的にどう社会のインフラになれるかが、シェアリングエコノミー協会としてもポイントだと思っています。

__シェアリングエコノミー協会としては、自治体や大企業と手を取り合い、共創共助していくという日本型のシェアリングエコノミーを提唱されていますが、実際に手ごたえは感じていますか?

2019年はそれらを特に感じる一年になりました。欧米では既存のテック産業にとってかわるようなシェアサービスが主流ですが、そうではなくて大企業とベンチャーを組み合わせて新たなイノベーションが生まれていくのが日本型のシェアリングエコノミーであり、それが顕著に見られるようになりました。たとえば、JRさんのような大企業がシェアエコ事業のスタートアップ資本、大企業と手を組む形が生まれてきたのも、この1年の大きなトレンドのひとつではないかと思います。

__一方で、シェアワーカーの働く環境整備なども課題と言われていますが、そのあたりはどのようにお考えですか?

シェアサービスにはいくつか種類があるのですが、特にスキルシェアの領域(家事代行、子どもの見守りなど、それぞれが持っている時間や資産、経験を活かして誰かの役に立ち収入につながるもの)は子育て中で働く時間に制約がある方、リタイアされた方などに広く認知され、活用していただけるようになりました。

一方で、シェアワーカーの1歩がなかなか踏み出せなかったり、横のつながりがなかったり、スキルアップの仕方がわからないといった不安もあることが分かりました。たとえばAirbnbで部屋を貸し出すホスピタリティとはどこまでのことを指すのかなども不安ですよね。そこで、私たちは昨年から「シェアリングネイバーズ」という登録制のコミュニティを作って、ナレッジを共有したり、一緒に確定申告をするなどのイベントを開催したり、シェアワーカーに役立つ情報を提供するなどさまざまな活動を行っています(現在登録者数約3000人)。

とはいえ、制度の面ではまだまだ失業、出産、育児、介護などでも対応できるにはどうすればいいか、といった環境整備も協会としては解決すべき課題のひとつだと思っています。

__SDGs、関係人口、災害対策、オリンピックといった分野において、今後、シェアリングエコノミーがインフラになっていくために、具体的な動きはありますか?

はい。それぞれの分野取り組みがありますので、順にお話していきますね。

その1 防災

シェアリングエコノミーの新しい共助の仕組みとして、大きなカギを握るのが防災です。たとえば、緊急時に助けが求められる現場に、行政からの支援が届くのを待つのではなく、たとえば「現地で部屋が余っている人が、ない人に貸し出す」といった、スピード感を持った個人間で助け合うことができるオンラインのインフラサービスが、これからの災害時では活きてくるのではないかと。今まさに、シェアリングエコノミー協会と各自治体、NPOとが一緒になってひとつのパッケージになるようなサービスを作っていきたいと考えています。

ただ、スマホが使えないお年寄りはどうするのか、土壇場の時にスマホを見ている余裕があるのかといった課題もあるので、例えば避難所を運営する自治体と家事代行や子どもの見守りをしたい人とをつなげるサービスもいいのではないか、などと実際に被災地に出向いたりしながら、さまざまな角度から検証している最中です。

その2 オリンピックとSDGs

1964年東京オリンピックは民泊の走りだったと言われています。東京都が宿泊の受け入れ先を一般のご家庭に募ったそうです。2020年はAirbnbが東京オリンピックのオフィシャルパートナーになりました。たとえば千葉市などでは、積極的に「市民によるおもてなし」取り組んでいます。これらは、追加投資なしでも今ある資産を活かして、新しい価値を生み出し経済を発展させていこうという発想になります。持続可能な街づくりは、協会としても力を入れて取り組んでいきたいテーマです。

その3 関係人口

「関係人口」とは、移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域や地域の人々と多様に関わる人々のこと。移住よりも個人のリスクが少なく、地域と地域の人を流動させることができます。日本全国のいろんな地域に人を動かしていくことで、持続可能な街づくりに貢献できるのではないかという発想です。

たとえば、一人が東京と都市2,3拠点を移動しながら生活する。そんな夢のような「暮らしのシェア」が、月4万~定額で日本各地の家に住み放題の「ADDress(アドレス)」といったシェアサービス等で可能になりました。

__シェアリングエコノミーの未来にとって地方は大きなカギとなりそうですね。

はい。これから日本はさらに人口減少が進みます。人口が減れば税収が減る。すると、バスや電車の本数が減り、お客さんがいなければお店や民間サービスも撤退します。それまで当たり前だったインフラ維持が難しくなるんです。

都市で人口が集中しているところはシェアのマッチングの進みも早いですが、高齢者や過疎地域の民間や行政の手が届かない地域は、どうやって市民が手を取り合って支え合って生きていくかがカギとなります。そこでシェアリングエコノミーが、これらの解決策になるのではないかと考えています。現在、シェアリングシティ(シェアリングエコノミーサービスを活用し、地域課題解決に取り組む都市)は2020年1月現在で国内に76自治体ありますが、もっともっと増えることを期待していますし、その可能性を感じています。

地方×シェアという発想が今後キーワードになってくることは間違いありません。

__最後に、シェアワーカーの皆さんにメッセージをお願いします!

本当に幸せなロールモデルとは何でしょう。災害、金融ショック…不確かで正解がない時代の豊かさは、「複数の選択肢を持てること」ではないかと私は思います。働き口や、暮らしもそう。

今まではシェアで働いたり暮らすことが、新しいことであったりちょっと変わった人と思われたかもしれません。でも、それらがインフラ化しつつある今、シェアを使うことがよりスタンダードになってきています。シェアリングエコノミー協会としても、そんなシェアワーカーの方たちが、より暮らしやすく、働きやすく、孤独を感じないセーフティネットやスキルアップの機会を、整えていきたいと思っています。

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