おっさんレンタルとは?

家や車、さらには彼氏や彼女まで…何でもシェアするこの時代。なんとおっさんまでレンタルできるとご存知でしたか? おっさんの空き時間をシェアするサービス「おっさんレンタル」。代表の西本貴信さんが2012年からはじめた同サービスは、いままでに1600人もの人たちを繋げてきたのだそう。

「おっさんレンタル」に現在登録されているおっさんは、50人以上。どのおっさんも驚くほどのエリートだ。例えば、今回レンタルさせてもらったおっさん・和泉さんは上智大学大学院を卒業後、NHKでアナウンサーとして「おはよう日本」のリポーターや長野オリンピックハイライト番組のキャスターを務める。その後、劇団四季にてディズニーミュージカルのプロデュースなどで活躍の幅を広げ、さらにソニーでのプロデューサー経験を経て、現在はエンタテインメント・プロデューサーとして事業を起こしている。

こんなに輝かしい経験をしてきた人と、普通に生きていたら会うことはまずないのでは?和泉さんのようなエリートおっさんがなんと1000円で借りれるということで、実際におっさんをレンタルして話を伺ってみた。

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レンタルしてみた「和泉さん」はどんなおっさんなのか?

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和泉:本業はエンターテイメント全般に関わる会社を経営しています。定期的に異業種の仕事を頑張る女性を集めた女子会とか、友人60人で大きな演劇場を貸しきっての貸切公演だとか、昔から人を集めたり企画をするのが好きなんです。

―とにかく何でもやってしまうんですね。その行動力はどこからくるものですか?

和泉:ただ、いろんなことをするのが好きなだけです。でも周りを見てみるとまだ行動できない人のほうが多いようですね。「おっさんレンタル」をしてると周りに言うと「大丈夫なの?」と返ってくるんだけど、実際にしてきた後は「教えて教えて」と興味津々で。みんな興味はあるけど、自分でやるところまでは踏み込めないだけのように感じます。

―「おっさんレンタル」は全員を採用しているわけではなく、代表者の西本さんと面談をして合格した場合のみおっさんレンタルへ仲間入りできるとお聞きしたのですが、和泉さんの場合はどのようなかんじでしたか?

和泉:西本さんがいいなと思った方を選んでるみたいです。お茶して雑談して「和泉さんなら合格です」と言われ、晴れて自分もおっさんの仲間入りをしたんです。

もっと真剣に、心から語り合いたかった。

―元アナウンサーの和泉さん。おっさんレンタルをはじめようと思ったきっかけは何だったのですか?

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和泉:きっかけは、自分の空き時間を使って人のために何か役にたてないのかと思ったのがはじまりでした。もともと「アナウンサーになりたい」とたずねてくる学生100人以上の相談をを受けていたのですが、無料で受ける分気軽に話せるんだけど、こっちが親身になって考えていても人それぞれ温度差があって。

そうなると、アドバイスしてもそれっきりになってしまう。何か違うやり方をとらないと、人と人って真剣に語り合えないんじゃないかっていうジレンマをずっと抱えていたんです。

―「おっさんレンタル」をはじめて4ヶ月、すでに10人ほどの相談を受けたそうですが、相談者にはどんな人が多いですか?

和泉:女性が8割、男性2割くらいです。年代的は20代~30代とまばらで、1~2時間ほどカフェや居酒屋で相談に乗ったり、雑談をします。大体月に4人程度、週に1人いるかいないかくらいです。

―なるほど。男性より女性の利用者が多いとは意外ですね。

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和泉:まあ女性の心理としては「年上の男性に話してちょっと違った視点でアドバイスをもらいたい」とかそんな感じなんじゃないですかね。若い女性と会うのに抵抗がないのかとよく聞かれるのですが、綺麗で明るくて人のたくさんいる場所で会うので安心です。

―相談される内容はどんなものが多いですか?

和泉:みんな「近しい人には話せないんです」という真剣な悩みを相談しに来てくれます。
相談内容は、男性だと「パワーポイントで上手く相手を説得するには?」とか。逆に女性は「告白したいんですけど、勇気がでなくて」とか。要するに、男性の方がどちらかというと実利的で、女性は情緒的な質問が多いと思います。

相談内容って、そのおっさんのプロフィール写真によって来る人が変わると思うんです。僕の写真ってカチッとしすぎてる気がするから、お仕事とか真面目な話が多いのかもしれませんね。

―「おっさんレンタル」での苦労ってありますか?

和泉:メールの返信を含めて、意外とパワー使うなと感じています。こうやって話している時も、やっぱり少なくとも1000円を相手から頂いてるので、いい加減なことを言えないなと責任感が出ます。

常に答えは相手の中にある。それを引き出すのが、おっさんの使命。

―「話上手、聞き上手」和泉さんにはこの言葉がぴったりな気がしますが、どんなことを意識しているのですか?

和泉:自然体でお話をすることです。気合入れ過ぎてもお互い疲れてしまうだけだし、自分の経験を踏まえて軽い感じでお話してるかな。

あとは、結論に達するまでじっくり聞き出して、引き出します。押し付けるんじゃなくて、相手から答えがでてくるようなコミュニケーションのとり方を心がけています。相手が相談事だと意識しているかどうかはわからないけれど、きっと自分の中に答えはあるんです。

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―おっさんレンタルをはじめてから、印象的だったエピソードはありますか?

和泉:女性の方だったのですが、居酒屋で2時間ほどお酒を飲みながら話した方ですね。僕が何をアドバイスしたってわけではないのですが、彼女なりに得られたものはあると思います。

おそらく、彼女の中で何かハッキリさせたいことがあったのではないかと感じました。それに対して僕が明確な答えを出したわけじゃないけど、自分の経験話をすることで、その中から彼女なりに感じ取って発見してもらえたんじゃないかなと。それは、「おっさんレンタル」のシステムあってのことだと思います。

おっさんレンタルを終えて。

実際におっさんをレンタルしてみて、やはり重ねてきた年の数だけ、話す力と聞く力が長けていると感じました。インタビューをしながらも、不思議といつもよりリラックスして話せていたんです。これがおっさんの力。
リピーターの多さや、利用者の増大も納得のおっさん力に魅せられてしまったので、次回はおっさん9人をレンタルさせてもらって、一緒にサッカーをしたいなー…。(笑)