一般社団法人シェアリングエコノミー協会は、2022年11月30日よりビジョンであるCo-Socoiety-持続可能な共生社会-の実現に向けて新たに6名にアドバイザーとして就任いただきました

本企画では、アドバイザーと理事幹事との対談を通じて、当協会が目指すビジョン「Co-Society-持続可能な共生社会」をどのようにステークホルダーとともに設計・実践しながら実現してくべきなのかを紐解き、発信していくダイアログになります。

第2弾となる今回は、シブサワ・アンド・カンパニー株式会社 代表取締役の渋澤健(しぶさわけん)氏に、代表理事の石山と、当協会幹事の株式会社エアークローゼット天沼代表がお話を伺いました。

 



渋澤 健
シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役、コモンズ投信株式会社取締役会長

複数の外資系金融機関およびヘッジファンドでマーケット業務に携わり、2001年にシブサワ・アンド・カンパニー株式会社を創業し代表取締役に就任。07年にコモンズ株式会社(現コモンズ投信株式会社)を創業、08年に会長に就任。21年にブランズウィック・グループのシニアアドバイザーに就任。23年に株式会社&Capitalを創業、代表取締役CEOに就任。経済同友会幹事、アフリカ委員会委員長、岸田政権の「新しい資本主義実現会議」など複数の政府系委員会の委員、 ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)議長の特別顧問、UNDP(国連開発計画)SDG Impact Steering Group委員、東京大学総長室アドバイザー、成蹊大学客員教授、等。著書に「渋沢栄一100の訓言」、「SDGs投資」、「渋沢栄一の折れない心をつくる33の教え」、「超約版 論語と算盤」、「銀行員のための「論語と算盤」とSDG」、他。


 

__石山)まずはじめに、コロナが少しずつ収束しつつあり激動の時代といわれているなか、2023年の社会や経済の変化についてどのようにみていますか?

 

__渋澤)

ひとつ明らかなのは、3年前のビフォーコロナの状況に戻ることはないということ。

ビフォアとアフターが全く違う世の中になり、どのような未来を描き築くのかを考えなければいけないと思っています。

以前は当たり前に動いていた企業のサプライチェーンが、アフターではいつ途切れてしまうかわからないというリスクが高まっている。それについても「消費」というところをビフォーアフターで考えなければいけないと思います。

 

__(天沼)

消費に対して世界情勢と物価高が同時に重荷となり、今後どれほど経済が活性化されるのか未知な部分があると思います。

次世代の土台となる経済がしっかり戻っていくことがすごく重要だと感じています。

まさに「元には戻らない」ということにはすごく共感します。出社に関して、リモートもそうですが、出社するスタイルは戻りつつも、会うべきときには会うということで、時間効率が上がるのかなとは思います。

 

__石山)渋澤さん、個人としての消費の変化はありましたか?

 

__渋澤)

さまざまな消費行動・動向があり、それに細かく合わせていくというのが、この大きな時代の流れの中で感じるところです。

僕は渋谷で暮らしていますが、百貨店が閉店となり、子どもの頃からあったものがなくなるのは寂しい気がします。ですが、だんだんと百貨店のスペシャリティが細分化され、売り手側もそれに合わせなければいけないというのは感じているので、それはそれで良い流れだと思います。

 

__(天沼)

売り方も変わってきそうですよね。

これまで、一カ所で全てが集まるという百貨店の大きなメリットがあった中、eコマースという新しい消費行動が選択肢として増えてきました。eコマースは扱っているモノの種類が多いので、百貨店のベネフィットが減っていくのです。

一方で、リアルの百貨店の残っているベネフィットとしては、売り場のエンターテインメント性を高めたり、各ブランドのブランディングが色濃くなったりということかと思います。

当社もまさに消費行動の広がりや多様化を感じています。

消費行動はゼロイチで変化していて、2000年代前半に出てきたeコマースも、全体の消費行動では10数%から20%ほどとなり、選択肢の一つとしてじわじわと広がっています。

これまで能動的に情報収集し、アイテムを選ぶしかなかったのですが、エアークローゼットでは、提案された中から選んでいくモノ探し、情報収集の選択肢を提案しています。

今後の世界全体を見たときに、人の価値観のところだけでなく、消費行動が細分化されていき、ファッションもトレンドのみを追うというより、個人が自己表現することが良しとされているのをすごく感じます。

 

__渋澤)

ビフォアであれば、デフレマインドになっていたので、ファッションやモノの価格が上がる雰囲気や土台は全くなかったと思います。

アフターになると、「ちょっと待てよ、価格って上がるんだ」みたいなのが消費者の中でじわじわと広がっていると思います。

消費者が受け入れることで、それが賃金アップにつながるというサイクルにやっとつながると思っているのですが、その辺はファッション業界ではどうですか?

 

__(天沼)

すごく難しいタイミングだと感じます。

当社が直接的に大きく影響を受けていませんが、小売りの事業者にとってはそのシーズン中に作るものの原価が上がってきていると思います。大手ファストファッションブランドでは、定番アイテムの価格アップを発表しています。

とはいえ、ファストファッションをさらに進化させて、より安いアイテムを展開する事業者も出てきています。品質を多少諦めてでも安いものを買い求めていくという方向性も示されています。

また、ハイブランドは、品質を落とさず価格も上がっていく傾向が今後出てくるかなと思います。

両極化していく形も想像しないといけないですね。

当社はミドル層で、品質の高いアイテムをリーズナブルな値段で楽しんでいただこうと考えているので、どちらに消費の重きが置かれていくのかすごく興味があります。

 

__渋澤)

サステナブル消費が成り立つ社会は、単純に量を求めるのではなく、質を求める消費者行動にシフトしないといけないですよね。

 

__(天沼)

仰る通りです。

ただ、他の生活アイテムも単価が上がった場合、賃金アップが先にこないと選択肢が縮まってしまうのです。

サステナビリティを考えると、ファッションアパレル業界は大量消費と大量廃棄を続けている中、使われる量と生産量を最適化していかなければなりません。

消費者意識として「安く買って使わないから捨てる」というのはサステナブルではないと思うので、当社のような循環型サービスをご活用いただくこともサステナブルです。また、サステナブル素材を活用する、品質を求めつつ着用回数も増やしていくという形も必要なやり方だと思います。

労働背景に関しても、工場のオペレーション化の一方で、労働をなくしていく方向につながらないようにする必要性もあります。あくまでもバランスが大事だと感じます。

 

__渋澤)

天沼さんとアンジュさんにお聞きしたいのですが、「サステナブルな社会、サステナブル消費」はもう当たり前という世代のみなさんからすると、「成長」とは何なのでしょう?

例えばすごく簡単にいえば、「GDPが何%上がった」とか、会社なら「ROEが何%ですか」みたいなそんな話になると思うのですが、これからの時代の「あるべき成長」とはどんな風に考えていらっしゃいますか?

 

__石山)

例えば、グリーンイノベーションのような、今の地球や社会で疲弊している部分や課題になっていることを解決するようなイノベーションや成長については勧業するけれども、大儀なき成長については勧業できないーー。それが一つの基準になっているように感じます。

 

__(天沼)

エアークローゼットは、忙しくてファッションと出会えていない人に幅広く出会いの場を作り、実際に購入していただくことをある種ひとつのフックとして消費体験の楽しみにしていただいています。

人類が成長していく過程で「購入する」という消費体験については、当面長く続いていくと思っています。もう一方で、生産効率はロボティクスAIの発展によって高まり、原価がぐっと下がっていったときに次のフェーズに移り変わる瞬間というのが来ると思うんです。

その中で人類がサステナブルを意識しながら消費することで、緩やかだけれど消費行動が循環型になっていくと思います。

単なる無駄は合理的に減らしていくべきなので、消費行動として、大切に長く使うものを所有するという概念がすごく大切です。いわゆる使い捨ての概念は減るべき方向だと感じています。

 

__石山)

シェアリングエコノミーの市場では、この6年で大きな変化を感じています。

最初の3年は、いわゆる安く利用できることがシェアリングエコノミーを利用する動機が多かったように思いますが、最近は、CtoC取引の中でもモノの平均価格が上がり、「じゃあニトリで買う方が安いかもしれない」という逆転現象が起こっています。

安く利用するというよりは「サステナブルな消費」ということの意義、大儀としてシェアリングエコノミーを利用する人が増えていると感じています。

 

__渋澤)

その変化はなぜ起こっていると感じますか?

 

__(天沼)

コロナによる外出制限や、マスクでのコミュニケーションなど生活が変化し、全体として立ち止まって考える瞬間になったかと感じています。

サステナビリティとウェルビーイングの概念自体もコロナの影響で進んだ感覚があります。

 

__渋澤)

さきほどの成長についての問いかけは、社会の中で経済成長を体験している僕みたいな年代の人の多くが今、企業の経営者層なんですね。

それで、やはり「成長ありきだよね」みたいなことが大前提になっていますが、成長って何なんだろうと思います。

特に、経済成長を感じていない世代の皆さんからすると、成長の意義というか、良い悪いではなくディバイドがある感じです。

成長を可視化するのを人間はGDPや利益など数値化してわかりやすいところに行く傾向があるかと思います。

その反面、人間の欲求として「成長」は求めるものだと思うので、「脱成長」といわれると、人間を否定されている気もして仕方ないのですが(笑)、その辺りはどうでしょうか?

 

__(天沼)

若いメンバーと話していると、資本的な成長欲求よりも自己実現についてなど人間成長欲求を語る場面がすごく多くなっていると感じます。

例えば、選挙に行くべきだと思っているのに行かないという傾向が続いているのはなぜかという話をしています。

もしかしたら、1975年代以降、投票率が徐々に下がっていて、政治の身近さや経済成長への枯渇感が、政治や自分の外の範囲にどれほど興味関心を持つのかというところに反映されているのかもしれないと感じました。

本来であれば、国の経済が潤い、消費が活性化されることで賃金がアップし、自分の資本的な成長と幸福が求められる、国の労働力がすごく大切にされるところかなと思うのですが、その焦点がちょっと薄れつつあるかと思います。

出生率も子育てのしやすさや支援にスポットライトが当たる部分が大きくて、国全体の経済成長に向けた人口という捉え方だけではないと感じています。

 

__渋澤)

物質的な成長には限界がある中、人間というのは、何か成長しないと生き物でないと思っていまして、成長があるからこそ何か学びたい、何かしたいと。

また、全体が成長しないと、自分の取り分の奪い合いが生じるという懸念もあります。

成長すれば、シェアリングの気持ちも生まれる。果たして成長なき社会はユートピアなのかと感じるのです。

 

__石山)

同世代の起業家や活動をしている方の話を聞いていると、成長や競争が原点では全くなくなっていて、周りにとってどうか、私たちにとってどうか、未来の子どもたちにとってどうかを本当に純粋に考えて活動しています。

先ほど天沼さんが仰ったように、そもそも国の成長が個人に分配されるような実感を前提としていないので、自分のビジネスが国の成長につながる感覚で起業をしていない人が多いのではないかと思います。

 

__渋澤)

そういう意味でもこれからの日本は面白いフェーズに入っていると思います。

「人口が減っても豊かな生活を維持できている」というのは今までの人間社会では体験したことがない状態です。

「無理だ」という人は当然いますが、僕は無理ではないという気もするのです。

ただ一方で、日本社会、日本人の感覚として、身の周りや自分たちの子どもさえよければ良いというような形でおさまってしまうことある気がしていて、ビニールハウスのハウスでぬくぬく育っている感じというか…(笑)。

スーダンやウクライナなどといった世の中で大変なことが起こっている中、見えている範囲だけの地域社会だけでなく、想像力を使って、もっと広がりのある身の周りを作ることができたら、それはすごく素晴らしいことだと思います。

 

__石山)

特にウクライナ戦争が始まってからは、そこに何もできない無力感みたいなものがあり、より手触り感がある地域やローカルビジネスに関心がシフトしているように思います。分散型社会の中で身の周り的なコミュニティーを良くしていくことにすごく関心が集まっています。

その反面、誰がグローバル・アジェンダを率先して考え、リーダーシップを取るのかという議論が不在のまま進んでいるように思います。

 

__渋澤)

先日、アメリカのエマニエル大使が招かれたフォーラムで、「日本の魅力は何ですか?」というような質問がありました。

「お寿司」とか「富士山」とか言うのかなと思ったら、「6歳の子どもがランドセルを背負って一人で歩いている姿、こんな美しいシーンはどこでも見たことがない」という話をしていました。

他の国なら小さな子どもを一人で歩かせるのはあり得ません。日本ではそれが当たり前だと思っています。良い意味ではさっきの「身の周りのことをちゃんとやりましょうね」ということが、社会の常識としてあるからだと思っています。
それは日本社会の素晴らしいところですね。かといって、それが必ずしも世界で通じないこともある。ということを我々が自覚すべきだとも思います。

 

__(天沼)

世界で最も早く超高齢化社会に突入している日本が、どういう舵取りをしていくのかというところに世界中が注目しています。次世代に向けて、地球規模で見ても日本は大切な国だと思います。

そしてもう一つ、「互助」や「もったいない」の考え方や精神など、シェアリングエコノミー自体は、本来日本に根づいているものなので、世界に向けてそれを伝えていきたいですね。

 

__石山)

ぜひシェアリングエコノミー、SDGsやサステナビリティという取り組みを広げていく上で、今回の対談だけではなく、今後アドバイザーである渋澤さんにも協力をいただきながら、ご一緒できたらと思っています。

 

__(天沼)

個と会社組織という意味合いにおける事業者と自治体・国というような、レイヤーがあると思いますが、まだ今は個々に連携だけして、その様子をシェアしている状況です。どういう状態がサステナブルだと定義できるのかという、ゴールビジョンをぜひ渋澤さんとディスカッションさせていただき、そのビジョンメイキングについてアドバイスをいただければと思っています。

 

__渋澤)

それぞれさまざまな考え方があり、バラエティがあるような気がします。

全体を変えるのは難しいことですが、色々なところから少しずつ変化させていけばいいのではないでしょうか。

例えば、地域の首長や知事など、良い意味でエッジが立ってやろうとしているところが、必ずあるじゃないですか。その辺りで色々なことが起き始めていると実感しています。

どこの組織でも、その中でちゃんとやろうとしている人は必ずいるので、そういうところとリレーションやタッグを組んでやることが大切だと思います。

 

 

ライター:中村 優希 さん