一般社団法人シェアリングエコノミー協会が、『「全国の20~60代の男女2,613人を対象に「シェアリングサービスに関するアンケート調査」を元にした調査』を情報通信総合研究所と共同で実施。その結果、2020年度日本でのシェアリングエコノミーの市場規模が2兆1,004億円、30年度には14兆1,526億円に拡大することが分かりました。

ここでは、先日行われたメディア向けオンライン説明会の概要と、シェアリングエコノミーのSDGsへの貢献効果や、既存産業への経済波及効果もご紹介します。

登壇者

石山アンジュさん
内閣官房シェアリングエコノミー伝道師。一般社団法人シェアリングエコノミー協会事務局長。2018年米国メディア「Shareable」にて世界のスーパーシェアラー日本代表に選出。ほかNewsPicks「WEEKLY OCHIAI」レギュラーMCを務めるなど、幅広く活動。著書『シェアライフ 新しい社会の新しい生き方』(クロスメディア・パブリッシング)。

山本悠介さん
情報通信総合研究所(ICR)ICRリサーチ・コンサルティング部 主任研究員。
計量経済学を専門とし、定量情報・定性情報をバランス良く活用した調査・コンサルティングを得意とする。専門分野はシェアリングエコノミー、ICTを活用した働き方改革、国内情報通信市場動向など。

糸原絵里香さん
1994年島根県出身。立教大学大学院現代心理学研究科を修了。シェアワーカーとして民泊、家事代行、オンライン料理レッスンなどを提供し、シェアリングエコノミーを取り入れた暮らし方や働き方を探究・発信している。一般社団法人シェアリングエコノミー協会ではシェアワーカーが安心安全に働く環境づくりを推進する個人会員事業責任者を務める。

 

シェアリングエコノミー協会の取り組みと市場の動向について

__まずは、今回の市場調査の背景とポイントを教えてください

石山さん:新型コロナウィルス感染症により社会や経済が大きく変化した2020年。

とはいえ、協会としてはシェアリングエコノミーサービスと提携をしたい会社、サポートをしたい会社が2016年発足時の34社から168社へと増え、大企業とのスタートアップの取り組みが進んだ1年でした。そんな社会や経済の変化がシェアリングエコノミーの成長にどのように影響したのかを調べるために実施したのが、今回の調査です。

ポイントは、新型コロナウィルスの影響を考慮した市場規模と経済波及効果の予測を行った点、さらにSDGsへの貢献効果の予測も行ったという点です。

2020年度のシェアリングエコノミー市場規模は2兆1,004億円!

__現状のシェアリングエコノミー市場規模の広がりについて教えてください

石山さん:協会としては現在「スペース」「モノ」「移動」「スキル」「お金」という5つのジャンルに分類していますが、さまざまなサービスが登場してきました。業界もITのみならず多用な団体へと広がったことで、関連する法制度もかなり広いジャンルになっています。

政府が7月に閣議決定にしたことよって、シェアワーカーの法制度の整備や、地域課題の解決に向けた自治体の取り組みが加速することになるはずです。また、災害や新型コロナウィルスの感染拡大といった非常事態での共助の面からも、シェアリングエコノミーサービスはさらなる活用が期待されています。

 
__今回の市場調査の定義と予測を教えてください

山本さん:まず、今回の市場規模の定義についてお伝えすると、対象とするシェアリングエコノミーサービスは、インターネット上で資産やスキルの提供者と利用者を結びつけるもの、利用したいときにすぐ取引が成立するものとし、市場規模は資産・サービス提供者と利用者の間の取引金額となります。(プラットフォーマーの売上ではありません)

結果的には、新型コロナウィルスの影響もあり2020年度の市場規模が2兆1,004億円と2019年の予測を下回る見通しとなりましたが、2030年の市場規模は、現状ベースの成長でも7兆4,719億円、新型コロナウィルスの不安等が解決した場合は、14兆1,526億円と予測されています。

新型コロナがシェアサービス市場に与えた影響

__新型コロナウィルスによってシャアリングエコノミーサービスにどのような影響がありましたか?

石山さん:新型コロナウィルスが市場規模に与える影響はプラスとマイナスの面があります。例えばインバウンド旅行者利用が多い民泊や、人と人が接触する対面型のスキルシェアに対してはマイナスの影響が大きく、オンラインで完結するサービスや外出回避につながる食事宅配などはプラスの影響が大きくなりました。一方で、対面型からオンラインへシフトしたサービスも回復を見せており、そういった柔軟に設定を変えられるのもシェアリングエコノミーサービスならではの良さかと思います。


__実際にコロナ禍でシェアリングエコノミーサービスを提供していた人は、どのような苦労や工夫をされているのでしょうか?

大学在宅中から家事代行、料理代行、民泊ホストなどさまざまなシェアリングエコノミーサービスをのべ4,000人以上に提供してきたという、シェアワーカーの糸原絵里香さん。

「対面型のサービスは新型コロナウィルスの影響もありましたが、オンラインで始めた料理教室は、トータルで80名の参加がありました。手元で作っているものをカメラでうつして一緒に作るというサービスなのですが、対面型よりも価格も安く設定したので気軽に参加できること、作ったものを家族とその場で食べられること、リアルタイムで一緒に作るので再現性が高いなど、利用者への意外なメリットがありました。ご参加いただいた方からは、顔も名前も知らないけれど、なんとなくつながれて楽しかったというレビューが印象的でしたね」(糸原さん)

__なぜ、コロナ禍でもシェアリングエコノミーサービスの市場規模が伸びたのでしょうか?

山本さん:コロナ禍で日本経済全体は凹みましたが、シェアリングエコノミーサービス市場としては、個人が収入を得られるサービス提供者が増えたため、規模が伸びたと感じています。2020年度はインバウンド減、緊急事態宣言などもあり投資する部分はマイナスが大きかったですが、マイナスは緩和され徐々にプラスに成長が期待されていくと予測しています。

__実際にコロナ禍で伸びたシェアリングエコノミーサービスとは?

山本さん:新型コロナウィルスの影響でシェアリングエコノミーサービス提供を新たに始めたという人が半分以上いました。サービス提供側は特に民泊やモノ、自動車など既存資産の活用が多かったですね。利用者側はUber Eatsやお金のシェアなどが多かったです。コロナ自粛がきっかけとなりシェアサービスに触れる人が増え、利用する最初のハードルを下げたとも言えます。

また、シェアワーカーで個人の収入が増えたことで、企業の売り上げも上がるという二次波及効果も計測したところ、2020年度で1兆3,519円という数字に。シェアリングエコノミーが成長していくと既存産業へもかなり好影響を与えると言うことが分かりました。

シェアリングエコノミーはSDGsへの貢献効果も!

__シェアリングエコノミーのSDGsへの貢献効果とは?

山本さん:シェアリングエコノミーサービスはSDGsの課題解決にもさまざまな効果をもたらすと予測されています。2020~2030年度の成長予測を見ると、シェアリングエコノミーサービスによって、働きがいを感じられるようになったり失業回避できた人が6倍の300万人以上増え、買い物代行サービスによって移動負担が減少し、乗り物シェアによりエネルギー消費が減少するなど、働きがいも街づくりも、持続可能な消費形態に貢献できることが見込まれています。

 

【まとめ】

今回の調査によって、シェアリングエコノミー市場としては、新型コロナウィルスの影響は足元への打撃はあったが、それをきっかけにシェアリングエコノミーサービスに触れたり使う人が増えた。その結果、サービス全体の市場規模が大きく成長し、経済効果やSDGsへの貢献も高められ、シェアリングエコノミーサービスの市場規模としては前倒しで成長が見込まれると思われる。