“他人の家に泊まる”ホームシェア(民泊)とは?

アメリカで始まった、Airbnbに代表される「ホームシェア(民泊)」サービス。
これにより、ホテルや旅館ではなく、「他人の家」に泊まるという新しい選択肢が生まれるようになりました。

ホストは、旅行等で不在にしている時や、使っていない自宅の一室を提供して収入を得ることができます。ゲストは、ホテル・旅館よりも安い価格で宿泊することができます。

さらに、地元の人々が実際に生活している家に泊まったり、ホストと交流することで、地元の人々の日常生活を実体験できるというメリットもあります。

AirBnb

https://www.airbnb.jp/

立ちはだかる法規制の壁。現在の日本におけるホームシェアの現状。

報道によれば、日本でのAirbnbの登録件数はこの1年で3倍になったとされており(2015年8月現在で約13,000件)、日本でもホームシェアが広がってきています。

もっとも、現在の日本の法制度の下では、Airbnb等のホストとして自宅等を繰り返し貸し出すと、”旅館業法違反と”されるリスクや、賃貸借契約・マンション管理規約等の違反とされるリスクがあるというのが現状です。

他方、東京オリンピックに向け、ホームシェアを解禁して宿泊施設の不足を補うため、現行の法規制を緩和しようという動きも高まっています。

東京駅 photo by Manish Prabhune

“Tokyo Station” by Manish Prabhune, color modified ( https://www.flickr.com/suzumenonamida/ )

現在のホームシェア、何が問題なの?

現在の日本の法制度の下では、ホームシェアについて、具体的にどのような問題点があるのでしょうか。
前編では「旅館業法の規制や、賃貸借契約・マンション管理規約上の問題点」を解説し、後編では「現在話題になっている規制緩和の動き」について見ていきたいと思います。

旅館業法上、「旅館業」を営むには許可が必要 ー では「旅館業」とは何?

旅館業法上、「旅館業」を営むには都道府県知事の許可が必要で、「旅館業」とは「 ①宿泊料を受けて ②人を宿泊させる ③営業 」と定義されています。
具体的にどのような場合に①、②、③にあたるのか、以下詳細を見てみましょう。

①「宿泊料」

実質的に寝具や部屋の使用料とみなされるものは全て含まれるとされています。

②「宿泊」

「寝具を使用して施設を利用すること」とされています。
なお、「宿泊させる」場合には旅館業の対象となりますが、アパートの賃貸・間借り部屋などの「賃貸借」は、旅館業法の対象外となっています。

では、「宿泊させる」場合と「賃貸借」はどう区別されるのでしょうか。
判例等によれば、以下の場合には、「賃貸借」ではなく「旅館業」にあたるとされています。

(i) 宿泊者が生活の本拠を置いていない(住んでいるとはいえない)場合であって、
(ii) 宿泊期間が1ヶ月未満の場合

「賃貸借」と「旅館業」の区別については、Yahoo!トラベルが2014年4月に開始した軽井沢の高級別荘レンタルサービスでも問題となりました。Yahoo!トラベルは「賃貸借」であり許可は不要と主張しましたが、行政側は実態として「旅館業」にあたると主張し、上記サービスは開始1ヶ月で停止されています。

③「営業」

「営業」の定義は、法令上明確に定められていません。
判例においては、「反復継続の意思」をもって行われている場合は「営業」にあたるとされています。

そして、

(i)社会通念上「事業の遂行」とみることができるか、
(ii)不特定多数の者を相手に行われているか等の要素を考慮して、「反復継続の意思」があるか

を判断するとされています。

Airbnbは「旅館業」にあたり、許可が必要なの?

それでは、Airbnb等のホームシェアは、「旅館業」にあたり、許可が必要となるのでしょうか。
上記①、②、③の要件を満たすか見てみましょう。

a. ホストの場合

ホームシェアにおいては、①有料で、②ベッド・布団等がある部屋を提供するのが一般的です。また、(i)ゲストが生活の本拠を置いている(住んでいる)とはいえず、(ii)宿泊期間が1ヶ月未満であることが多く、「賃貸借」にはあたらないのが通常と考えられます。
よって①②の要件は通常満たすと考えられます。

それでは、③「営業」はどうでしょうか。

例えば、長期休暇の際に旅行で家をあけることになったので、試しにAirbnbで貸してみようというような場合には、「反復継続の意思」をもって行われているとはいえず、通常「営業」にあたらないと考えられます。

これに対し、Airbnb専用の物件を所有又は借りており、不特定多数のゲストに対して何度も・かつ継続してAirbnbで貸しているような場合には、「反復継続の意思」があり「営業」にあたるとされる可能性があるといえます。

上記2つの事例の中間にあたるような場合、例えば、出張等で家を不在にすることが多い人が出張中にAirbnbで貸す場合等は、「営業」にあたるかどうかは一義的に明確ではなく、個別の事案ごとの判断になると考えられます。

https://www.airbnb.jp/

https://www.airbnb.jp/

b. (会社としての)Airbnbの場合

Airbnbは、利用規約上、あくまで自社はplatformの提供者に過ぎず、自ら物件を貸し出すものではないとしています。このことからすれば、Airbnbが自ら旅館業を営んでいるとはいえないと考えられます。もっとも、ホストが旅館業法違反となるような場合には、違反行為を黙認・助長しているとして問題視される可能性はあるといえます。

「旅館業」にあたる場合には、どのような規制の対象になるの?

上記のとおり、Airbnbのホストが「反復継続の意思」をもって行っており③「営業」にあたるとされる場合には、「旅館業」にあたり許可を取得することが必要となります。

許可を取得するためには、貸し出す物件が、法令で定められた構造や設備の基準に従っていることが必要とされています。また、旅館業の運営に際しては、都道府県の条例で定める換気、照明、清潔等の衛生基準に従う必要があり、宿泊者名簿の作成・フロントの設置等が義務付けられています。

無許可で旅館業を運営した場合には、刑事罰(6月以下の懲役又は3万円以下の罰金)も設けられています。

報道によれば、2014年5月に東京都足立区で住宅を宿泊施設として提供していた英国人男性が逮捕されたという事例も出ているとのことです(もっとも、足立区保健所の10回にわたる行政指導を無視したとの経緯があったとされており、かなり悪質な事案だったといえそうです)。

by Herry Lawford, color modified ( https://www.flickr.com/herry/ )

by Herry Lawford, color modified ( https://www.flickr.com/herry/ )

問題は「旅館業法」だけではない ー 賃貸借契約・マンション管理規約上の問題とは?

上記の旅館業法の問題に加え、自分が借りている物件やマンションをホームシェアで貸し出す場合には、賃貸借契約・マンション管理規約上の問題も生じる可能性があります。

a. 賃借物件を貸し出す場合 ー 賃貸借契約上の問題点とは?

ほとんどの賃貸借契約においては、賃貸人(大家さん)の承諾を得ないで物件を「転貸」する(誰かに又貸しする)ことは禁止されています。物件に第三者を泊まらせた場合には、宿泊日数や回数を問わず、「転貸」にあたるとされているのが通常です。そして、無断で「転貸」をした場合には、賃貸人(大家さん)は、賃貸借契約を直ちに解除できるとされているのが一般的です。

よって、大家さんの許可を得ずに賃借物件をAirbnbで貸し出した場合には、無断で「転貸」したとして、賃貸借契約を解除されてしまう(追い出されてしまう)リスクがあることになります。

b. マンションを貸し出す場合 ー マンション管理規約上の問題点とは?

マンションを貸し出す場合は、所有・賃借物件の場合の両方において、マンション管理規約との関係も問題となります。マンション管理規約においては、マンションの各室を「専ら住宅として」使用しなければならないとされているのが通常です。

「専ら住宅として」使用しているかどうかは、ゲストの生活の本拠があるかによって判断し、利用方法は、生活の本拠であるために必要な平穏さを有することが必要とされています。よって、Airbnb専用の物件として所有・賃借しており、ゲストの「生活の本拠」といえない場合には、マンション管理規約の違反とされる可能性があるといえます。

by haru__q, color modified ( https://www.flickr.com/haru__q/ )

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さらに、例えば首都圏のタワーマンション等では、マンション管理規約において、より具体的にホームシェアでの貸出を禁止するとの規定が設けられている(又は今後設けられる)場合もあると考えられます。

マンション管理規約に違反した場合には、マンション管理組合が裁判所に対して、違反行為の停止・ホストによるマンションの使用禁止等を請求する訴えを起こすことができるとされているのが通常です。

現状の問題点をどう解決していくか?規制緩和への動き。

上記のとおり、現在の日本の法制度の下では、ホームシェアで物件を貸し出した場合、旅館業法や賃貸借契約・マンション管理規約の違反とされるリスクがあることになります。かかるリスクがある状態では、ホームシェアを利用することに抵抗を感じる方も多いかもしれません。

もっとも、東京オリンピック開催に向けて高まる外国人観光客の滞在のニーズに応えるため、政府はホームシェアの後押しを進めており、旅館業法の規制緩和等の政策を進めようとしています。

次回の後編では、具体的な規制緩和の内容について見ていきたいと思います。

(後編につづく)

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