コロナ禍以降、リモートワークが普及し企業では副業が解禁になるなど、働き方や収入源が大きく変わった人も多いのではないでしょうか。もちろん、シェアリングエコノミーサービスで新たな収入を得たという人もいるでしょう。そこで、国税庁後援のもとオンラインで開催された、シェアリングエコノミー主催の「副業やフリーランス・シェアワーカー向けの確定申告セミナー」の模様をレポートしたいと思います。

今年の参加者は過去最高の2700名以上! 新たに加わった制度や知っておきたい確定申告のトレンドもぜひチェックしてみてください。

 

副業収入の多くは確定申告が必要です

企業から得る収入とは別で、新たにシェアリングエコノミーのサービスなどを使って副収入を得た場合は、確定申告が必要になるのをご存知でしょうか。

「新型コロナウィルス感染症により、今まで当たり前だったライフスタイルや価値観の転換が迫られ、社会全体が急激なスピードで変化しています。コロナ禍において、シェアリングエコノミーのサービスを使って新たに収入を得たことにより、今回はじめて確定申告が必要となる方もいるのではないかと思います。

自分自身のニーズにあったシェアサービスを利用して、消費者に向けて安心・安全なサービス、質の高いサービスを提供するだけでなく、シェアリングエコノミー業界全体の健全な発展に向けて、必要に応じて適切な確定申告を行っていただくよう、お願いいたします」

(デジタル庁 国民向けサービスグループ  近藤弘章 氏)

 

知っておきたい2022年確定申告トレンド

シェアリングエコノミー協会税制委員 / 公認会計士 / 税理士  矢冨 健太朗さんによると、

世の中の情勢や法律の変化などにより、個人の納税や確定申告にも時流(トレンド)があるそうです。

 

その1 個人への税務調査について

ネットトレード、FX、ネット通販、シェアリングビジネスなど、個人がインターネットを利用した経済活動に対して国税庁は関心を持っており、積極的に税務調査が行われています。

国税庁が公表する直近の税務調査実績資料では、シェアリングビジネスに対して191件(個人のインターネットを利用した経済活動に関する調査件数のうち17.8%)の調査件数と、1件あたりの平均で1,208万円の申告漏れがあったと報告されており、当局の関心の高さがうかがえます。

 

2 情報照会制度とは

令和元年度の税制改正によって導入された「情報照会制度」により、課税当局からプラットフォーム事業者へユーザーの課税関係情報の照会が行えるようになりました。例えば、一定金額(例:1000万円など)以上の取引収入があるユーザーの氏名、生年月日、住所、電話、登録銀行名、支店名、口座番号、年間取引額といった情報を一括で提供依頼するという状況が想定されます。

課税当局は、プラットフォーム事業者から取得した情報と、実際に確定申告が行われているかなどの既存の情報を照合することにより、無申告者や過少申告者のあたりをつけることができます。注意すべきは、情報照会は、ユーザーの直接の関与がないため、自分の知らないところでもこうした情報がやりとりされている可能性があるという点です。

「コロナ禍で国税庁も対面での税務調査がやりにくくなっているため、こういった制度を積極的に活用して調査を進めているようです」と矢冨さん。個人の納税者はより緊張感を持った確定申告が必要と言えそうです。

 

​​確定申告の基礎知識

続いて、国税庁の鈴木憲太郎さんに、確定申告をする前に知っておきたい「確定申告の基礎知識」についてお話を伺いました。

 

__確定申告はなぜ必要なの?

確定申告とは、収入から経費などを差し引いた「所得」に対する税金を税務署に申告する手続きのこと。納め過ぎていると還付されることもあります。申告し忘れると加算税や延滞税など、本来納める必要のない税金が発生することもあるので注意してください。

 

__所得税とは?

給与+副業の収入から経費などを差し引いたものが所得となり、そこから所得控除(配偶者控除、扶養控除など)を引いて課税所得額を算出します。この金額に対して税率をかけ、さらに税額控除(住宅ローン控除など)や源泉徴収税を差し引いたものが納める所得税となるのです。

__ふるさと納税は確定申告しなくていいものもある?

所得控除にもいろいろ種類があります。たとえばここ数年人気の「ふるさと納税」には、「ワンストップ特例制度」という、5自治体までの寄付であれば確定申告が不要となる制度もあります。ですが、6自治体以上にふるさと納税している人は確定申告しないと減税効果がなくなってしまいますから注意しましょう。

 

__iDeCo(イデコ)はどこの控除に該当するの?

最近利用者が急増しているiDeCoは、所得控除のうち「小規模企業共済等掛金控除」に該当します。iDeCoを利用されている方はぜひ覚えておいてください。

 

__いつまでに提出すればいいの?

通常、確定申告書の提出期限は3月15日ですが、今年は新型コロナの影響を踏まえて、罹患者や濃厚接触者などは4月15日まで延長できることになりました。簡易な方法の期限延長も可能ですので、詳しくは国税庁HPでご確認ください(https://www..nta.go.jp)。

 

__どうやって提出すればいいの?

お住まいの地域の税務署に提出する方法もありますが、おすすめはスマホでもできるe-Tax申請です。国税庁のHPにある「確定申告書等作成コーナー」から1~6のステップを進めていくだけ。必要なのはApp Storeからマイナポータルアプリのインストールのみです。マイナンバーカードもお持ちの場合はさらにスマートに申請が可能です。

また、給与所得もある場合、今年から給与所得の源泉徴収票をカメラで読み取り自動入力される機能も追加され、ますます利用しやすくなっています。

 

確定申告の始め方

では、続いて株式会社エフアンドエム 松木淳さんに「確定申告の始め方」についてレクチャーいただきました。

 

__まずは何から始めればいいでしょうか?

まず、確定申告手続きの前にすべきことは、昨年1月~12月の会計業務です。会計ソフトなどを利用して、収支を事前にまとめておく必要があります。

__副業の場合、いくらから確定申告が必要ですか?

一概にはいえませんが、ひとつの目安として、給料以外の所得が20万円あれば(収入ではありません)確定申告が必要です。ただし、20万円以下でも住民税の申告が必要なケースがありますので自治体に確認してみてください。

 

__経費で落とせるものと落とせないものの見極め方は?

これは事業内容によっても異なるので、支出内容だけでは必要経費かの判断はできません。ポイントは「何のために使ったか」。その事業を行う目的で支出した場合は必要経費になりますが、同じタクシー代でもプライベートでの支出は領収書があっても必要経費になりません。「確定申告で通ったからOK」ではなく、あとから税務調査で指摘を受ける可能性もあります。また、パソコンなど10万円以上するものや持ち家は数年にわたって減価償却して経費計上しましょう。

 

__シェアワーカーは何所得に該当しますか?

シェアワーカーとしての副業の場合は一般的に雑所得になりますが、シェアワーカーでも一定の事業規模であれば事業所得となり、青色申告できるケースもあります。

  

__シェアワーカーでも青色申告できますか?

確定申告には青色申告と白色申告があります。青色申告は、最大65万円の特別控除が受けられ、所得税や住民税、国民健康保険料も変わってくるなどあらゆるメリットがありますが、いくつかの基準をクリアしなければいけません。まず、事前申請が必要となります(確定申告する1年前の3月15日まで)。さらに、副業などの雑所得では青色申告できず、一般的に仕事で生計を立てられる規模とされる「事業所得」であることが条件となります(開業届や承認申請をしただけでは青色確定ではありません)。もちろん、これらの条件を満たせばシェアワーカーでも事業所得になりうる場合があります。詳しくは税務署や税理士さんなどにご相談ください。

 

上手な節税対策を!シェアワーカーのための賢い資産運用術

最後に、三井住友海上火災保険株式会社古川さんに、シェアワーカーのための賢い資産運用術を教えていただきました。

生涯で払うお金の内訳は1位「生活費」、2位「税金」、3位「住宅費」と言われています。

所得が高いと税金もたくさん納めることになりますから、できるだけ税金の優遇したいですよね。

そのためには先ほどから話題にあがっている控除を上手に活用することが重要となります。

生命保険料控除もそのひとつですが、そこまで大きな税金の優遇効果は期待できません。やはり日々の税金の優遇にはiDeCoやふるさと納税がおすすめです。

ちなみにiDeCoとは自分で作る年金のことで、60歳以降に受け取ることができます。「税金を払う前のお金を積み立てられる」「運用で得たお金が非課税となる」などのメリットもありますが、「60歳まで引き出せない」という注意点もあります。よってお子さんの学資の準備には不向きであり、老後の生活にしか使えない可能性が高いです。また、運営管理の手数料は各社で異なりますからよく確認が必要です。さらに、住宅ローン控除を利用している方は、満額の控除を受けられない場合があります。

いずれにしても、老後の資産運用を意識したオリジナルの資金計画を作成してご自身にあったライフプランを立てることをおすすめします。