“わたしの30分、売りはじめます。”をコンセプトとする『Time Ticket(タイムチケット)』は、文字通り自分の空いている時間を売り出すことができるシェアリングエコノミーです。タイムチケットでは、自分の時間を販売したい人が、その時間内で提供できるスキルやコンテンツを掲載し、時間単価でチケットを発行します。発行されるチケットは撮影依頼、占い、プログラミングのような実務的なスキルから、フリートークや悩み相談まで、とにかく何でもアリなのが特徴です。 今回は、タイムチケットでチケットを発行してから僅か6ヶ月で100枚を売り切った、総合ランキングのトップを走る一方で、自らが数々のシェアリングエコノミーを実践し、評価や体系的な情報発信を行なう 『 シェアリングエコノミー研究家 』 のフリーランスとして独立した、加藤こういちさんにシェアエコの魅力についてお伺いしてきました!

ーー フリーランスになる前は何をしていましたか?

フリーランスになる前に、会社を2社経験しました。最初はウェブ制作会社で、次は通販 会社に勤めていました。今は、『 シェアリングエコノミー研究家 』という肩書きでフリーランス活動をしていますが、これまでにキャリアはシェアエコとは全く関係のないことをして きました。

 

ーー 『 シェアリングエコノミー研究家 』について詳しく教えてください。

サービスを幾つか利用してみるうちに、個人間で解決する利便性や、シェアエコならではの 価値を感じ始めました。一人のシェアエコユーザーとして、様々なサービスにトライして、理解を深めていくうちにネット上に「シェアリングエコノミー」に限った情報がまだ少ないことに気がつきました。サービスの体験記や、比較、そしてシェアエコでしか享受しえない価値について情報をまとめているサイトがないと気づいたことが活動のキッカケです。

シェアエコ業界では、様々な事業者によりサービスが大量に輩出されているのですが、ユーザーの視点からの指摘、それぞれの情報整理が整っていない状況です。 シェアリングエコノミー研究家 は、シェアエコがますます盛り上げっていくために生の情報を発信していくポジションとして活動しています。

ーー 加藤さんは、どこまでをシェアエコの定義としていますか?

シェアエコの大前提として、個人と個人が取引を行なう『CtoC(個人間取引)』の考え方 があると思っています。誰もがサービスを提供するホスト側へなれることで、サービスの取引に人間関係が生まれる点がポイントです。 簡単に具体例を話すと、一般的なホテルに泊まっても、そのホテルの従業員と親しい間柄になることはほとんどありませんが、Airbnbサービス上で見つけたホストの家に泊まれば、 宿泊スペースを提供するホストと会話が弾んで、Facebookで繋がったり、一緒にご飯へ出かけたり、友達や知り合いになれる『余白』があります。

これまでのサービスではなく、新しくCtoCサービスが好まれてリピート利用されるようになった理由の一つは、この人間関係が生まれることにあると考えています。

シェアリングエコノミー研究家加藤こういちさんインタビュー

ーー 続いて、タイムチケットについて教えてください。どのようにサービスを知って、いつ頃からチケットを販売するようになりましたか?

どのように知ったのかは実はよく覚えていないのですが、一番最初に買ったチケットは、2年ほど前に元・原発作業員の方から原発の危険性について伺うというものでした。震災が発生してから、様々な議論がテレビやウェブ上で山ほどなされてきましたが、自分の中で実感を掴めずにいました。そんな時、このチケットを見つけて、実際に現場で働いている当事者の方々がどのように考えているのかを知りたいと思い、購入したのを覚えています。

この体験が斬新だったのがキッカケに、すっかりタイムチケットのファンになってしまいました。続けて何枚か購入していくうちに、金額に対して得られる情報の相場観が掴めるようになっていきました。それからは、自分の考え方が少しでも変わりそうだなと感じたチケットや、何か新しい事をはじめるタイミングで必ずタイムチケットを使ってみるようにしています。
売る側の立場になったのは、フリーランスとして独立してからなので、ちょうど6ヶ月前です。

ーー チケットの価格はどのように決定していますか?

一番安い単価から手順を踏んで値上げしていきます。最初は1時間3千円くらいで販売していたのですけど、やり続けていくうちにどんな方がどのようなことに困っていて、自分の時間にどれだけの価値を感じてくれるのかが分かってくるようになってきました。

レビューに「非常に良かった」という内容が続けば、値上げしても大丈夫というシグナルだと捉えています。経験値が溜まっていくにつれて、自分のスキルが磨かれるので、改善点やできる範囲が広がっていき、サービスの 幅を拡充していくことができました。現在は、1時間1万8千円で販売中です。タイムチケットでは、サービスそのものを自分で1から決めることができるので、自分が本当に提供したい範囲だけをサービスの定義にできるのが魅力です。

 

ーー ズバリ、チケットが購入されるコツを教えてください。

まず発行するチケットは、尖ったものをオススメします。タイムチケットには8万人がユーザー登録をしているので、この中で目立つためには「何でもできます」よりも「私はこれができます」と自分の中でも特に尖った部分を剥き出して紹介をしていくのがポイントです。

また、最初の一枚目を購入してもらうのは非常に難しいです。レビューが一件もついていない、見ず知らずの方の時間を購入しようとする方はなかなかいません。
最初の一枚めの売り方は、普段から自分が利用しているSNS上で、「こんなチケットを発行したので良かったら買ってみませんか?」と告知してみて、知り合いに購入してもらって、良かったらレビューを書いてもらうのが鉄板の施策かなと思っています。

ーー これまでタイムチケットで何人くらいの方と会いましたか?

ざっくり、180人程です。
サービスを使い始めてからまだ3年ぐらいなので、多い時は3人以上の方にお会いするような日もありました。

 

ーー 180人の方とお会いしてみて、ご自身の中で起きた変化について教えてください。

そうですね。一番の変化としては、自分自身よりも、自分を取り巻く環境の方かなと思います。タイムチケットを始めた3年前、私は会社の転勤で東京へやってきました。知り合いを増やすために、無料のセミナーや異業種交流会に参加し始めたのですが、こういう場へ参加 しても誰かとその後も長期的に繋がっていくようなことはほとんどありませんでした。

タイムチケットそのものは、人と繋がることが目的というわけではないのですけど、1時間、2時間、あるテーマについてお互いの意見を交わしていくうちに、その人との仲が自然と深まっていく場合があります。チケットを買うことで、何のストレスもなく自然と交友関係の幅が広がっていき、友人が増え、その仲から親友と呼べる間柄の人もいます。

ーー 最後にこれからチケットを販売する方に向けて、メッセージをください。

タイムチケットのサイトを開くと、トップランカーの方々が並んでいて、みんな凄そうな人だなという印象を受けます。私も最初はチケットを買う側だったので凄いと思っていたのですけど、実際トップランカーの中にも始めは最低金額から試し試しにやり始めて、お客さんに 怒られながらも地道に続けてきた方もいたりします。 経験を積み重ねていけば、自然と上手くなっていくものなので、それに合わせてチケットの 価格を上げていきます。タイムチケットには、いずれチケットの販売だけで生活ができるような可能性もあります。そういった自分の成長プロセスを楽しみながらも、人と自然に繋がることができる、シェアリングエコノミーの魅力を体現することに成功したサービスの一つだと考えています。