TimeTicket 大底春菜さん

「わたしの30分、売りはじめます。」というキャッチコピーで4年前にリリースされた「 TimeTicket 」は、個人の空き時間を気軽に売買できるシェアリングサービスとして話題になっています。自身もホストとしてチケットを販売しながら、コミュニティマネージャーとして活躍する大底春菜さんに、サービスの魅力や目指す世界観についてお聞きしました。

TimeTicket 大底春菜さん

――大底さんは、あの有名通販会社にいらっしゃったそうですね!?

はい。前職のジャパネットたかたではテレビショッピングのAD職に従事していました。元々、人に何かをお勧めするのが好きだったんですよね。テレビショッピングの構成を考えることが好きでした。TimeTicketへの参加を機に再認識することになるですが、結局、“相手の人生が変わるようなきっかけ”づくりがすごい好きなんだと。

前職では、人の悩みに対して、モノで解決する提案はある程度できるようになったと思いました。例えば、お部屋が片付けられない人だったら、ロボット型掃除機を提案する、みたいな。しかし、入社4年目の頃に人間の本質的な悩みは、モノだけでは解決するのは難しいのではないかと思い始めました。目の前の人の悩みに対して、その人のライフスタイルに合わせて、モノ、ヒト、コトの3つの中から解決策を提案できるようになりたい、そんな思いを持つようになっていました。

特に、私たち世代は、生まれたときから周囲にモノがあふれていた時代を生きてきたので、モノを買って所有するということが、豊かさの象徴かというと、ちょっと違うと感じるようになってきました。高いプレゼントをもらうより、大切な人と一緒に時間を過ごしたいとか、そういった幸福の基準を持っているような気がします。

TimeTicket 大底春菜さん

――なるほど。そんな大底さんが、どうして TimeTicket に転職することになったのでしょう?

前職で4年ほど過ごし、東京に転勤になったタイミングでセミナーや勉強会にちょくちょく出席するようになっていました。そこでたくさんの個人事業主の方々と出会い、輪が広がっていったと思います。個人事業主の皆さんの自分のやりたいことや得意なことで生計を立てている、その姿が格好いいなと思いました。しかしその反面、そういった皆さんは集客とか営業が苦手という悩みを抱えていることにも気づきました。

私の周りにいた個人事業主の皆さんは、素晴らしい技術をお持ちなのに、自分を売り込むことがあまり得意ではない方も多かったです。私は、そこそこ顔も広く、知り合いも多かったので、だったら私が仲介して、素晴らしいサービスを提供している人と、それを必要とする人をマッチングさせようと考えました。

――当時は、スキルをシェアできるマッチングサービスがなかった?というわけではないですよね。

単純に、私がそういうサービスがあるということを知らなかっただけかも(笑)。困っている人を助けたいという親切心からボランティアで、集客のお手伝いや、悩んでいることを解決できる知り合いを紹介したりと“ひとりマッチングサービス”を展開していました。そんな日々の中で、友人が「TimeTicket」の存在を教えてくれました。まさに、自分が“こういうサービスが世の中にあったらいいのに!”という内容を具現化しているサービスでした。これからは個人の力が強くなると感じていたので、個人が自分の力を発揮できるサービスだと思い、いきなり運営会社に電話したんですね。

その電話の際に、「 TimeTicket 」の創業者に、なぜこのサービスを作ったのか?理念やビジョンなどを、根掘り葉掘り聞き倒していたら、「じゃあ、お茶でもしましょう」となり、創業者とカフェでお茶をしました。さらに詳しくサービスの話を聞いたら、すごく共鳴する部分ばかり。きっと一緒に働いたら、自分の作りたい未来が実現できるに違いない!思い、こちらからお願いして、参加させてもらうことにしました。

――すごい情熱!行動的ですね!「 TimeTicket 」に参加して、大底さんは何をどうしたいと考えていたのですか?

具体的に何をしたいとか、そういうことは考えてはいなくて、とにかく一緒にやりたい!という気持ちが先行していました。当時は、サービスがスタートして3年が経過し、会員数が4~5万人くらいだった時期。

正直言って、その時期のタイムチケットでは数十万単位で稼いでいるホストがまだそれほど多くなかったんですね。そこで私はコミュニティマネージャーという職務に就任して、まずは、毎月数十万単位で稼げるホストの強化に努めることにしました。

――具体的にはどのような手段を講じたのでしょう?

明確な戦略があったわけではありません。まずはホストの方々と仲良くならなきゃ!と、ホスト向けのイベントを開催したのですね。そうしたら、ものすごくTimeTicketが大好きなホストがたくさんいることを知ったのです。その方たちって、自分の利益のためではなく、“人のために何かをしたい”という人たちの集合体なので、私の性格にすごくマッチ。すぐにホストの皆さんとお友だちになって、交流を図りながらコミュニティを強化していきました。

また、私自身がTimeTicketで販売している「あなたの得意なことをチケットにします」というチケットを作るにあたってのアドバイスをするチケット。これが結構な人気で、すでに200人以上の方にこのチケットでお会いしました。「大底さんのおかげでチケットがどんどん売れるようになった」とお礼のメッセージをいただくホストの方もいらっしゃるほどです。

このチケットの1時間の中で、私はノウハウを提供しているわけではなく、相手の方の個性やスキルを引き出して、それを、どのように表現するか?と具体的に話をするので、それこそ100人いたら100通りのアドバイスがありますね。けっこう自分のスキルを認識していない方も多く「私、あまり得意なことがない…」とおっしゃって、すごくもったいない。そういう時に、私は「何をしているときが好きですか?」と問いかけています。

人間、生きていて楽しい時間がないという人はいません。その楽しい時間って、どんな気持ち?どんなシチュエーション?って深堀っていくと、必ずそこに、その方の“得意”がある。“好き”と“得意”ってけっこう一緒の領域にあるのですよ。“得意なことは何?”と聞くより、“好きなことは?”と聞くと、一気にハードルが下がりますよね。


――自分が気づいていないスキルを大底さんによって発掘される感覚ですね。TimeTicket のように、得意なことを人に提供できるシステムがどんどん普及していくと、世の中が大きく変わりそうですね。

そうですね。私もそんな未来の社会になることとても信じているので、TimeTicketの会員数が増えて、どんどん利用されていったらいいなと本気で願っています。東京に住んでいると、朝の満員電車で通勤している人が、本当に辛そうだなって思います。物理的に満員電車が辛いこともあると思いますが、満員電車で通勤してやる仕事がその人が本当にやりたい仕事ではないという精神的な辛さの方が大きいのではないかと思います。だから私は、一人一人が住みたい場所に住んでやりがいのある仕事をしながら、のびのびと暮らせる世の中になってほしいんです。

結局、嫌なことって、得意ではないことをやっている時だと思います。効率は悪いし、パフォーマンスも発揮できない。それで怒られるっていう“負のスパイラル”に陥っている人ってけっこういると思います。だったら得意な仕事に転換したらいい。

ただ、サラリーマン生活が長いと、思い切った転身が非常に怖い。私もその怖さはよくわかります。なので、Time Ticketなどの副業サービスをオススメしています。例えば、 TimeTicket でチケットを販売すれば、本業による安定を維持しながら、自分の本当にやりたいことを適度に行うことができます。これは、未来の自分の働き方に対する布石になると思います。

実際に、TimeTicket で副業をはじめ、徐々に割合を増やしていって、最終的には独立を果たし、本業にしたという人もたくさんいます。そういった意味で、TimeTicketは人生を変えるきっかけになるし、しかもノーリスクなんですよね。

もちろん、本業とTimeTicketによる副業をバランスよく両立させている方や、複数の仕事をバランスよくこなしている人もいらっしゃいます。よく言われている「ワークライフバランス」ではないですが、ワークとライフを分けるのではなく、うまくミックスするという生き方だと思います。

仕事も生きがいだし、家族との時間も大事だし、だからこんな働き方をしている、ここに住んでいる、こういう人たちとつきあっていますと、全部、自分で選択できる。それって、サラリーマンではなかなか難しいですよね。

しかも、好きなこと=得意なことを仕事にしているわけですから効率が良いので、圧倒的に一日の労働時間が減りますし、嫌なことをやって怒られる時間もない。誰もがそんな風に生きていくことができる世の中って、幸福度が高いように思えます。

――確かに!本当に素晴らしいサービスです!大底さんの今後についてはどのようなお考えを?

TimeTicketに限らず、コミュニティマネージャーという職種がもっと増えていくと良いなと思います。各地域、各サービス、各コミュニティにしっかり配備できるくらいになるといいですよね。コミュニティの中には、ポテンシャルはあるけれども、それを内に秘めていて表現できない人って、たくさんいると思います。それをピックアップしてカタチにしたり、人とつなげていく、そんな役割を担うコミュニティマネージャーの存在が必要だと思います。

しかも、ネット上に加えて、リアルな場を設けることが大事だと思っています。会って話して、人と何かをしたり、人に何かを教えてもらったりするなど、とにかく人が直接会うことに価値があると思っています。TimeTicket でも毎月リアルなイベントの場を設け、ホスト同士をつないだり、ホストとゲストをつないだりしています。ネット社会が加速する現在だからこそ、直接会って誰かの役に立ち、感謝されたりすることで得られる幸福感を感じられる人を増やし、その連鎖が生まれるような世の中を作っていけたらと思います。